確か… 前は…

是非とも社長さんにお会いしてお話を伺いたいのですが…常盤さんで駄目なら、社長さんとアポイントメントを取るにはどなたにお会いすれば?

「え〜、社長室の人間になるかと…思います」

   

社長室のどなたですか?

「いや〜、誰だったか…」

   

社長室の責任者は社長室長さんですか?

「そうなると…思います」

   

じゃあ社長室長さんは誰ですか?

「えー、あー、確か…前はスギヤマという人物だったと思うんですが…」

   

前は聞いていません、今の話です

「えーと、確か…(この間30秒ほどモゴモゴと口篭もり)今は…、ん〜、恐らくオ、オオ何とか、オオイワだったと思…」

   

常盤さん、あなたシャンソン化粧品の社員の方ですよね

「はい」

   

ご自分の会社の社長さんに何時もくっついて歩いてる方の名前は、一般的に知らないモノでしょうかね…

「いや、最近人事異動があったもので…」

   
はあ、そうですか…

 先日、本紙の許に、株式会社シャンソン化粧品(川村修社長=本社・静岡市国吉田)と東急建設株式会社(山田豊彦社長=本社・渋谷区渋谷)に纏わる“ある投書”が寄せられた。『ある投書』と呼ぶには、もちろん訳がある。

 結論を先に述べると、投書の主が訴えている事件の真偽は今のところ定かではない。従って本稿では、投書の内容については敢えて伏せたままで進行することを予めご了承頂きたい。

 さて、ここまで読み進んで頂いたらもうお分かりだと思うが、冒頭のやり取りは、その投書を受けてシャンソン本社を訪れた際のものだ。人事異動で脳内の記憶が混乱されていた常盤氏には同情するが、どことなく、何かを隠そうとしている、或いは単に本紙を忌み嫌っているだけなのかも知れないが、いずれにしても不自然さを感じたことは事実だ。

 その後、常盤氏の不確かな情報に基づいてオオイワ氏に電話連絡を試みた。


(投書の内容)…という事なんですが、社長さん若しくは担当の方にお会いしてお話を伺いたいのですが…

「誰もお会いできないし、お話できません」

   

企業として、何らかの調査を行って説明する責任があると思いますが…

「これ以上、お話しすることは無いというのが社内の総意です」

   

いま『社内の総意』とおっしゃいましたが、この『社内』には、舞台となった物件の貸主で御社の子会社でもある株式会社卓謙さんも含まれているということですか?

「………」

   

つまり御社の子会社=卓謙さんも含めて一切ノーコメントということでしょうか?

「とにかくこれ以上は…」

   

問題の物件の貸主は御社ではなくて卓謙さんで間違いありませんよね

「はい、貸主は一応卓謙ですけど…」

 
 ケイサツ呼ぶぞ!
 とまあ、このように、同社から有力な証言なり情報なりを引き出すことは出来なかった。これも筆者の不徳の致すところだ。自らの力不足を恥じる他ない。

 さて、一方の当事者である東急建設にも事情を聞くため本社を訪ねた。

 受付で待っていると、総務部秘書グループ担当部長の森氏が応対に見えた。事の概要を説明したところ、「それでは担当者を呼びますのでお待ちください」といって呼んでくれた。

 しばらくして現れた男は挨拶するでもなく名刺を出す訳でもなく突然筆者の正面に腰掛けた。

 男に詳細を告げた。


 

「じゃあ担当者に調べさせますが、何を調べれば良いですか」

   

ですから、いま申し上げた内容の真偽の程を知りたいのです

「何のために調べるんですか」

   

だから寄せられた投書等の情報だけでは真偽が定かではないから、それを明らかにするためです。それに、真実だとしたら大変な問題ですから…

「それなら簡単です。担当者に聞けば直ぐに分かることです」

   

じゃあ今直ぐ問い合わせて下さい

「今はできません」

   

何故ですか

「担当者がいないかもしれないからです」

   

いるかも知れませんよ。聞くだけ聞いてみてもらえませんか

「『そういう事実は無い』って答えればいいのか」〔ここまで互いに敬語で話していたのだが、男が態度を豹変させる〕

   

はあ?

「そういう事実は無い、と答えたらどうするつもりなんだ」

   

よけいなお世話だ。どうするつもりも、こうするつもりもねーだろ。そうなったらその時に考えるよ。そもそもそういう物言いは失礼じゃないか。喧嘩売ってんのか

「喧嘩は売ってない…」

   

じゃあ何だ

「『そういう事実は無い』って、言えば良いんだろう?」

   

何だそりゃ?

「だからそういう事実は無いんだよ」

   

調べもしないで何で分かるんだ?

「もう調べた」

   

は?

「もう既に調べた。調べた結果そういう事実は無かった」

   

さっきこれから調べるようなことを言ってたのは嘘だったのか

「とにかくこれでもう用は済んだ。帰ってくれ」

   

ひとを馬鹿にするのもいい加減にしろ。調べたなら調べたと、最初から一言いえば済む話じゃないか

「シャンソンから連絡があった。ウチの担当者にも直接聞いたがそういう事実は無いと言っている。だから帰ってくれ、ケイサツを呼ぶぞ!」

   

おう、呼べ呼べ!〔男が席を立ち電話を掛けに行く。しばらくして戻って来た〕

「いまケイサツを呼んだからな。警視庁には既にこの件で相談済みだ」

   

あ、そう。好きなだけ相談しろよ(だんだん呆れてきた)

「早く出てってくれ」

   

いま警察呼んだんだろ?じゃあ来るまで待ってるよ。『警察』って聞いた途端に帰って、逃げたと誤解されても困る。俺は何も疚しいことはないから、警察の皆さんに堂々と事情を説明してから帰る

「大事な会議があるんだ、早く帰ってくれ」

   

さっき警察呼んだんじゃなかったのか?

「とにかく、早く帰ってくれ。不法侵入罪で訴えるぞ」

   
おう、訴えろ!
 
 小林聖宣総務部長
疑惑の舞台となった卓謙ビル(新宿区下落合)
表札部分はこうなっていた
 こういった会話の合間、男は数回席を立って受付の電話で話をしていた。最終的に警察の到着までかなりの時間を要した点から察すると、恐らく最初の数回の『ケイサツ呼ぶぞ』は男の“脅し”で、筆者が『事情を説明してから帰る』と答えたものだから、止む無く本当に110番した、といったところだろうか…。

 いずれにしろ『呼ぶぞ』とか『訴えるぞ』等の脅し文句をやたらに連発する男だった。

 後に名刺を交換して判明したが、この男の正体は小林聖宣(マサノリ)という総務部長だった。6月24日付で総務部長になったばかりらしいから、いい所を見せようと張り切っていたのだろう。

 話を元に戻すが、結果的に渋谷署の組織犯罪対策課長代理・釜田警部率いる約十名ほど(制服・私服合わせて)が駆けつけたので、筆者が事情を説明した。

 たった『一人』の筆者に対して10名とは大袈裟な気もするが、それだけ誰かさんが大袈裟なことでも言ったのだろう。事情を知った刑事さんは「は?それだけなの?」という表情をしていた。

 渋谷署の皆さん、お忙しいところ御足労をおかけしました。まあ、筆者が呼んだ訳ではないんだけど…。

 兎も角、関係者が堅く口を閉ざしている限り、事の真相は分からない。東急建設総務部長の小林クンに至っては、投書に記載の事実を否定しつつも筆者に喧嘩を売って警察まで呼ぶのだから、いったい疑惑を否定したいのか、それとも事を荒立てて大袈裟にしたいのか、それすら謎である。

 まあ、シャンソン化粧品の対応や東急建設の過剰な防衛姿勢から想像するしかない、ということなのだろうか…。更なる調査と情報収集が必要のようだ。

(つづく)

 
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