問題山積の共栄クリーンを買収した不動産照力。果たしてその「真の目的」とは…?

 (株)原町共栄クリーンの偽造株券問題について、本紙では過去5回に渡って報じてきたが(51、52、53、60、63号に掲載)今回はその続報である。
 (株)シンシアが所有する共栄クリーンの全株式が、実は昨年の暮れ、あるところへ譲渡されていた。
 その譲渡先というのが、奇しくも本紙地元である戸田市の不動産業者「照力」=しょうりき=(上戸田5-19-7・電話048-442-1131)だったのである。

 不動産照力によると、単に全株式を買い取っただけでは無く、共栄クリーンという会社そのものを買収したとのこと。
 既に不動産照力の横山智一社長が共栄クリーン社長に就任、その他の照力社員も共栄クリーン役員に就任しているという。

 しかし、この買収劇には不可解な点が余りにも多過ぎる。世間様の目は誤魔化せても、この事件を追い続けてきた本紙の目は誤魔化せないのである。
 そこで、これまで本紙で報じてきた内容をもう一度振り返り、不可解な取引の実体に迫ってみたい。

 
 詐欺師中平がニセ株で営業

 平成3年8月19日、福島県原町市に「(株)原町共栄クリーン」が誕生。
 産業廃棄物最終処分業、中間処理業、収集運搬業を目的として設立された同社は、相葉政宏氏が代表取締役を務め、相葉氏と狩野勝氏の両名がそれぞれ100株ずつを所有し、計200株でスタートした。
 相葉、狩野の両氏は、自社の将来性を背景に多方面から融資を受けた。多方面とは、いわゆる裏社会も含めて、である。

 それから約5年半後の平成9年3月18日、同社株が中平悦子こと本名=明美に譲渡される。この中平という女は有名な詐欺師で、過去に何度か詐欺での逮捕歴を持つ女だ。
 この時、中平に譲渡された株数は200株。半分の100株は相葉氏の所有だったはずだが、株主の欄には200枚とも「狩野勝」と記載されており、代表取締役の欄も「狩野勝」となっている。
 つまり、狩野と中平による共謀で同社の株券が偽造され、それが中平に譲渡されたのである。

 この譲渡に伴い、株式譲渡の承認決議がなされたように取締役会議事録が作成されているが、同会に出席したとされる相葉氏は、当時脳出血による後遺症のため入院中であり、偽造された書類である事は明白だ。
 後に狩野は、議事録偽造で警視庁大井署に逮捕されている。

 さて、ニセ株を所有しながら真正な100%株主を気取った女詐欺師中平は、同社株の営業に出かける。つまり全株式=会社ごと売り飛ばして大儲けしようと企んだのだ。
 大手企業にとって、産廃処理施設の設置許可(平成10年3月31日取得)を持つ同社の買収は、とても魅力的だった。一流各社がこの話に興味を示した。
 兼松が25億円、朝日建物が23億円、三井建設が15億円、丸紅が11億円を提示し、他にも青木屋鉄工、フジタ等の名前も挙がっていた。
 無論この金額には、共栄クリーンが抱える債務処理や、処分場周辺住民の説得などに掛かる費用も含まれている。これだけ高い金額で買い取るから、同社をきれいに整理してから売ってくれ、という意味が、暗に込められていたのだろう。

 しかし、さすがは日本の一流企業。見えない負債が多いこと、債権債務が入り乱れ、権利関係が複雑なこと、暴力団、詐欺師、地面師等、色んな稼業の人間が絡んでいること、後に事件に発展する可能性が高いこと等々、調べれば何でも解かってしまう。
 当然の結果ながら、どの企業もこの話に手をつけなかった。
 ここで(株)シンシアの登場だ。シンシアは昭和44年以来、NECの各工場から排出される不要部品の処理やリサイクル、及びNEC各工場やビルの清掃・管理等を一手に引き受けてきた企業だ。シンシアの売上の8割以上はNEC関連であり、両者は切っても切れない関係である。

 
 11億円の使途不明金
福島県原町市の共栄クリーン事務所と、「追っ手」の足音が聞こえるシンシア中西社長(円内)

 平成11年6月10日、このシンシア(当時の社名は高和)と中平の間で共栄クリーンの全株式(200株)の譲渡契約が結ばれた。無論ニセ株である。

 その金額はなんと、破格の1億円。一流企業が何十億円という金額を提示していたのに、1億円で売買される筈が無い。
 本紙は再三にわたり「きっと水面下で十数億円のカネが流れている」と指摘してきた。その後、この事実が偶然にも発覚する。

 というのも株式公開を目指していたシンシアは野村證券と「アドバイス契約」を結んでいたが、野村がこれを辞退。シンシアは「一方的に野村が主幹事を辞退したことによって上場が困難になり損害を蒙った」として野村を相手取って訴訟を起こしていた。
 野村は辞退した理由として『シンシアに11億円の使途不明金があること、更にそれをごまかす為に、明らかに捏造された業務委託契約書を野村に提出するという不透明で非常識なシンシアの体質』を挙げた。

 天下の野村證券を相手に訴訟を起こしたシンシアだったが、図らずも11億円の使途不明金の存在を自ら露呈することとなり、裁判は、シンシアが取り下げるような形で和解に終った。
 やはり本紙の指摘通り、シンシアは、裏稼業が入り乱れる債務処理を自らの手を汚さずに行うために、表では1億円の契約を結びながら、裏では11億円ものカネを女詐欺師=中平に渡し、それらの整理に当らせていたのである。

 恐らくシンシアは、以下のような言い訳を用意していたに違いない。
「当社が共栄クリーンを買収した時には、既にきれいな状態でした。裏社会にカネをばら撒いたと批判されても、それは前任者の中平明美さんが行った事で、当社は知らなかったし無関係です。あくまでも整理後の共栄クリーンを1億円で買収したに過ぎません―」

 ところが、ここまで筋書きが出来上がっていたにも拘わらず、人生というのは真に筋書き通りには行かないものである。
 せっかく渡した11億円を、本当に債務処理に当てていれば良かったのだが、そこは名うての詐欺師=中平。11億円ものカネが、いつの間にやら何処かへ消えてしまったのだ。
 つまり、未だにこのカネは行くべき人のところに行っていない。だから今でも揉めている。
 詐欺師を操って共栄クリーンを整理したつもりのシンシア中西雄三社長だったが、詐欺師連中に一杯食わされた、という事だ。

 
 歳末特価?3,000万円!
地元住民は強硬に反対を唱えている

 さて、ここでようやく不動産『照力』の登場だ。照力は、シンシア所有の共栄クリーン全株式を、平成13年12月27日に買い取っている。
 これがまたテレビショッピングも真っ青の“驚きのプライス”である。
 なんと『3,000万円』だそうな。俄かには信じがたい金額だが、本紙の取材に対して照力も認めているので間違い無い。

 シンシア中西社長が、あれだけ苦労して手に入れた株券を、しかも十数億円ものカネを注ぎ込んだにも拘わらず、僅か3,000万円で簡単に手放すだろうか。常識では考えられない。

 ところで、共栄クリーンが建設を目指している原町の産廃処理施設は、現在工事がストップしている。
 というのも、建設に反対する地元住民が起こした訴訟で「用地の一部の所有権は住民側にある」とする建設差し止めの仮処分命令が下されたのだ(平成13年6月29日・福島地裁いわき支部)。
 地元住民の理解を得る為には、環境への配慮はもちろんの事、用地の所有権者を説得するだけの材料が不可欠だ。根気強い交渉と莫大な資金が必要となってくるだろう。

 この工事は建設大手の鹿島が行っていたのだが、総工費1,000億円といわれる大規模な工事も、3億円ほど受け取った時点で、前記のように頓挫した。実はこれに纏わる裏話がある。
 当時の共栄クリーンはシンシアによって運営されていた訳だが、シンシアには1,000億円を払う力など到底無い。
 そこで、シンシア中西社長と30年来の付き合いがあるNECの西垣社長が、鹿島の福社長=某氏に工事を直接頼み、この某副社長の大号令で工事がスタートしたという噂である。
飽くまで推測の域を脱しないレベルの話だが、ともかく、このままでは某副社長の責任問題に発展してくる恐れもある。

 最近、業界内では「鹿島はNECとシンシアを相手取って、工事がストップしたことに対する訴訟を起こそうとしているのでは?」との憶測まで飛び交っているという。
 鹿島の某副社長にしてみれば、鹿島の利益と自分の「立場」もかかっている訳だから充分あり得る話だ。

 
 
 ニセ役員からニセ株を買った照力

 また訴訟といえば、共栄クリーンの真正な100株の持ち主である相葉氏は、共栄クリーンを相手取り、相葉氏の株主権確認と、株主総会決議不存在(相葉氏の欠席)を確認する訴訟を提起していた。
 共栄クリーンは現在、この裁判を含め計9件もの訴訟を抱えているが、極論すれば、同社にとってはこの相葉氏との裁判の結果こそが最も重要であるはずだ。
 平成14年4月23日福島地裁相馬支部に於いていよいよその判決が下された。要旨は次の通りだ。

一、 原告が被告会社の100株の株主であること。
二、 被告会社の授権資本を200株から800株に増資する旨の定款変更決議は存在しないことを確認する。
三、 中西雄三(シンシア社長)等がなした被告会社の増資手続きは、いずれも無効とする。
四、 中西雄三等を被告会社の取締役等に選任した決議は存在しないことを確認する。

―言うまでも無いが、原告とは相葉氏のこと、被告会社とは共栄クリーンのことである。
 要約すると、シンシアが正規に買い取ったと主張していた共栄クリーンの全株式=200株は無効な株式であり、その株主権を根拠としてなされた定款変更や増資手続き、役員選任手続き等は全て無効である、という判決である。
 従って照力は、役員の資格を持たないニセ役員からニセ株を買い取り、そのニセ株の所有を根拠に共栄クリーンを運営し、用地の一部が他人様の土地であり地元住民が反対する場所に産廃処理施設を建設しようとしている
、ということになる。
 現在、共栄クリーン(照力)はこの相葉氏との裁判に控訴しているが、果たして勝算はあるのか…?

 そもそも総工費1,000億円の工事を進めるだけの資金が照力にあるのか。
 地元反対住民の説得は?この説得にだって資金が必要だろう。
 また、共栄クリーンが抱える「表からは見えない債務」の処理はどうするつもりか?ここには闇の紳士達も多数絡んでいるが、苦情が出ないように処理できるのか?
 照力はこれらに必要な資金と人材をどうやって拠出するつもりなのだろうか。
 「見えない債務」の多さや、裏社会が複雑に絡んでいる事、工事差し止めの仮処分、相葉氏との株の問題での一審敗訴などは、業界の誰もが知るところだ。共栄クリーンの抱える問題は言わば周知の事実である。
 仮にスポンサー企業を募ったところで、事件に発展する可能性が高い同社の事業に、出資・投資する企業など皆無であろう。となると、工事を請け負ってくれる建設会社も無いだろう。

 やはり、どう考えても戸田市の不動産業者「照力」あたりが請け負えるレベルの仕事では無いのである。
 それでも照力は本紙の取材に対し、飽くまで九件の訴訟で争いつつ、原町の産廃処理施設を建設・運営する、と言い張るのだ。
 「本当は、3,000万円で買った全株式を、何処かの企業に高値で売って儲けようということでは?」との問いにも「売却するつもりはありません、あくまで我々照力で運営して行きます」と答えるのである。

 
 サルでもわかる数々の矛盾点

原町市の産廃処分場予定地と、近ごろ「解任!」の声が聞こえるNEC西垣社長(円内)

  照力によると「@相葉氏との訴訟の件A原町の地元住民による反対」の2点については知っていたが、それ以外の詳細については、本紙の指摘(取材)を受けて初めて知ったとのこと。
 「まさか共栄クリーンにここまで複雑な問題が山積しているとは知りませんでした」と仰るのだ。

 しかし考えてもみて頂きたい。素性の知れぬ会社の全株式を、30万円ならまだしも、3,000万円も注ぎ込んで買い取るなんてあり得るだろうか。
 この疑問に対しては「暮れの慌ただしい時期だったので、よく調べる暇がありませんでした」との回答だったが、そんな慌ただしい時期に、問題を抱えた企業の全株式を気軽に3,000万円で買えるほど、照力は儲かっているのか…?

 ましてや、単なる株の買い取りではない。全株式を含め会社を丸ごと買収し、自分達で経営して行こうという人が、暮れの時期だからといって調べもせずに買収するだろうか…。どう考えても不自然な話だ。
 百歩、いや千歩譲って、本当に詳細を知らずに買収したとしても、本紙の指摘を受けた時点でそれを知った訳だから、シンシアに対して「何で譲渡契約する前に説明してくれなかったのか。これじゃ詐欺も同然じゃないか」と、抗議するはずである。

 それ以前に、今年4月の一審敗訴の時点で、何故シンシアにクレームをつけなかったのか。
 裁判所が、シンシア所有の株券(訴訟提起当時はシンシア所有、判決時は照力所有)を無効と判断したのに、なぜ平然としていられたのか。
 飽くまでも一審勝訴を前提に譲渡契約を結んだとしたら、敗訴した時点で「話が違うじゃないか、どうしてくれるんだ!」となるだろうし、逆に一審敗訴をある程度覚悟していたとしたら、何故そんな買い物をしたのか、という事になる。

 ともかく一審敗訴の時点で、照力はニセ株を3,000万円で売りつけられたことになる。
 しかし照力は、シンシアに対し「ニセ株を返すからカネを返せ」とも言わず、勝算が極めて低い裁判に、高い弁護士費用を払って控訴したのである。
 そこまでして、不利な裁判をシンシアから引き継がなければならない必要性がどこにあったのか。

 そこから導き出される仮説は『シンシア中西社長のダミー』である。
 前述のように、シンシアには11億円の使途不明金がある。今後、中西社長に特別背任罪、脱税、或いは詐欺師連中との共謀などの容疑が掛けられる可能性は極めて高い。
 未確認情報だが、既に当局が動き出したとの噂すら飛び交っているほどだ。
 これら当局による今後の動き、また本紙街宣部隊をはじめとする様々な団体による抗議やマスコミによる攻撃を躱す目的で、シンシアはしばらくの間、照力にニセ株を抱かせているのではなかろうか。

 ほとぼりが冷めた頃、シンシアが例えば3,000万円の倍額で買い戻すのか、或いはそれ以外の(シンシアの息の掛かった)企業が3,000万円に幾らか乗っけて引き取るという算段かもしれない。
 若しくは3,000万円の譲渡契約は形だけで、実際には3,000万円というカネは動いておらず、しばらく経ったらシンシアに返す腹積もりかもしれない。だとすれば既にシンシアから照力へ「お小遣い」が渡されている可能性もある。
 「現実には3,000万円の授受は無い」とまで言い切る業界の声もあるし、或いは「照力だったら、それぐらいのことやるだろうね」という地元の声もある。
 やはりシンシアのダミーとしてニセ株を抱き込み、共栄クリーンを「経営する振り」をしながら、のらりくらりと批判や質問を躱すつもりなのではないか。
 そして約束の期限まで、或いは世間がこの問題を忘れる日まで様々な批判を浴びながら、ただジッとして耐える“役目”を担っているとしか考えられないのである。

 そもそも、シンシアが所有していた共栄クリーン株の譲渡先は、なぜ照力になったのか。この二者にはどんな接点があったのだろうか。
 答えは、間に入って両者を取り持った人物=O弁護士の存在があったからだ。

 
 中西雄三 絶体絶命

 さて、このO弁護士の紹介で、シンシア所有の共栄クリーン株を入手した照力だったが、せっかく手に入れた株をHやTといった人物(ブローカー?)が売り歩いている、と専らの噂なのである。
 ある情報通氏の話によると、このHやTは行く先々で「照力は、納得のいく金額さえ提示されれば、共栄クリーン株なんて今すぐにでも手放しますよ」と、照力が共栄クリーンを運営する気などさらさら無く、高値で売り捌く事を目的としている旨を示唆しながら、買い手を探しているというのだ。

 あれえ?確か照力は本紙の取材に対し「売る気は全く無い。飽くまでも我々照力の手で共栄クリーンを運営して行く」と答えていたけど、あれは嘘だったの?

 ともかく相葉氏との株の訴訟で一審敗訴を喫した照力(被告は共栄クリーン)だが、控訴でいくら時間を稼いでも、いつかは答えが出る(因みに次回の裁判は12月6日)。
 照力がこの裁判で逆転勝訴しない限り、所有する株券もタダの紙切れ、共栄クリーン役員としての資格も単なる「〜ごっこ」という子供のお遊びとなる。
 あ〜あ、勿体無い事したね、3,000万円。
 あっ、3,000万円で思い出した。そういえば、シンシアから買い取った際に照力が払ったとされるこの3,000万円、実は4,000万円が本当の金額だという説もあった(他に1億4,000万円という説も有り)。
 これで三択問題になった訳だが、前述の通り、本紙の取材に対して照力は3,000万円で譲渡契約したことを認めている。まさか照力が同じ地元でもある本紙に嘘を吐くとは考えられない。

 そうですよね照力さん。公言した通り、どんなことがあっても共栄クリーン株は絶対に売らないで下さいね。そして1,000億円以上ものカネを拠出して、産廃処理施設の運営、頑張って下さいね。約束ですよ!

 ところで、下の記事(今月4日付け朝日新聞)をご覧頂きたい。
 この記事を読んだ限りでは、シンシア中西社長が街宣活動への対価としてカネを払った可能性が高い。
 NECの内部では、以前から関本忠弘(元会長)と西垣浩司(現社長)の対立が存在した。この関本派と西垣派の確執は現在でも続いている。
 その関本氏の解任を掲げて街宣活動を行った団体=『全労共』に、シンシアから2,500万円が流れていた事は紛れも無い事実だ。

 シンシアの中西社長は当初、支払いの事実そのものを「知らない」とトボケていたが、親玉であるNECがコメントした途端に、もはや言い逃れは出来ないと思ったのかその事実を認めている。
 なぜ最初から認めなかったのかは読者の皆さんのご想像にお任せするとして、@全労共は、西垣社長の宿敵である関本氏の解任を訴えていたことAその全労共に、名目は何であれシンシアから2,500万円が流れていたことBシンシアの中西社長とNEC西垣社長は親密な関係であること、の3つを踏まえれば、この問題は簡単に解けますので考えてみて下さい。
中西社長の行く末が案じられる昨今だが、もしかすると西垣社長まで……??

 
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