【ビルメンテナンス業界事件簿】
談合王山口軍次叶M徳社長  神通力に翳り
旧態依然のビルメン業者、淘汰は不可避

 殺虫剤効かないしぶとい談合虫
中山弘子新宿区長、区内の悪さには目を光らせといて下さいよ。
 官公庁・自治体からの受注を主要請負先にしているビルメン業者各社には、必ずといって談合担当者が存在する。

 例えば、日本ビルシステムなら山下孝幸、オーチューなら朝日徹、オーエンスでは白石秀雄といった具合にだ。
 昨今、自治体が談合阻止に本格的に取組み始めてはいるが、彼ら大物(?)談合担当者にはその効き目も薄いようで、今だ請負物件の多くを談合絡みによって手にしている。

 しかし、請負物件の受注単価そのものが低下している現状では、談合一本槍の営業にも限界が見え始めている模様だ。

 更に、形振り構っていられない業者による談合破りの横行と、その報復を科す相手業者の逆襲とで、業界には殺伐とした重い空気が漂っている。
 其もこれも、不法行為である談合に胡座をかき続けた報いであり、長年の悪行が招いた当然の帰結ともいえる。

 現在、業界で幅をきかせている業者の中には、叩き上げの経営者が少なからずいる。其こそ、窓拭き現場から伸し上がって、年商数十億の業績を計上する迄に成り上がった者もいる。
 但し、その成長を支えたのが談合であったことは確かであり、今尚依存している事実がある。
 入札制度の改革が進むなか、談合の呪縛から逃れられないそれら経営者では、今後も疲弊していくのは明らかだ。更に、身内で固めた経営陣、取り分け「子世代への世襲」を「談合重視の企業方針」と共に既成路線に据えていては、制度改革のスピードについていけるはずもなく、先々取り残されていくことは間違いない。 

 最重要物件すら取り逃がす始末

 さて、正にこの様な状況下にあって尚、旧態依然とした路線を突っ走る企業の中で、株式会社信徳(新宿区大久保2-1-8)という、業界では中堅どころの企業がある。

 同社の創業(昭和44年)者であり、現在も辣腕を発揮しているのが、山口軍次社長である。
 弱冠31才で同社を立上げ、現在は信徳ビルメンテナンス・信徳大阪・信徳ポニーといった関連企業を有し、その従業員も300人を超えるまでの成長を遂げた。
 業績に於ても、ここ数年は22億円前後の売上高を計上するなど、これだけ見ても山口軍次は一角の成功者であると言ってよいだろう。

 但し、これ程の企業体を形成していながら、2代目予定の副社長には長男=晃を据え、女房=カツ子次男=克光も役員として名を連ねるといった、前記通りの一族企業を地で行っている。
 苦労を重ねて築き上げた会社を、他人の手に渡したくない気持ちも解からない訳ではないが、このあからさまな継承準備には、社内外問わず疑問視する声があがっている。

 当代である山口軍次については、押しの強さとリーダーシップを備えた人物評価がされ、その経営手腕には多くの業界人が一目を置く程だ。
 だからこそ、山口軍次が仕切る談合だけは、無風状態が続いていたと言える。カリスマ的人物とまで評される山口がトップに君臨していてこそ対業者への影響力が発揮される訳で、65才を超えた今、何時引退してもおかしくない状況の中、2代目の経験不足が問われていては、信徳の今後は予断を許さない厳しいものと思われる。

 その兆候は既に現れ始めてもいる。
 本年2月、同社にとって売上げの1割に相当(約2億円)する最重要物件を、談合不調の末に取り逃がすといった、今までなら考えられない失態を犯してしまったのだ。
 その物件名は「新宿コズミックセンター総合管理業務委託」(発注者=財団法人新宿区生涯学習財団)である。

 日ビ・システム山下君をカット
新宿コズミックセンター

 同社は当該物件を受注する為に、毎年数千万円規模の協力金を用意していたという。競合する指名業者にとっても、山口軍次の既得権を暗黙に了解しており、何より破格の“オリ賃”が魅力であった。

 今年も指名に乗った5社(サンエール・シミズオクト他)に談合を持ちかけ、同社営業部長=柳崎正によって各社に現金が散蒔かれたようだが、全ての業者を懐柔することが出来ず、結果、落札するには至らず次点に泣いた。

 こうなると、信徳に対して、ある意味敬意を払ってきた業者らも、ここぞとばかりに同社の安定受注物件に触手を伸ばし始めるだろう。差し詰め、来年度の入札では西東京市役所防衛庁施設、更に社会保険局あたりの受注物件が的になりそうだ。

 安定収益も公的施設の受注があってこそで、今年取りこぼした物件に加え、このうち何れか1つでも失うことにでもなれば、同社の財務内容は一気に弱体化する恐れがある。

 それでなくとも、同社グループ全体の借入額が8億円にものぼる現状を踏まえれば、来年度の受注結果の内容によっては、メインバンクである三井住友とて協力態勢の見直しを図るだろう。
 最悪“貸し剥がし”の目に遇おうものなら、企業の存続まで危ぶまれる恐れがある。兎にも角にも、同社にとって来年が正念場であることは間違いない。
 さて、同業者の追い落としで調子に乗り過ぎ、その結果墓穴を掘ってしまった日本ビルシステムの山下孝幸だが、先月を以って同社をクビになったらしい。日本ビルシステムと山下個人(他2名)を被告とする、ビルメン同業者に対する営業妨害に端を発した損害賠償請求訴訟が、来年中にも結審の運びとなる模様だ。

 勿論、被告側の全面敗訴は決定的らしいので、事と次第によっては両者のトラブルに巻き込まれた形の自治体も、入札妨害等で山下を訴える可能性も十分考えられる。
 そうなれば、日本ビルシステムもただでは済まなくなる。要するに、同社の本音としては早期の和解を望むものであって、山下の解雇はその為の手土産の意味かも知れない。
 取り敢えず、来年度入札時期を見据えて、業者も慌ただしく動き始めた。本紙も又忙しくなりそうだ。
(つづく)

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