偽造株券

  昨年5月から7月に掛けて、NECの子会社=高和(現・シンシア=中西雄三社長)のニセ株取り引き疑惑等について、当紙紙上で追及した。
 ここへ来て、我々の報道が正鵠を射たものであった事を裏付けるかのような事実が、月刊誌『財界展望』((株)財界展望新社)3月号にて報じられた。
 その内容に触れる前に、先ずは当紙が昨年5月以降に報じた内容を掻い摘んでご説明しよう。

 このシンシアという会社は資源回収及びビルメンテナンスを主たる業務とする会社で、昭和44年以来、NEC製品の不要部品の回収・処理を行うほか、NECの各工場やビルの清掃・管理なども引き受けて来た会社だ。シンシアの売り上げの8割以上はNEC関連というから、両者は切っても切れない関係と言える。
 そのシンシアが平成11年6月10日、福島県原町市の産廃処理業者=原町共栄クリーンの全株式を買い取り、実質的な支配下に置いたのだが、ここに大変な事実が隠されていた。
 なんと、この全株式(計200株)が、偽造株券だったのである(と、当紙は指摘しているのだが、シンシアの中西社長もNECの西垣社長も知らん振り。未だに本物と思い込んでいるのか、それともニセ株と知りつつ、都合が悪いからトボケているのか…?)。
 当紙が偽造株券と主張するには、それなりのワケがある。
 そもそも共栄クリーンの全株式は、直接シンシアに売却されたのではない。間に中平悦子(本名=明美)という人物が入っている。つまり、共栄クリーン→中平明美→シンシア(当時は高和)と株券が渡ったのである。

 平成3年8月19日、相葉政宏狩野勝を中心に設立された共栄クリーンは、その全株式(=200株)を相葉・狩野両者がそれぞれ100株ずつ所有し、代表取締役を相葉が務めるという体制でスタートした。
 その約六年後、平成9年3月18日に狩野から中平明美に共栄クリーン株が譲渡されるのだが、その数が100株ではなく、何故か200株なのである。
 当紙の手許には、その200株のコピーがある。ここでは、その株券の第001号〜100号をA、第101号〜200号をBと便宜上呼ばせていただく。
 この株券A、Bは、その日付が共に平成3年8月20日となっている。ご承知の通り、この日は会社設立日の翌日にあたる。つまり当時の代表取締役は相葉だった筈なのだが、このA、Bには狩野勝と記載されている。
 また、両者は100株ずつを所有していた筈だが、これまたA、B共に株主は狩野勝となっている。何れか半分は相葉の株でなければオカシイ。
 更に、その株主名である『狩野勝』の3文字は、Aが印刷されたものであるのに対して、Bは1枚ずつハンコが押されている。しかもAには100枚全てに会社角印が押されているが、Bには1枚も押されていない…。(当紙第51号に株券の掲載あり
これらの事実を総合すると、つまりこの200株は偽株なのだ。だとしたら、何故、ニセの株券を作る必要があったのか?

 
 ニセ株増やして3倍に希釈?

――昨今の社会情勢と日本の土地事情を踏まえれば、ゴミの問題は企業にとっても喫緊の課題である。従ってどの企業も処分場は欲しい。そんな大企業に共栄クリーンをまるごと売りつければ、莫大な金が転がり込んでくるに違いない。
しかし、狩野は200株のうち半分の100株しか持っていない…と言いたいところだが、実は相葉と狩野の合計200株は、融資の担保としてある人物に差し出されていたのだ。何れにしたって、これでは企業と売買契約は結べない。

 という訳で、偽造株券を作ることになる。勿論、これを狩野が1人で思いついてやったとは思えない。恐らく中平と共謀したのだろう。
 と言うのもこの中平明美という女、実は根っからの詐欺師で、過去に様々な詐欺事件での逮捕歴を持っている。従って類い稀なる口八丁手八丁とコネを持ち合わせている。そこから行くと、狩野が持ちかけたというより、寧ろ中平が入れ知恵したのではなかろうか。
 ともかくその後、中平はニセ株と知りつつも狩野から200株を買い取り、自分が真正の株主として大手企業各社に共栄クリーン売却の話を持ちかけた。
 当初は、当然の事ながら大手各社がこの話に飛びついた。例えば兼松が25億円、朝日建物が23億円、三井建設が15億円、丸紅が11億円と提示され、他にも青木屋鉄工、フジタ等の名前も挙がっていた。
 これらの金額は、もちろん債務処理や、処分場周辺住民の説得やらで金がかかる事を計算に入れてのことである。

 だが、流石は我が国が誇る一流企業、君子は危うきに近寄らず、の言葉通り、何れの企業も辞退することとなる。その理由は、やはり色々と調べて行く内に、出演者の顔ぶれが複雑怪奇であること、見えない負債が多いこと、債権債務が入り乱れていること等々、後に犯罪に発展する可能性が高いことが判明したからであろう。
 ところが平成11年6月10日、高和(現・シンシア)←→中平明美間で、この200株の売買契約が結ばれる。金額は、ナント一億円という破格値である。
何故か?前にも述べたが他の大手企業が数十億円で買おうとしていたという事は、それだけ整理に金が掛かるという事だ。ならば、一億円で売買されることなど絶対にあり得ない。
 シンシアの中西社長が、その莫大な債務の整理役を中平に依頼したのだ。何せ中平は筋金入りの詐欺女。
――自分が関わると面倒だし、何かあった場合に自分の立場も危うくなるが、この女なら、債務処理に持って来いだ。できる限り安い金で、そして後々誰からも苦情が出ないように処理してくれるに違いない――
恐らく中西社長は、こう判断したのでなかろうか。
 従って表面上は1億円の売買でも、裏では必ずシンシアから中平に数十億の金が流れているに違いない。

 また中西社長は、自分たちが掴まされた200株が偽物だという事を知っていたと思われる。何故ならその売買の僅か3週間後=平成11年7月1日、共栄クリーンの株主総会が行われたが、この総会で授権資本(全株数)を800株に変更することが採択されたのだ(それまでの200株に加え、あと600株を増やすことが決まった)。
 実際、約1ヵ月後の同月28日に先ずは200株、更に同年12月22日に200株が増資され、計600株にまで増えている(当紙昨年5月号で報じた時点での話)。
 本物の株券の割合を薄めることで、全てをウヤムヤにしようとしたのだろう。

 
 T氏の正体

 以上がこれまでに当紙が報じてきた内容だが、実は株を増やした理由はこれだけではない。寧ろこれから述べる理由の方が重要であるが、ここでようやく冒頭の財界展望3月号に話が戻る。株を増やした理由は少し待って頂いて、先に同誌上で報じられた内容を要約してお伝えしよう。

 平成12年8月、シンシアが野村證券を相手取り、約2億円の損害賠償請求訴訟を起こした。
 シンシア側の訴状によると平成11年10月、シンシアは株式公開の為に野村證券と「アドバイス契約」を結んだが、野村が一方的に主幹事を辞退し、上場が困難になって損害を被ったというのだ。
 一方、野村がここで主張している「辞退した理由」こそが、当紙の指摘している内容の真実性を裏付けているのである。
 即ちその理由とは、11億円という使途不明金の存在と、それを誤魔化すために、捏造した業務委託契約書を野村に突きつけて憚らない同社の非常識振りや不透明な実態にあった。

 野村證券は、シンシアから「共栄クリーンの整理をT氏に任せた」という説明を受けていた。ところがその後、野村は不自然な株のやり取りに気付き愕然とする。
 シンシアは、共栄クリーン株式を200株増資する際、1,000万円で第三者割当増資して、後日その200株を1億円でT氏から買い取るという行為を2度も繰り返していたのだ。
 このことについて野村證券は「第三者割当増資はシンシアがせっかく手に入れた100%株主の地位を50%におとしめる行為で、(中略)Tにことさら1億8,000万円もの株式譲渡益を与える為に行われたとしか考え難く(後略)―」と述べている。
 同誌上ではTと表記されているこの人物、実は当紙昨年5月号でもチラッと登場した塚田竜堂ではないのか。だとすれば全てのつじつまが合う。塚田は中平明美が率いる詐欺師団の一員で、中平はその親玉だ。
 野村證券が気付いた不自然な株譲渡益=1億8,000万円は、塚田の名義で取り引きされ、共栄クリーン整理の謝礼として中平に渡ったに違いない。

 
 稚拙で社撰な隠蔽工作

 また、野村が指摘しているシンシアの使途不明金=11億円についても同じことが言える。
野村から11億円の使途を訊ねられたシンシアは、当初、共栄クリーンに貸し付けたとし、19の支払先を回答したが、更に詳しく追及されて、実は支払先はT氏1人であったと前言を翻した。
 そこで更に「何の目的でT氏一人に11億円も?」と野村からツッ込まれたシンシアは、署名捺印の無い業務委託契約書を野村に差し出し、これじゃダメだと叱られて、じゃあどんな契約書だったら良いですか?と野村側の社員に電話で訊き、後日、明らかに捏造された契約書等を送付してきたという。
 シンシアが必死で隠そうとしたこの11億円の金こそが、中平が整理に必要とした金だったのだ。
 こんな見え透いた利益供与を行うシンシアと、野村が付き合う訳も無く、あっさり見捨てられたのだ。

 それにしてもシンシアはどういう神経と脳ミソをお持ちなのか。こんなことで野村證券を訴えれば、更なる事実がこのように白日の下に晒され、自分達の立場が不利になることに気付かなかったのだろうか。
 最後に当たり前の事を2つほど言わせて頂くと、先ず中平がシンシアから受け取ったカネを予定通りに関係者に配っていれば、仲間割れも起こらなかっただろうし、関係者の訴訟沙汰にも発展しなかっただろう。つまり、この問題が表に出る事は無かった筈だ。
 共謀した狩野でさえ、200株を売買した際の金を満足に貰っていないため、中平を訴えているとか…。
 誰だって貰えるはずの物が貰えないと、仕返しに喋るものだ。まぁ、詐欺師を上手く操ったつもりの中西社長(=シンシア)だったが、その上をいく頭脳集団に一杯食わされたってところかな。策士、策に溺れるっていうやつだ。

 もう1つの当たり前の話は、この問題は公的機関が捜査に入れば必ずや詐欺事件に発展する。従ってシンシアは勿論、NECだって知らん振りでは通らない。
 株が偽物という事は、原町共栄クリーンはシンシアの物ではない=NECが排出する様々な廃棄物は、どう処理するつもりかな?
 ごめんネ、子供にも解るような当たり前の話で…。
〔つづく〕

 
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