平畑眞一という男いったい何者なのか
無断解約、不正流用、不正な取引(疑惑)、損失の穴埋めにはスト資金…と、何でもアリの情報労連(千代田区・全電通労働会館)

 情報産業労働組合連合会(以下『労連』=千代田区神田駿河台3-6全電通労働会館5階・津田淳二郎委員長)が、組合員の積み立てた年金共済保険料を無断解約したのは平成5年のことだった。
当時、労連は1,295億円の保険料を東邦生命(平成12年6月に経営破綻)に預けていたが、運用実績は伸び悩んでいた。そこで組合員の保険料の中から300億円(=約6,000人分)を無断解約して先物取引に注ぎ込んだのである。
 実際には、労連が共済事業を委託している関連団体=電通共済生協(以下『生協』)の元理事長(当時)の判断だという。
 結果的に85億円の運用益は得たものの、肝心の元本=300億円が返ってこなかったためこの問題が表面化。平成12年暮れに新聞紙上で取り上げられた。

 そもそも、組合員に無断で保険料を解約し、事もあろうに先物取引なんぞという博打に注ぎ込んだのだから、言い訳の余地は無い。
 組合員の権益や財産を阻害する労働組合が、一体どこの世界にあろうか。
 “運用”“投資”といった耳障りの良い日本語で、明々白々な“博打”行為を歪曲化して憚らないその神経を疑う。
 さて、労連や生協の落ち度は明白だが、冷静にこの事件を見つめてみると、何も彼らばかりが悪いわけではない、という側面も見えてくるのである。

 先ず、発端は東邦生命の元取締役=平畑眞一だ。何を隠そう、労連に先物取引の儲け話を持ち込んだ張本人である。
 300億円という金額を設定したのも東邦生命ならば、約6,000人の解約者をコンピューターで無作為に選出したのも同生命だ。
 平成5年当時、平畑が持ちかけたこの話は、5年間で90億円の運用益を上げるという触れ込みだった。
 「この話がもしも平畑の独断だったとしたら…」万が一の事態を危惧した生協元理事長は、東邦生命社長の了解の有無について幾度となく平畑に尋ね、社長にも直に確認を取った。
 平畑との間に「誠意、責任をもって対処する」という確認書を交わし、平畑が全責任を負うという話を信じた元理事長は「投資会社に問題は無い」とする民間信用調査機関のお墨付きも得て、無断解約による運用を決断。労連と東邦生命間で覚書を交わした。

 恐らくこの時点で、元理事長は『得』こそすれど、『損』をするようなことはないと高をくくっていたに違いない。万が一のことがあっても平畑が全責任を負うのだから、300億円の元本は全く心配ない、と考えていたのだ。
 果たして元理事長は、東邦生命側が作成した覚書の内容を充分に確かめもしないで、当時の労連委員長だった山岸章氏名で契約を締結。労連委員長の職印は、当時、生協にも置いてあった。
 ところが、労連と東邦生命が交わした覚書には、300億円を一旦解約して5年間運用し、運用期限が来たら再び元に戻すという内容が謳われていた。つまり元本の保証なんてどこにもなかったのである。
 元理事長は運用期限が過ぎた後、弁護士に指摘されて初めてこの事実に気付いた、と新聞紙上で語っている。本当だろうか?
 一方、東邦生命は無断解約した保険加入者に、従来通りの積立金残高を通知しながら年金の支払いも続けた。加入者達は、まさか自分の保険が知らぬ間に解約されていたなどとは夢にも思わなかっただろう。
 5年の月日が流れ、終わってみれば総額85億円の運用益こそ得たものの、大事な300億円という元本が焦げ付いてしまった。
 労連は約束どおり、東邦生命に返金しなくてはならない。さあ困った、どうする、情報労連。

 
 博打で擦ったカネの穴埋めに労組のスト資金を差し出す
独特のウサン臭さが魅力?の、飯田克巳社長

 そこで労連は身内であるNTT労組に泣き付き、東京労働金庫にストライキ資金を担保として差し出して245億円の融資を受け、東邦生命に返金。このスト資金は、組合員がストライキに入った際、その間カットされる組合員の給与を補償するためのものである。
 この事は、当然ながら極秘裏に行われた。
 その他の関係機関の協力も得て、なんとか東邦生命に返金を果たした労連であるが、さて、今度はスト資金に大きな穴があいてしまった。労働組合が、ストライキの為の資金を博打の穴埋めに使うとは前代未聞だが、一体この先どうするつもりなのか…。
 ここらでちょっと目先を変えて、いよいよ黒幕の登場と行きますか。

 この先物取引を行った会社、前出の民間信用調査機関が「問題無し」とお墨付きを与えた会社は一体どこなのか。
 答えは東京ゼネラル(以下『東ゼネ』港区虎ノ門4-3-1城山ヒルズ・飯田克巳社長)である。表向きはその子会社の太陽ゼネラルが取り引きを行った形を取っているが、だからこそ“黒幕”なのだ。 
 東ゼネと言えば、元大蔵省主計局次長=中島義雄の借名講座に3,000万円を振り込んだ事が発覚し世間を騒がせた、かなり胡散臭い会社だ。
 一説では、この300億円の運用で東ゼネが得た手数料は122億円とも言われている。結果的に300億円の損失を抱え込み、その取り引きを行った東ゼネが122億円もの暴利を得ている事実に、労連は不条理を感じないのだろうか。

 ここで幾つかの疑問点が生じてくる。
 生協の元理事長は、新聞紙上で「私の判断が甘かった〜うかつだった〜平畑氏(東邦生命元取締役)に騙された思いだ〜こんな不利な取り引き内容と知っていれば応じなかった」等と語っている。しかしハッキリと『騙された』とか『これは詐欺だ』とは言わない。
 じゃあ元本の保証はあったのか、無かったのか?
 前述のとおり、両者が交わした覚書には5年間の運用後、300億円を元に戻す事が謳われていた。つまり元本の保証は無かったのだ。ところが元理事長は元本が保証されていると思い込んで取り引きに応じた。
 ならば何故、元理事長は元本が保証されていると思ったのか。彼は覚書の各項目を入念にチェックしなかった自分のミスであるかのように語っているが、それなら「騙された思い」とは一体何か。
 恐らく平畑は、元本を保証するような話をしたに違いない。そうでなければ、これだけのリスクを背負って、無断解約までして莫大なカネを注ぎ込むはずが無い。だからこそ「騙された思い」なのだろう。

 この推測が正しければ、平畑はなぜ300億円を保証することができたのか。まさか彼のポケットマネーではないだろうし、東邦生命がそれを保証する筈も無い。先物取引で必ず儲かるという前提がそこにはあったのだ。
 つまり東ゼネは、元本を保証した上で取り引きを行った事になる。これが事実であれば大問題だ。
 株取引に於いて損失補填が禁止されているように、先物取引でも元本を保証するなんて行為は認められない。元本が必ず返ってくる博打なら、誰だって投資するに決まっている。
 そうか、元理事長は不正な取り引きと知りつつ話に乗った訳か。だから騙されたと言いつつも、自分のミスであったかのようにお茶を濁すのだ。本当に騙されたなら、とうの昔に詐欺罪で告訴しているだろう。

 
 中島の存在と、ペーパー会社「オキスク」が意味する物とは?
津田委員長(労連)

 逆に、元本の保証が無かったとしても問題は残る。
 そもそも一任勘定そのものが、あってはならない事なのだ。ご承知かと思われるが、この場合生協の元理事長が、毎日ガソリンや大豆やゴム等の値段をチェックしながら「何々をいくら買い」とか「売り」などと取り引きした訳ではない。東ゼネに預託した、つまり取り引きを任せた訳だから一任勘定なのだ。
 通常は、このような違法性のある取り引きに監督官庁(金融庁・経産省・農水省など)が許可を下す事はあり得ないが、実際に取り引きが行われたという事は許可が下りたという事だ。
 そこで便宜を図ったのが東ゼネ飯田社長とベッタリの、あの中島(元大蔵省主計局次長)だったのではないか。もしや、東ゼネから彼の借名口座に振り込まれた3,000万円とは、便宜を図った見返りなのか…?確証は無いにしろ、時期的には一致するが如何か。

 さて、このような被害に遭っているのは、実は労連だけではない。全日本自治団体労働組合(以下『自治労』)も同様だ。
 自治労は平成6年と10年に、それぞれ100億円と20億円の運用を東ゼネに任せている。100億円は回収できたが20億円が滞った。回収を迫る自治労に東ゼネが差し出した物、それは米国コロラド州の牧場であった。
 ところが、その牧場には『オキスク』という日本企業が既に302億円もの担保権を設定していた。しかも東ゼネと役員が重複するこのオキスクは、実態の無いペーパー会社だった。こんな土地に、302億円プラス20億円以上もの価値があるとは思えない。
 東ゼネは「石油が埋まっている」などと説明したが自治労は納得せず、粘り強く回収を続け、20億円は何とか元に戻った。
 ここでも、やはり元本を保証していたのか。でなければ自治労が『回収』を迫ること自体おかしいし、東ゼネも返す必要無い筈だ。どっちに転んでも違法性は拭い切れないようだ。

 そういえば、この自治労に東ゼネを紹介したのも平畑だというから、この男、典型的な〇〇師だ。現在では東ゼネの子会社であるティージーアセットマネジメント社長に就任している。上客(別名=カモ)を紹介し、多大なる利益を齎した事に対する東ゼネ飯田社長流のお返しって事だろう。
 また、焦げ付いた労連の300億円と、オキスクが設定している302億円の担保権は、ほぼ同額と言える。もしや東ゼネが行った保証とは、ペーパー会社オキスクの302億円だったのか…?
 はたまた、騙された思いなのに「騙された」とは決して言わない元理事長も、実はグルで、バックリベートでも貰って騙された『振り』をしているのか?
 考えれば考えるほど分からなくなるこの怪事件、少なくとも東ゼネと平畑がウサン臭い事だけは間違いない。
 真相究明には、徹底した捜査のメスが必要不可欠である。
〔つづく〕

 
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