投資詐欺マルチ話・擬似通貨ワールドイーマネー

敬天新聞8月号

ボーイズUメンでマルチの集客

 五月十六日、日本武道館にてR&Bの有名グループ「ボーイズUメン」の結成二〇周年ライブが行われた。その観客席の一部に、本紙がこれから徹底追及していく投資詐欺マルチの一団がいた。
 このライブの前日に「ボーイズUメン」は、この投資詐欺マルチ集団だけのため、カモを呼ぶ客寄せパンダとして青山でシークレットライブを開催していた。
 詐欺集団マルチ集団が芸能人を広告塔に使う事は多く、最近だけでも円天の細川たかしからワールドオーシャンファームの「元首相細川護煕の妻」まで芸能人の広告塔ニーズは大きい。しかしR&B界のカリスマ・ボーイズUメンを招致するとは、このマルチ集団どれだけ巨大なのかと一瞬、脅威を感じてしまった。
 本紙でさえ「えっ、ボーイズUメンがマルチ商法のためにシークレットライブを?」と驚いたのだから、普段詐欺師に触れる事のない一般人には、この投資詐欺マルチ集団が海外アーティストとのコネのある凄い人達…と写ったに違いない。芸能人「後光効果」大成功。
 ボーイズUメンは、このマルチ集団とは無関係。
九〇年代には一世を風靡しグラミー賞も受賞したビッグアーティストとはいえ、今や落ち目。
 ボーイズUメンはアメリカで仕事が無くなった為、呼ばれればどこへでも行くそうだ。日本は最大のマーケットだそうでファンに対し「楽屋で記念写真をとるサービス」(八千円)という落ち目タレントのような事までやっているらしい。
 今回の青山でのライブのような小会場の場合、大きな機材を持ち込まず得意のアカペラで会場を盛り上げればいいから、相当安い費用で引き受けたと思われる。
 翌日が本番の武道館だったから、行きがけの駄賃、ちょっとした小遣い稼ぎとしてコネなど無関係で引き受けたのだろう。それが彼らやプロモーターの商売だから。
 しかし、ボーイズUメンという安くサプライズ感もあるアーティストをセレクトした、投資詐欺マルチ集団のボスのセンスには正直感心した。
 この集団は投資詐欺とマルチ商法がミックスされ、背後には新興宗教がかったスピリチュアルカウンセラー達が蠢く。

「年利34%」

 この投資詐欺マルチ集団が売りにしているのは、海外株式投資詐欺。
 まず海外に籍を置く、イークロスという未公開・未上場企業の株式を購入する。イークロスが更に、投資家からの資金(資本金)をユナイテッド・ソリューションという資産運用会社に運用させる。
 イークロスの株式を購入した投資家には「年利三十四%」の配当を約束する(元本保証)とのことである。
 更に、投資家が次なる投資家を連れてきて、次の投資家がイークロスの株式を購入させれば、その出資額と人数に応じた『御礼』がイークロスから支給される。これはマルチの『報酬』ではなく、あくまでイークロスからの『御礼金』だから、誰も損はしないとの理屈らしい。この海外投資は口数限定(六〇〇〇口)で定員になり次第打切る。
 配当還元は香港に作る口座に振り込まれる。今後、海外への資金流出に対し取締りが厳しくなるから、香港での口座開設も難しくなる。チャンスは今しかない…と真剣に勧誘するのだ。
 この資産運用会社ユナイテッド・ソリューションの社長は実に有能で、アメリカの大学院を出て世界のVIPとの親交があるそうだ(ソフトバンクの孫正義も懇意と自称)
 ユナイテッド・ソリューションはフォーシーズンズホテル香港の五十五階にオフィスを構え、幹部は全てアメリカナイズされたスーパービジネスマンという。(ならば勝手に、香港市場でもナスダックでも上場しろという気がするが)
 ユナイテッド・ソリューションのスタッフは、常に世界中を飛び回り莫大な情報と人脈を持っている。だから去年も六〇%を超える運用実績があって、年利三十四%という数字はとても控え目な最低約束額なのだそうだ。

イークロス投資マルチ説明会

 ボーイズUメンライブ翌日の五月十九日に銀座ブロッサムにて投資マルチの説明会が行われた。
 司会は自ら「一投資家」を自称する片岡聖策という人物。この人間が持つ名刺には、有限会社ヘリオポリス・宇宙医学研究院・片岡聖策―埼玉県八潮市八条一六一〇番地―三Fと刷られているが、現住所にこの会社は存在していなかった。
 片岡の司会でまずイークロスの大原が大演説。
「自分は十四歳で渡米しアメリカ流のビジネスノウハウを身につけた。日本の常識とアメリカの常識、世界の常識はこんなに違うんだ」
と言うような事をアメリカの求人広告をネタにしゃべり、その後ユナイテッド・ソリューションの外山に交替。
 ユナイテッド・ソリューションに個人資産の運用資格がないことを明言。であるから、投資家にはイークロスの株式を購入して貰い、ユナイテッド・ソリューションはイークロスからの委託で資金運用すると言う。
 そしておかしな事をのたまった。
「ユナイテッド・ソリューションの運用の柱は『株とFX』しかし金融資産は目減りもある。そこでリスクヘッジとして不動産に着目。また金融業をフィリピンで行い、インドネシアのバカンの港湾の利権を獲得した。これらにより相場に左右されない安定収益が得られ、『株とFX』運用に大きな勝負が可能となった。これは分散投資、アロケーションと呼ぶ」
のだそうだ。イチイチ説明は控えるが全てデタラメの大嘘。金貸しで「港湾利権」持ってますて…資産運用会社じゃなくて「極道」じゃないか?
「―FXで期待以上の成果をあげ昨年度の運用実績は、六〇%には届きませんでしたが、それに近い数字を出し、よって『年利三十四%』は充分お約束できる数字だと考えていただいてよい」
 この雲をつかむどころか全く根拠ない妄想投資話は一〇分ほどで終わり、芸能話、つまり前日と前々日のボーイズUメンのライブの話になると途端に活気を帯び、ボーイズUメンのようなグラミー賞アーティストを呼べることのコネの凄さを強調していた。「希望者にはライブの模様をお見せする」とも…。また、マカオグランプリの「ポルシェ」のスポンサーになっているとも言っていた。(これも金さえ払えばコネはいらぬが)
 資産運用の話は漠然とした話ばかりだったのに、…ボーイズUメンライブやポルシェの車体広告が資産運用の実力と関係あるとでも言いたかったのだろうか。

擬似通貨、ワールドイーマネー

 この後、海外株式投資における「出資金」の流れがプロジェクタを用いて説明された。
 イークロスの株式購入には、なぜかワールドイーマネー≠ニいう電子マネーかつ「擬似通貨」が必要である。投資家は、まずこのワールドイーマネー≠購入する。
 ワールドイーマネー≠フ購入は、提携会社のワールドイーマネーリミテッドの日本出張所への銀行口座振込による。投資家がワールドイーマネーリミテッドの銀行口座に振込みをする。
 その資金はイークロスの株券代金としてでなくワールドイーマネー≠フ購入資金としてワールドイーマネーリミテッドの香港本社に送金される。
 送金されてきたワールドイーマネー≠資金源に、ユナイテッド・ソリューションが投資運用を行うという。
 そして、年利三十四%にもなるユナイテッド・ソリューションのFX運用益は、再びワールドイーマネー≠ニして蓄積される。投資家への配当は、このワールドイーマネー≠ゥら、香港に口座開設させた投資家の口座へ振り込まれる。
 この香港の口座はイーバンクと提携しているため、一度口座を作れば日本の郵便局やATMからの出金が可能なのだという。
 香港の銀行口座開設には、毎月三泊四日での「豪華香港口座開設ツアー」(自費参加)が用意されている。
 ワールドイーマネー≠ニいう円天紛いの擬似通貨が曲者である。説明会では、「ボーイズUメンの招聘もワールドイーマネー≠ナ支払をした」と言っていた。
 …アホか。いくらボーイズUメンが落ちぶれてもワールドイーマネー≠ネんていうワケの分らないオモチャを受け取ってライブをやるほどバカじゃない。プロモーターが了解しない
だろ、そんな話。

マルチ商法勧誘

 マルチの担当者が現れシステム説明を開始。投資家を勧誘する際の儲けは誰も損をしない『御礼』と言っていた癖に実際は単なるマルチ商法のピラミッド型の組織講。
 しかも、六〇〇〇口限定の募集と言っておきながら「みなさんも(ピラミッドを)一〇段二〇段と積み上げて下さい!」とマルチならではの扇動。六〇〇〇口限定ならピラミッドも十四段で終わりだろうに…。
 担当者が「ここでこの案件にいち早く出資され、既に高額な配当を得ているイチ投資家の方をご紹介します」といった。
 紹介された人物は、なんと、この説明会の司会者で宇宙医学研究院・片岡聖策であった。
 マルチ担当と片岡のやりとりが始まった。
「参加はいつからですか?」
「3月の27日です」
「プラチナ資格取得は?」
「4月の上旬です」
「いくらくらい儲かりましたか?割合で」
「割合ですか?ちょっとわかりません」
「では金額では?」
「え〜っと、その」
「3桁ですか?」
「いや、もうちょっと」
「わかりました4桁は稼いでいると…それでは、今日お集まりの皆さんに一言」
「みなさん私も自信ありませんでした。ですが今までやってこれました。みなさんも自信もって取り組んで下さい」
 午後八時、投資詐欺マルチ商法の説明会終了。
 参加者に「株式譲渡申込書」が渡された。
E-cross Limited
flat〜〜〜Hong Kong
と香港の会社である筈なのに、この株式譲渡申込書の受取先ファックス番号は、なぜか〇三―六四二七―六三三八と東京都内になっていた。



 この投資詐欺マルチ話は、新聞媒体だけではなくインターネットでも調査追及し公表して行きます。投資詐欺の件では、この集団主催のハワイへの投資案件視察ツアー、またイラクの通貨ディナールに投資しませんかの詐欺話を追ってどんどん拡げて行きます。
 また、新興宗教紛いのスピリチュアルカウンセラーが沢山登場します。
 この説明会の司会者、有限会社ヘリオポリス・宇宙医学研究院・片岡聖策から始まり、妻で新潟の小さなヒーリングショップだかの経営者で「FBIに捜査協力?…FBIサイキック捜査の第一人者にリーダーと認められ?」と自称するスピリチュアルセラピストの岡村織慧
 こいつらがセミナーを開催する宇宙医学研究院は本紙近所の川口パークタワー三十一階らしい。
 そこから辿っていったら、以前から本紙で調査していたペットとお話をして飼い主に通訳するという川原乞食並みの職業(詐欺師?)「アニマルコミュニケーター」が(投資詐欺マルチとは関係ないが)チラホラ浮上。
 動物と会話する奴らの頼れるオヤジとして出てくるのは、歌手の倖田來未が愛読するあまり、羊水が腐る発言の原因ともなった「コップの水にキレイだよキレイだよって話しかけると水がキレイになる『水からの伝言』の著者」で水の研究者を自称する江本勝というかなりサイコな非科学者などなど。
 この投資詐欺マルチ話は登場人物もジャンルも幅広いので長期かつ頻繁に取り上げて参ります。

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