最高裁が上告棄却
市ヶ谷ほどのワルではないらしいが、ニセ物と知ってて本物と偽ることは詐欺罪になりますよ、横山智一社長さん
 福島県原町市の産業廃棄物最終処分業者『(株)原町共栄クリーン』(以下「共栄クリーン」)の偽造株事件について、本紙では平成13年5月以降、実に11回に亘って取り上げてきた。事件を報じる過程では関連する様々な人物が登場し、また新情報や疑惑も浮上した。

 しかし、それらの詳細については本紙過去記事に譲ることにし、本稿ではこの事件の主題である“偽造株券”に焦点をあてたい。

 既に前回(本紙平成17年1月号)報じたとおり、共栄クリーン株をめぐる裁判の最高裁判決が、昨年10月7日に下された。結果は「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない」というものだった。

 この裁判の内容を報じる上でも、事件のあらすじをもう一度だけ、株券の話に的を絞っておさらいしておく必要があろう。

 平成3年8月19日、産業廃棄物最終処分業等を目的とした共栄クリーンが、狩野勝氏と相葉政宏氏らを中心に設立された。同社設立当初、株券は200株発行され、狩野氏と相葉氏がそれぞれ100株ずつ所有し、代表取締役は相葉氏でスタートした。

 それから約5年半後の平成9年3月18日、共栄クリーンの全株=200株の譲渡契約が、狩野氏と中平悦子(本名明美)間で締結され、更にその約2年後の平成11年6月10日、この200株が中平から(株)シンシアに譲渡された。

 繰り返すが、共栄クリーンの200株は、狩野→中平→シンシアと渡ったことになる。ところが…。本紙でも株券のコピーを掲載して詳しく検証したように、実はこの200株が「ニセ株」だったのである。

 これらが「ニセ株」であることの根拠として、先ず決定的な点は『株主』の名前が200株とも『狩野勝』となっている点だ。

 これら200株の発行年月日は、いずれも『平成3年8月20日』と記されている。前述の通り、同社が設立されたのはこの前日である同年8月19日であり、狩野氏と相葉氏が100株ずつ所有していたはずだ。従ってこの『株主』名を見ただけで、少なくとも半分の100株は「ニセ株」であることが分かる。

 2点目として、『代表取締役』の氏名が『狩野勝』となっている点だ。これも前述したとおり、共栄クリーン設立当初は相葉氏が代表取締役だった訳で、会社設立日の翌日付で発行された株券に『代表取締役 狩野勝』と記されていること自体が不自然だ。

 また、これ以外にも、前半100株(第001号〜第100号)と後半100株(第101号〜200号)を比較すると、同じ日に発行された株券であるにも拘らず、前半100株には会社角印が押してあるが後半100株にはそれが無かったり、或いは株主名が、前半100株は印刷されているのに後半100株はゴム印だったりと、不自然な点が多々ある。

 
 照力が吐いた虚言

 ともかくも本紙は、これらの株券を取得したことを理由として当時共栄クリーン役員に就任していたシンシア中西社長、また同氏の親友でもありシンシアに41%も出資している事実上のシンシアの親会社=NEC西垣社長(当時)に対し、これら株券がニセモノであることを訴え、本紙上でも追及してきた。

 そして平成13年12月27日、これらの株券が不動産業者『照力』(埼玉県戸田市)に譲渡された。

 「株券を安値で買って高値で売り、その売却益を得るのが目的ではないのか」との本紙の問いに対し、照力は「一切そういうことは考えてない。飽くまでも、我々照力グループの手で共栄クリーン(産廃処分業)を運営していく」と断言した。しかし照力は、税理士を名乗る男や元警察官といったブローカーを使って共栄クリーン株の買い手を探し始めた。

 他方、真正なる株券100株を所有していた相葉氏は堪ったものではない。自分の知らない所で新たな株券が200株も勝手に作られ、その200株を根拠にシンシアが共栄クリーンを経営し増資まで行うのだから、これでは「貴方の所有する株券はニセモノで、貴方には何の権利もありませんよ」と言われているに等しい。このまま黙っていては、真正な株券の50%を所有しながらも、蚊帳の外に追い遣られてしまう。というか、既に追い遣られてしまっている。

 そこで相葉氏は『自らが100株の株主であることの確認』等を求めて、法人である共栄クリーンを相手取り裁判を起こした。

 福島地裁相馬支部は相葉氏の主張をほぼ全面的に認めた。これを不服とした共栄クリーンは控訴したが、仙台高裁でも同様の判決が下され、更に上告までしたが、結局は冒頭のような判決が下されたのだ。

 従って、相葉氏が所有する100株(と、狩野氏が当初所有していた100株)が真正なる株券であり、それ以外の株券(狩野→中平→シンシア→照力と渡った株券)は、やっぱり「ニセ株」だったということになる。

 
 裁判所も欺く商魂

 ここで着目すべきは、共栄クリーン設立当初、狩野氏が所有していた「真正なる株券」=100株の行方である。いったい何処へ…。

 と思っていたら、あったよ、ありましたよ、ちゃっかり照力が握っていた。

 そもそも照力は、シンシアから譲り受けた株こそが「真正なる株券だ」との立場を取ってきたはずだ。だからこそ、共栄クリーン役員に就任し、本紙に対して同社を「我々照力の手で運営していく」などと明言したのである。

 そうすると照力は、それ以外の株券(相葉氏と狩野氏が当初所有していた200株)をニセモノと考えていたことになる。

 ところが照力は、最高裁まで争って全面的な敗訴が決まった今、自らが「ニセモノ」という立場を取ってきた筈の「狩野氏が所有していた真正なる100株」を、「これぞ真正なる株券の50%分だ」と、これまでとは180度異なる立場を示し始め、しかもその株券を3億円だか4億円だかで売り捌こうと買い手を探しているというのだから、まあこいつらはどこまで腐っているんだか…。

 本来ならば、最高裁まで争って負けたのだから、相手側に菓子折りの一つも持って挨拶に行き、「今まで貴方の株券をニセモノであるかのような立場を取ってきましたが、私の方こそがニセモノでした。どうもすみませんでした」と今までの非礼を詫び、所有する株券(本物の100株)を差し出して「勘弁して下さい」と頭を下げるのが、日本人としての“礼”であり道義ではなかったか。

 それをこの照力は、昨日まで「ニセモノ」という立場を取っていた100株を、今度は「ホンモノ」と胸を張って売り歩いているというのだから、開いた口が塞がらない。

 それ以前に本当にこの100株をニセモノだと思っていたなら、誰も大切に保管しておかないだろう。つまり照力は、裁判でどっちの株券が「真正」と認められようとも、少なくとも50%株主としての権利はある、と判断し、ニセモノと分かりきった(シンシアから譲り受けた)株券を、敢えて「ホンモノ」との立場を取りつつ、裁判で時間を稼いでいたに過ぎないということになる。

 後日談として本年5月10日、最高裁判決確定後、初の当事者双方の話し合いが原町共栄クリーンで行われたが、照力側は、なんとこの席上に暴力団員を15名も同席させたというから、何をかいわんや。

 結論としては、現在共栄クリーン役員に就任している照力側のメンバーは退陣するという話で纏まったと聞くが、照力が所有する全体の50%を占める株券については、今後も高〜い値段での買い取りを求めて交渉に臨むと見られる。

 それにつけても、これだけの事件でありながら何故捜査当局が動かないのかが不思議である。
(つづく)

 
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