電子入札のリスクは官→民への情報漏洩

敬天新聞8月号

戸田市電子入札

 電子入札とは、市役所の入札部局に各入札参加業者が、一連の入札事務をネットワーク経由で行う方法である。電子入札を活用する事で、入札業者が全ての入札者を把握できなくなり「民・民間の業者談合」はなくなりつつある。今だにあるとすれば「官・民間の談合=電子入札情報漏洩」くらいだろう。
 戸田市役所の電子入札に限らず、公共事業を競り落とすのは「一番安く受注する業者」である。
 ただし安さだけだと無理な安値で入札し、正当な競争を阻害する事もあるので「これ以上1円でも安く入札すると失格」となるボーダーライン=『最低制限価格』を設定する。役所によっては公正・透明性の確保の為、この最低制限価格を公表≠オ、入札させる。事実上の「抽選方式」だ。
 電子入札の公示の際、戸田市役所から入札希望業者達に「こういう建設工事をします。『設計金額』は一〇〇〇万円です」と言ってくる。しかし、この一〇〇〇万円というのはとりあえずの『設計額』であり、電子入札で業者が競い合う金額の節目は、この『設計額』から引き出した予定価格の八掛けと言われる。この電子入札例でいけば、八〇〇万円が『最低制限価格』となる。
 そしていつも一〇〇〇万円の発注だったら八〇〇万円ジャストか?というとそうでもない。毎回、一〇〇〇円単位で最低制限価格が決められる。七九九万九〇〇〇円とか、八〇〇万一〇〇〇円だったりとか。最低制限価格が七九九万九〇〇〇円の時は、八〇〇万円で入札すれば、最低制限価格以上ということで(競合が無ければ)落札できる。しかし最低制限価格が八〇〇万一〇〇〇円の時は、八〇〇万円ジャストで入札しても、最低制限価格より下回っているから、競合が誰もいなくても『失格』となる。
 こんなワケの分らない方式だから多くの役所は最低制限価格を、もう最初から公表する。そして、この価格でやれる業者さんお願いします、と事実上の「公募―抽選方式」となるのだ。

なぜ当るのか?

 埼玉県戸田市は最低制限価格を公表≠オない。よって業者は最低制限価格の予測がつかず、ほとんどが少しでも値下げしようと思うばかり最低制限価格を下回る入札価格で「失格」となってしまう。
 五月末にも、「埼玉県戸田市立戸田東小学校の電設工事」の入札が行われ、入札に参加した十六社のうち九社は最低制限価格を下回る安値を入れ「失格」。積田電業社と旭電気工業の二社が、この最低入札価格を正確に当てた。この二者間で抽選し、旭電気工業が落札。
 入札し、最低制限価格を下回って「失格」になってしまった業者が、ついに怒った。
「こんな茶番あるか!談合じゃねーか!」
「なんで毎回『最低制限価格』を当てんだ!?」
「市役所が教えなきゃ当たるはず無い!談合だ!」
 この二社は昨年度も二回ほど最低制限価格を数回ドンピシャで当てた。
 この最低落札価格をピタリといい当てる確立は、小数点以下一〇桁位までの緻密な計算式が必要。つまり現実には絶対不可能だ。積田電業社や旭電気工業のように、戸田市役所の弾き出す最低落札価格をドンピシャ当てるための「魔法のPCソフト」でもあれば業者は一億円で買っても数年で元が取れる。こんな緻密な計算を出来る社員がいたら年俸数千万円払ってもいいだろう。
 この最低制限価格ピッタリ入札が戸田市の担当者から教えられたものでなければよいのだが…。

埼玉県戸田市の公共工事発注における電子入札の例

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