戦略なきハッタリ |
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会社設立から僅か10年余りで、大阪証券取引所(ヘラクレス市場)に上場を果たし、其れに伴い同社の業績は右方上がりの成長を続けてきた。 技術商社のユアサ商事を退職後、若くして同社を立ち上げた永田仁は、現在は国内外に10社を超える関連会社(連結子会社含む)を保有し、企業集団のトップとして君臨している。 しかし、そんな財界の冷ややかな目も、東京証券取引所の電算子会社、東証コンピュータシステム(TCS)の株式を所得し、連結対象子会社に組み入れた時点で一変する。 そもそも、約32億円もの資金を投じたTCSの買収に無理があったとの指摘がある。拡大路線をひたすら突っ走ってきた同社であるが、情報産業界の急速な冷え込みも重なり、財務状況は一気に悪化していった。 更に、既存の取引銀行からの借入れが困難だったのか、或いは危機的状況をひた隠しにしたかったのか、永田仁は保有する自社株を担保に、街金から数億円の融資を受けたとの怪情報まで飛び出る始末である。 |
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TCS奪還に東証は躍起? | ||
同社の『第13期有価証券報告書』を見ても、グループの業績を表わす連結業績では3割を越す売上げ増を達成したにも関わらず、営業利益は45%減に落ち込み、同期の純損失は30億円にまで膨らんだ。いみじくも、TCS買収資金が丸々損失として残ったことになるのだが、当初から、この状態ではTCSの上場を待たずして株式の放出も早晩にもあるとの見方も囁かれている。 確固たる経営展望も持たずに、グループの拡張だけを目指してきた永田仁は、ハッタリだけで投資家を煽り一人利益を吸い上げた、あの孫正義にそっくりである。 さて、現在の東証の立場を例えるのなら、箱入り娘を万全を期して嫁入りさせたはずが、嫁ぎ先で傷ものとなり、帰ることも儘ならないといった状況のようだが、親としては可愛い娘を何としてでも取り戻したいとの考えらしい。 しかし、兵糧攻めにあう永田仁とて易々と諦めはしないだろうから、独自の資金調達を行なっても不思議ではない。街金頼みの資金繰りも俄然真実味が帯びてきたが、貸主とて銭の匂いを嗅ぎつける能力に限っては、成り上がりの永田仁に負けてはいない。下落する一方のプライム株の代わりに、上場確実のTCS株を担保に要求してくるに違いない。 日本経済の動向を示す重大な役目を担う東証が、若造に好き放題に振り回された挙げ句、今尚騒動の渦中にあっては、景気回復などは夢のまた夢である。 (つづく) |
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