【ビルメンテナンス業界事件簿】
日本ビルシステム的場社長逮捕!
オーチューオーエンスの新たな談合相手とは?
葛飾区スポーツ振興公社の制限付競争入札に異議

 嘗ての仲間より自分の銭が大事
「♪買ってうれしい花いちもんめ…、協栄くんが欲しい!」
(唄:オーチュー・片野忠彦社長)
ビルメン業界に於ける本年度の入札業務もいよいよ佳境に差し掛かり、業者間での業務の奪い合いも熾烈さを増してきている。

 加えて『国立病院東京医療センター汚職事件』で、業界大手の「日本ビルシステム」(港区芝大門2−3−6)の的場成善社長が逮捕されるといった予想外の展開まであった(その後、目黒区での贈賄容疑で再逮捕)。

 そこで、大量の優良物件が放出されたのを受けて、それまで友好関係(談合仲間)であった業者さえも、我先にと同社の業務に飛び付くなど、入札業務を柱に据える業者にとっては今年はこれ迄になく激しい現場になっている模様だ。

 本来ならば、的場の代わりに現場責任者の山下孝幸が、会社の危機に身体を張って対応しなければならないのだが、既に同社を退職(クビ)している身では何の役にも立たない。

 それどころか、自身が担当していた当該物件にも拘わらず、金銭受渡しに関与していなかった事を良いことに「クビの腹いせに的場を売った」等と、きな臭い噂が業者の間で囁かれる始末である。

 また、的場の供述、或いは既に2件の起訴を受けている同病院の元会計課長の供述次第では「次に逮捕されるのは山下だ」といった憶測も流れている。

 何れにせよ、精鋭と誉れ高い警視庁二課の捜査員の手にかかれば、同贈収賄事件の全容も早々に明らかとなることだろう。もしかすると読者諸兄が本紙を手にする頃には、既に「山下逮捕!」の朗報?を耳にしているかもしれない。

 的場や山下と共に、散々“おいしい思い”を共有してきた輩(オーチュー朝日徹オーエンス白石秀雄ら)でさえも、今ではソッポを向くどころか目の色を変えて、宙に浮いた日本ビルシステムの既存物件に群がっている。嘗ての悪友の凋落によって齎(もたら)された仕事に嬉々として飛びつく様は、正に冷酷無比な鬼の所業と言わざるを得まい。

 嘘八百を捲し立て多くの同業者を蹴落としてきた山下故に現在の凋落ぶりは自業自得と言えるが、以前の仲間を平気で切り捨てるこの業界独特の非情さには、今更ながら本当に呆れ返ってしまう。

 次なる悪友は協栄ビルメン
毎年ビルメン業者どもの談合の舞台となる、「葛飾区総合スポーツセンター」(体育館)
 さて日本ビルシステムを中心に形成されてきた談合グループは、今回の的場逮捕に伴い消滅したものと考えてよい。グループの中心的役割を担い、山下の脇を固めていた「オーチュー」(渋谷区代々木2−18−3)と「オーエンス」(中央区築地3−1−10)の両社は、早くも“次に徒党を組む相手”を物色したという。

 その名誉ある談合相手に指名されたのが「協栄ビルメンテナンス」(中央区日本橋蛎殻町2−13−9)である。同社代表の山田豊三東京ビルメンテナンス協会の現職理事であり、過去には同協会の要職にも就いていたこともある、謂わば業界の重鎮である。

 一方、オーチュー社長の片野忠彦とて、同協会の理事様である。多くの協会員の模範となり業界をリードする立場にある者らが、未だに談合を肯定し不当利益を得ているのが現状とすれば、業界浄化が遅々として進まないのも無理もない話である。 

 では、こいつ等が仕掛けた談合がどれ程悪質なものなのかを、実際の入札を例にとり検証してみたい。

 談合の的になったのは葛飾区公益法人の1つ、葛飾区スポーツ振興公社(理事長=青木勇葛飾区長)が発注した大型の総合管理業務委託である。同物件は、ここ数年の入札で常に談合が囁かれ注目を集めていた、謂わば曰く付き問題物件である。

 それというのも、入札方式に一般競争入札を導入してはいるものの、目茶苦茶な参加資格制限を設けたことによって、応札業者が極端に少ないのである。

 一般的に、応札数が増えれば競争が激しくなるのは道理である。同物件の様に委託料が4億円弱の大型物件であれば、それに見合った応札数(15〜20社)なら、数千万或いはそれ以上の下落があっても何ら不思議ではない。

 ところが、同物件の応札数は昨年が7社、今年にあっては僅か5社によって入札が成立しているのだ。しかも、先の3社に加え今年度応札した残りの2社も前年からのメンバーであり、これではまるで指名競争入札と変わりなく、おまけに談合実行には欠かせない業者特定も容易になる等、業者にとって“願ったり叶ったり”の現場を与えられているのだ。

 その結果、同物件の連続受注に成功した協栄ビルメンテナンスは、ここ2年間を合わせても、約5パーセントの下落率に納まる『高止まり』の状態を維持し、正に“高笑い”をきめ込んでいる。

 無論、本音では欲しかったであろうこれ程の優良物件を目の前にしても、互いの協力関係を強固にするために“降りた”4社にはそれ相応の見返りが有ったはずで、こちらも満足しているに違いない。

 李下(りか)に冠(かんむり)を正(ただ)さず
 瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず

協栄ビルメンテナンス(株)の山田豊三社長。今にも写真から“高笑い”が聞こえてきそうだ
 では、談合は絶対に不可能とされる一般競争入札で『競争』した形跡すら見当たらないというこの結果について、葛飾区及び財団はどの様に考えているのだろうか。

 先ず区の見解だが「運営は財団に任せてます」と、余程信頼を寄せているのか全くの放任状態である。

 一方の財団担当者は「能力不足の業者を事前に排除することが目的」と、設けた制限に大義があるかの如く主張はするが、多くの業者の参加によって競争を促すと共に談合行為を防ぐなどの“一般競争入札が持つ本来の目的”は、どうでもいいとでも考えているのだろうか。

 殆どの発注者側が慢性的な財政難に陥っている今、財団を抱える葛飾区とて無駄な支出を黙認できるほど裕福な筈はない。

 結局、市場開放を前提としたWTO物件を随意契約や指名競争で処理したのでは、自治体として示しがつかない。だが「金はかかっても気心の知れた業者(協栄ビルメンテナンス)に仕事はして欲しい」と、悩んだ末に打った手が、競争相手を極力減らす為の『制限付一般競争入札』の実施だったとみられる。 

 結果、建前だけの一般競争入札を隠蓑に、両者の思いは見事に叶えられた訳だが、ここで新たな疑惑も勘繰らずにはいられない。

 業者が仕事を欲しがるのは当然であり、ましてやこれ程の優良物件であれば手放したくない気持ちも十分理解できる。だが、一般競争入札の理念を打ち壊してでも、新規業者の参入を阻止することが、財団にとって何の意味があるのだろうか。

 もし意味があるとするなら、談合をしやすい環境を整えてあげる便宜を図ることで何らかの見返りを得ている、ということぐらいしか想像できないが…現状から考えると、そのような癒着の事実があっても決しておかしくは無いだろう。

 奇しくも入札が集中するこの時期に狙いを定めたかのように、贈収賄を巡っての官・業双方の摘発が相次いでいる。 しかし、これ等が氷山の一角であることは誰もが知っていることである。業界は談合に依存し、官もそれを承知しつつ、中には不正に手を染める者さえいるのが現実である。

 疑惑が噴出した際は、業者なら必ずと言っていいほど否定するが、説明責任を有する官は否定するだけでは済まされない。疑惑を持たれるような怪しげな行動をとること自体が、既に問題なのである。

 葛飾区長にして財団の理事長をも兼務する青木勇には疑惑を払拭する責任があり、少なくとも現行の入札制度は早急に見直しを図らねばなるまい。

 他の都区長と比べれば、こと不正に対しては、業者であれ身内職員であれ厳しい態度で臨むことで有名な青木区長である。今こそ、その手腕を発揮し「葛飾区では悪さは出来ない」と、内外に知らしめて頂きたいものだ。(つづく)

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