福島県原町市の産廃処理業者「原町共栄クリーン」の2代目社長を務めた狩野勝氏が、当時建設予定だった産廃処分場の共同経営権などを担保に、複数の相手から乱脈融資を受けていた実態が本紙への情報提供で明らかになった。

  

  今回明らかになったのは平成6年から同10年までの5年間に狩野氏が受けた融資の実態で、金額は数百万円から億単位まで、融資先も多岐にわたっている。

 本紙が入手した書類の中には、大学ノートに手書きで「借用書」と記され、債権者名すら記載されていない簡易的なものもあるが、特に目を引くのは、当時原町市に建設予定だった産廃処分場の共同経営権を担保に、同時に複数の相手から融資を取り付けていたという点だ。

 例えばA社との契約書は以下のような内容だ(甲=原町共栄クリーン、乙=株式会社A社)。

  「甲が福島県原町市大字酒井151番地に開発計画の管理型最終処分場について、甲・乙は、共同で運営することを契約した」

 「株式会社原町共栄クリーンの株券30%を甲が所持し、70%を乙が所持する」

 「乙が今回資金協力する事について、甲の計画している本事業の開発行為は、乙に一任し、甲は全面的に協力する事」
―などといった内容となっている。また他方では、B社に宛てたこんなものもある。

 「借用書 金六百萬円也 上記金額本日正に借用致しました。今後の原町共栄クリーンの運営については総てご相談しながら進めて行きます」

 「(株)B殿 領収書 金参百萬円也 金壱拾五億円也の内金」

 「但し、株式会社原町共栄クリーンの法人売買代金(営業権、土地代金、設置許可含む)の一部支払代金に充当する」(※本紙注・ここには、前回の600万円の借金も法人売買代金の一部に充当するという趣旨のことが記されている)

 ―これはどうナナメに読んでも、原町共栄クリーンを丸ごと売り飛ばしたといって過言無き内容だ。しかも同B氏に対し「別紙領収書及び、株式会社原町共栄クリーンの法人売買の違約金を双方、金三億円に致す事を合意致しました」という“合意書”まで交わす念の入れ様だ。

 このA社、B社に対する2つの“約束”が同時に存在すること自体が、狩野氏の経営者としての杜撰な体質を如実に物語っている。要は、カネさえ借りられるなら何でも約束するし判子もつくという同氏の節操の無さが、この株券偽造という事件を惹起した一因とも言える。

 

原町共栄クリーン偽造株券事件

 廃棄処分場運営を目的とした共栄クリーン相葉氏狩野氏によって福島県原町市に設立され、初代社長の相葉氏と同設立者の狩野氏が100株ずつ保有し経営を開始。

 同社の営業権等を形に借金を重ねた狩野氏は、偽造株券(200株)を中平明美氏に譲渡。中平氏はその200株を(株)高和(=現・シンシア)に売却(狩野・中平共謀説が有力)。その株券を根拠として高和は役員変更手続きや増資手続きを行い共栄クリーンを経営。

 処分場建設に向けて動き出すも、地元住民の訴えにより建設工事中止の仮処分命令が下され計画は頓挫。買収に実質十数億は掛かったと言われる同社株を、高和は照力に3,000万円で売却してしまう。

 相葉氏が起こした裁判では1、2審共に、相葉氏が100株の株主であること、高和の中西社長による増資手続きや役員就任決議が不存在であることを認定。現在最高裁で係争中。

 
 上告で時間稼いでも偽株は本物に化けず
 本紙では原町共栄クリーンの偽造株券問題を過去9回にわたって報じてきた。NEC子会社の「高和(現シンシア)」が所有する共栄クリーン株はニセ株で、そのニセ株をいくら増やしたところで(増資しても)本物にはならないし、そのニセ株券を保有することを根拠に共栄クリーンを経営している高和は、本来経営に携わる資格や権利を全く有していない、と。

 時には筆を執り、時には街宣車両のマイクを握りながら、高和の本社或いは親玉であるNECの本社前路上でこういった訴え掛けを行ってきた。高和の中西社長、NECの西垣社長(=当時)らは本紙を納得させるだけの説明を行うことができず、共に知らぬ存ぜぬを決め込んでいた。

 果たして高和は、十数億円もの銭を投げて手に入れた共栄クリーン株と同社の経営権を、埼玉県戸田市の不動産業者『照力』(しょうりき)に僅か3,000万円で譲渡した。

 譲渡を受けた照力は本紙の取材に「安く買って高く売ろうという目的で譲渡を受けたのでは無い。飽くまでも自社で処分場を運営して行く」と強がって見せたが、処分場建設工事は裁判所の仮処分命令によって現在もストップしたまま。共栄クリーン設立時の社長だった相葉氏が起こした裁判では1審2審と負け越し、その審判を最高裁に委ねては見たものの前判決を逆転させるに足る事実や証拠物も皆無に等しく、結果は目に見えている。

 手前味噌だが、こうやって全体を俯瞰(ふかん)すると、結果的事実の1つ1つが、本紙の主張してきた内容の真実性を裏付ける1つの証左となっていることが分かる。

 さて、右上の資料は共栄クリーンが所有する土地の登記簿謄本の一部だ。債務者の「ブイ・シー管理株式会社」というのは照力の関連会社で、同社は株式会社エヌ・ケイ・ファイナンスから9億7,000万円以上もの融資を受け、その借金の形に共栄クリーンの所有する福島県原町市の山林(約2,700坪)を差し出しているのだ。

 ところが、寄せられた情報によると「エヌ・ケイ社がブイ・シー社に融資を行った実体は無く、これはブイ・シー社による脱税行為だ」というのだ。本当だろうか。俄かには信じ難いが確かに不審な点はある。

 第1に、ブイ・シー社のような零細企業が10億円近いカネを何に使うのか。

 第2に、なぜもっと低金利の銀行等金融機関から借りずに、年利15%のマチ金=エヌ・ケイ社から借りるのか。

 第3に、エヌ・ケイ社は何故、ブイ・シー如き零細に10億近いカネを貸したのか。また、貸せるだけのカネを持っているのか(通常は10億円の融資といえば銀行レベルである)。

―考えれば考えるほど怪しいことだらけだ。今後この脱税疑惑についても、国税当局への査察を促すべく、本紙としても調査を行っていきたい。
(つづく)

 
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