【緊急リポート】 三菱自動車が日本企業の経営を変える!

 日本企業の“「経営管理」の欠陥”について、RMコンサルタント佐藤昌弘氏と本紙社主との対談を、1月号、2月号の2回にわたって連載した。今月号で第3回を掲載する予定であった。

 ところが、日本企業の経営に関して歴史が変わるような異変が突然生じた。その緊急報告に変更したい。日本の上場企業各社と関係者にとっても、その異変に対処した俊敏な行動が必要となるからだ。

 日本企業が、「経営管理」に関して米国企業に30年〜50年遅れていることを、今年1月に聞かされた。そのことに日本中が気づいていないとの説明を受けて、大へん驚かされた。日本の恥ではないか。

 朗報がある。その日本の恥が解消されるかもしれない、という佐藤氏からの緊急報告である。RMコンサルタントとして、佐藤氏が米国企業なみの「経営管理」システム化を提唱する啓蒙活動を始めて、29年もの年月が経過したと聞いていた。

 30年目の今、ようやく花が咲きかけたようだ。「経営管理」システム化を実現させる第1号企業が、出現したというのだ。

 三菱自動車だ。この第1号・三菱自動車の新戦略がモデルとなれば、日本企業各社が経営を大改革することにつながる。

 歴史の1ページとなることは間違いない。

 
 日本の企業の常識は、米国など世界企業の非常識
 「経営管理」責任体制の不在はマイナス50点からスタートする経営
社主   「経営管理」に責任体制が不在なのは、経営が不安定な状態だということは、よくわかった。
佐藤  

そのとおりです。

「経営管理」責任体制の不在の状態は、100点満点からいきなり50点を引いて、マイナス50点からスタートする成績なのです。つまり他の面がどんなに優れていても、45点とか47点しかとれないことになります。

社主   もちろん不測の事故がまだ生じてない段階での責任体制不在がマイナス50点であって、不測の事故があって、大きな損失を出せば、マイナス100点を超えることになるだろう。
佐藤   当然です。最初にマイナス50点からスタートしているから、さらにマイナス30点とか、大きい損失の場合はマイナス80点とか、マイナス120点が追い打ちをかけられる。責任体制の不在は、「経営管理」の欠陥でもあるのです。
 
 経常利益1,500億円超の企業は赤字回避ができても、利益減少は落第
社主   業績のよい企業の場合でも、「経営管理」の責任体制は必要か。
佐藤  

大へん重要な質問です。

 一般的に、経営者にとって年次決算が赤字になることは、絶対に恥だという通念です。決して、赤字にならなければよいということではありません。しかし利益が大きく減少しても、赤字にさえならなければ、なんとか責任を免れると考えれば、巨額な損失が生じても、赤字が生じない分岐点がどのくらいかということです。2000万円くらいに設定したいところです。

 しかし多少の利益があって、相殺できるだろうと考え1500億円くらいに設定しましょう。経常利益1500億円未満の企業は、「経営管理」責任体制の導入は不可欠と考えるべきです。

 しかし、上場企業はすべて、経営陣は、経営の原点に立って、責任感を新たにすべきです。経営のいろはの「い」は、年度初めに立てた「経営計画」「利益計画」に対して、狂わさず年度末にゴールインすることです。

 基本に忠実な米国企業では、「経営計画」を狂わせないことは当然のことだとして、CEO、COOに次ぐナンバー2のポストに、CFOを固定させ、歯止めをしているのです。

社主   なるほど。経営規模は関係なく、経営のイロハを大切にしなくてはいけない、ということだね。
 
 “みんなで渡れば恐くない”の精神を「経営管理」責任体制の導入企業が壊す
佐藤  

35年〜50年にわたって、日本の上場企業が欠陥をかかえた経営を続けてこられたのは、“みんなで渡れば恐くない”の精神だと思うのです。

 日本では上場企業のすべてが、「経営管理」に欠陥を抱えていても通用してきたのです。米国では考えられないことです。

社主   1社でも例外が現われ、いろはの「い」を重視した経営を始めると、“みんなで渡れば恐くない”精神は崩れてくるね。どうやら、それが実現しはじめたようだ。
佐藤  

今まで、日本企業の株主の中で経営を最も知っている実力派の米国の機関投資家でさえ「経営管理」の欠陥に気づいていなかったようです。

 それでも今年2005年から、株主が投資先企業1社1社の「経営管理」の差異を調べることがあり得ます。

 他社も怠っているから大丈夫だといった、“みんなで渡れば…”式の日本的経営は、影をひそめることでしょう。

 
 三菱自動車の大殊勲が日本企業の50年遅れを食い止めた
 D・クライスラー社の傘下を離れて「経営管理」システム化する日本企業第1号
社主   三菱自動車が「経営管理」に責任体制を導入したのは、いつからか。
佐藤  

小職が知ったのは、「役員四季報」(東洋経済新報社)2005年版です。2004年6月末付の人事によって発表されています。ただ三菱自動車は、筆頭大株主のダイムラークライスラー社の傘下にありました。自主性は全然ないと推察して問題にしていなかったのです。それがDクライスラー社の傘下から離れて、三菱グループ主要3社の支援を得ながら自主的な経営を始めると発表されたのです。大いに期待しました。

 1月28日、新しいリーダーが発表されました。会長CEOと社長COOです。これで2004年6月末に新設されたCFOの制度が本格的に生かされる、と直感したのです。本格化するのは2005年度、つまり4月1日からでしょう。期待できるのは新会長CEOが実力者であることです。筆頭株主となる三菱重工業の現会長西岡喬氏が、兼務の形で就任します。西岡新会長・CEOは、CFOが導入された時点で非常勤取締役に就任したのです。

 
 CFOを生かすも殺すも「経営管理」責任体制づくり次第
社主   米国企業では、CFOを置いている企業は多いのか。
佐藤  

徹底的に調査したことはないですが、有力企業は例外なくCFO、COOのトップマネージメントの次の、つまりナンバー2のポストには、CFOを固定化させているようです。

社主   ホー。どの企業も置いているのだ。日本では上場企業が約2800社あるようだが、CFOを置いている企業がないのは驚くね。
佐藤  

「役員四季報」(東洋経済新報社)を、各ページを順にめくってみたのです。昨年の夏ごろです。IT関係の、小規模で売上高も100億円未満の会社です。2社ほど、社長の次に最高財務責任者CFOを導入しているのです。2社ともカタカナの社名であり、取締役が4名〜5名しかいない企業です。他に影響をおよぼすところまでいかないので、ゼロと同じです。

社主   それでは三菱自動車は、文字通り第1号であり貴重な存在ということになるね。
佐藤   その通りです。29年間待ち続けて、30年目に実現したのです。上場企業2800社にモデルになって欲しいことです。問題は、CFOの直属の機能をどう組織化するかです。下の図1が実現したので、あとは図2です。図2を充実させないと最高責任者CFOが、危険にさらされることになります。CFOを護るためにも“責任体制づくり”です。
 米企業CFOの機能を研究しない日本企業は、完全に立ち遅れる
社主   三菱自動車の最高財務責任者CFOに、右へならえをする企業が増えるのではないか。
佐藤  

日本企業は、米国企業の執行役員制度、コーポレートガバナンスなどを真似して導入しているところが多い。問題は、形だけ真似をする“クセ”であります。形より機能が重要なのです。

 機能を参考にするクセを身につけていれば、「経営管理」の責任体制など15年前か20年前でも実現していた筈です。

 今回も、三菱自動車のCFOという形式だけ真似をしても、なんの効果もないのです。「経営管理」の責任体制の機能こそ、経営安定の歯止めになる武器なのです。CFOは、その機能をフルに活用するための最高責任者なのです。

 米国企業における、「経営管理」の責任体制について、その機能を調査研究しない企業はダメです。

三菱自動車
 
トップページ大企業(有名企業)大組織一覧
©2005 敬天新聞社
info@keiten.net