【ビルメンテナンス業界事件簿】
三鷹市の入札改革を期待してます
ビルメン業界の迷惑男
その無軌道な行動を追う

 
 三鷹市が変わる
「あの頃は仲が良かった」でも当時から腹黒かった瀬山くん(前列左端)

 東京都三鷹市が、委託業務の発注方式を見直す方向で動き始めた。
 しかし、多くの地方自治体が入札契約制度を実施していくなかで、必ずといってぶち当たる壁がある。

 指名業者らによる談合や一括丸投げ等の不正行為、又はダンピングまがいの受注と、其に伴う業務の手抜きなど、その防止にかける手間には大変な労力が必要となる。

 又、発注者側の問題として、贈収賄などの不祥事も後を絶たないこともあり、誰もが認める、特に納税者が納得する『適正な入札契約』の実現が、いかに困難であるかが解かるというものだ。

 十数年もの間、主要な委託業務を全て特定の業者と随意契約を結んできた三鷹市が、これ迄入札改革に取り組んできた他の自治体と肩を並べるほどのレベルに到達できるのかは、かなり疑問ではあるが、新市長の誕生のもと生まれ変わることに期待をしたい。

 さて、三鷹市で我が物顔で振舞っていたハリマビステム(代表=鴻義久)だが、同社が“くいもの”にしている自治体は何も三鷹市だけではない。
 都内の自治体では、町田市は市役所庁舎を筆頭に、図書館や博物館、それと健康福祉会館に老人福祉センター等といった大型物件の数々、果ては小さな集会所に至るまで、市の委託業務を網羅している。
 又、同社の地元である神奈川県でも同様に、相模原市や大和市といった中堅都市にも深く食い込んでいるのだ。

 株式公開を果たしているとはいえ、一企業がいかにして半ば独占的に自治体を囲い込めるのか、同業他者にとってもその“営業力”は、驚異であると共に苦々しくも感じていることだろう。
 ビルメン業者が請け負う大方の業務は、仕事の性質としては地域に密着するものである。従業員の雇用にしても、職場付近の地元住民を中心に採用する業者が殆どである。
 自治体が業者に支払う委託料は、その地域で生活する市民の血税であることは今更言うまでもない。
 市民が納めた税金が、自治体から業務委託先の業者へ、そして働く市民の手にへと還元される、これは不変なものである。

 ならば、自治体は委託先である業者の選定にも、今一歩踏み込んだ考えをせねばならない。
 こう言っては何だが、ビルメン業者の主要業務である清掃や警備、施設の保守管理といったものは、決して特殊な仕事ではない。
 ハリマビステムの様な大手と市内の中小企業を単純に比べれば、会社自体の規模は比較のしようもない。だが、現場に立ち実際に業務に携わるのは、地元採用の市民であることを忘れてはいけない。
 つまり、大手だからといって従業員の質に著しい格差は生じないのである。

 実際の業務遂行が、受注業者の区別関係なく、市民の手によって行なわれているのなら、わざわざ遠くの業者を引っ張り込まずとも良いことになる。
 自治体が本当の意味での地域の発展を望むのなら、地元に生活基盤をおく業者にこそ、目を向けなければならないのではないか。
 これから新たに入札に取り組む三鷹市はともかく、町田市は指名業者の選定を早急に改めるべきである。
又、所謂東京都下に位置する多くの自治体とて、業者選定に限っては、三鷹市や町田市とたいして変わらないのも事実だ。
 いまだに実績ばかりを重視し、東京区内の業者を偏重する傾向があるが、そろそろ地域発展に直結するような、自治体独自の入札契約制度を実施して貰いたいものだ。

 
 酒と女と金

 さて、早い所では15年度の入札がぼちぼち始まり出した。当紙にも既に幾つかの談合情報が寄せられてきている。
 今年もあいも変わらず、業者間の仕事の奪い合いは熾烈を極めるものとなりそうだが、その戦いの中で最も活躍するのが、各業者を代表する腕利きの営業担当者達(談合担当ともいう)である。

 長期化する不景気が反映しているのか、昔ながらの和気相合とした談合も最近では影を薄め、共闘から離れ独自路線へと変る者、中には結託すると見せかけて裏切るといった者まで出てくる始末である。
 正に、義理も人情もありゃしない、ビルメン業界版『仁義なき戦い』の様相である。
 しかし、任侠映画さながらの“斬った張った”を、地で行く男がいたから大変だ。この三文芝居(というか事件?)を自作自演したのが日本ビルシステムの山下孝幸営業部長で、事件の舞台は東京上野にあるスナックである。

 同店は、日頃から山下がひいきにして個人的に通い続けている店だが、その支払いは入札時に於ける協力の見返りとして、他の業者に押し付けている所謂“ツケ回し”で精算しているのだ。
 しかも、数ヶ月分の飲み代を溜め込み、ある程度の金額になってから、相手に入札協力をちらつかせて支払いを回すという、かなり悪質なものである。
 事件があった当日も、財布代わりの同業者5人を同店に呼び付け、1人タダ酒をあおっていたそうだ。

 ところが、山下の余りに横柄な態度と言動に、とうとう5人の怒りが爆発し、皆で山下を吊るし上げてしまったのだ。
 山下にとっては自分の城とも言うべき場所で、恥をかかされた思いだったのだろう「店から出るな」と言い残し、1人表に出ていったそうだ。
 店に残った5人も、一寸言い過ぎたかなとの思いもあってか、戻ってきたら謝ろうと、そのまま店に留まったらしい。

 十数分後、店に戻った山下の手には何やら長い棒の様な物が握られていたが、それが日本刀であることに5人が気付いたときは、既に遅かった。
 逃げようにも狭い店内である。5人の男は店の隅に追い込まれ、今にも斬りつけんばかりの形相で、山下は男達の目の前に立ち塞がったのだ。
 山下がどこまで本気だったのかは解からないが、日本刀を持ち出すこと自体が尋常ではない。結局、店の従業員に宥められてその場は納まったようだが、恐怖の一夜を過ごした5人は、上野に足を運ぶ度に当時を思い出し、背中に悪寒が走るそうだ。
 今では“長ドスの山下”の通称と共に「山下だけは怒らしてはいけない」と、業界の裏常識として広く認知されている。

 さて、山下が“切れやすい”と言うならば、違う意味での“切れ者”も是非紹介したい。
 大和興産の瀬山幸一郎営業部長は、裏金作りの第一人者と言われている。
 只、彼の手掛ける裏金作りは企業内のプール金としてではなく、飽く迄自分自身の為だけの、独り占め的な行為である。
 営業部長の立場から、多くの談合現場に参加をし、その都度手にする談合金は会社に納める事無く、全てをその場で着服するといった手口のようだ。

 大和興産の社長は、この手の業界裏事情には疎いらしく、瀬山の背信行為に全く気づいていないらしい。調子に乗った瀬山は、自らペーパー会社を起こし、そこの伝票を巧妙に使用することによって、更なる裏金ルートを開拓する程で、その増長は止むことがない。瀬山はこうして手にした悪銭を用い、東京多摩市と大和興産が支店を置く熊本市に、夫々愛人を囲って、ひとり悦に浸っているというから羨ましい……いや許せない。

 特に熊本市の愛人宅に通うにあたっては、現地の受注物件(全て地元業者への丸投げ)の視察を名目に、多数の取り巻き業者を引き連れての出張扱いというから、会社も随分と舐められたものだ。
 この社費による熊本観光ツアーの最後の締めが、市内屈指の高級ソープ『ブルーシャドウ』での垢落としというから、会社を食い物にする徹底振りは、最早見上げたものである。

 こういった輩が、指名業者の看板を掲げ、市民の血税を奪い合っているのが、悲しいかなビルメン業界の現実である。
 当紙もとんだ世界に首を突っ込んでしまったものだが、もう後には戻れない。でも、当初相談を持ち掛けてきた山ちゃんは、やっぱり後悔しているのかな?
〔つづく〕

 
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