顧客情報を紙切れ同然

流出招いて被害者ヅラ?三洋信販 小野晃熙社長

 金融業界では過去最大最悪の『三洋信販130万人顧客情報流出事件』から約1年半、事件未解決のまま三洋信販が驚愕の判断を下した。

 「現在も巷に溢れる自社顧客情報の取り扱いについては、福岡財務支局からの回収指導には従わず、今後は敬天新聞社その他第三者からの情報提供及び照会は一切拒否します」と断言。

 何故、わざわざ本紙を名指ししたかというと、今の時点で三洋信販が実数で認めている流出件数3万8,000人分の情報の殆どが、本紙が提供したものであるからだ。

 本紙では情報流出直後から様々な方面から当該情報の提供を受けていたが、その全てを“本来の持ち主”である三洋信販に余すことなく返却してきた。

 その理由として事件解決に協力する為もあったが、何より個人情報をぞんざいに扱うような不道徳な精神や、それを悪用する腐った根性は持ち合わせていないからだ。

 実際、悪党の手に渡った当該情報は架空請求の道具となり、多額の犯罪収益をあげる“打ち出の小槌”になっており、それは今尚続いている。

 だからこそ、犯罪被害者の発生拡大を防ぐ見地からも、縁も所縁もない、ましてや義理すら不存在の三洋信販に対し、手元に流れ着いた情報を留めおかずに提供してきたのである。 

 しかも「面倒ですから郵送してください」と、自社顧客情報をそのへんの紙切れ位の認識しか持たない三洋信販の不誠実な態度に呆れつつも、手渡しという確実な手段をもってこれを実行してきた。

 時には、積極的に回収作業を行なわない三洋信販に業を煮やし、同社に営業許可を与えている福岡財務支局に出向き、手元にある流出情報を直接持ち込んだこともあった。

 この時ばかりは、福岡本社から担当役員が血相を変え飛んできて「流出情報回収の協力者(本紙を指してのこと)には誠実に対応します」と、殊更に反省の態度を示していた。

 しかし、これがお役人様に対するポーズでしかなかったことは、先の「情報提供拒否」の姿勢からも明らかであり、本来ならば優先すべき回収作業が、同社の業務には端から存在すらしなかったのかと、疑いたくもなる。

 
  責任論を煙に巻く被害届け

 事件後、明確な企業責任を果たさぬまま「今更回収してもしょうがない」と開き直ったことで、事件解決は遠退いたと言える。

 この決定により、氏名・年齢・住所・未既婚・自宅電話番号・携帯電話番号・勤務先・更に貸付残高を含む顧客情報が野放しになることで、顧客は様々な犯罪者の標的となる可能性が更に増す事となった。

 三洋信販は「事件は過去の事。十分な警告を発した今、顧客が架空請求等の二次被害に巻き込まれようとそれは自己責任だ」と、今後は無関係を貫く方針のようだ。結局、事件はうやむやのうちに終結しそうな模様だが、これこそ三洋信販が最も望んでいた結末だったのかもしれない。

 情報流出が発覚した直後には、情報管理の不備を棚上げにし、情報を盗み出されたと大騒ぎし、地元福岡県警に被害届けを出すことにより、自らも被害者であることを世間に強調した。

 その挙げ句、被疑者不詳のまま告訴にまで踏み切るなど、事件への対応は概ね自己保身に注がれていた。

 ただ、この告訴そのものは、福岡県警に「社内調査が不十分」と一蹴され、受理されることなく最終的には断念するに至った。

 無論、社内から逮捕者を出したくないのが本音だったに違いなく、この告訴断念も筋書き通りの結果だった筈だ。

 斯様なまで、恥知らずな責任逃れに終始した対応であったが、事件は同社の思惑通り風化しつつある。

 しかし、最大130万人もの被害者を生み出した大事件を起こしながら、三洋信販はどの様な責任をとり、企業として何を失ったのだろうか。結論からいえば、同社は何一つ責任をとっていないし、失ったのも僅かな現金だけである。

 事件が未解決(事実上御蔵入り)であることをいいことに、当時からの会長社長を含む経営トップ陣は、現在も平気の平左で居座っている。

 事件への対応費用も、新聞各紙に『お詫び』を数回掲載した位で、高々数千万円程度であろう。

 同時期に同じく顧客情報を流出させたソフトバンクBBが、ユーザーに支払った『お詫び料』の総額40億円に比べても雲泥の差である。

 秘匿性の高い借金情報を盾にし、個別補償から免れた三洋信販は、流出事件以前の企業価値を損なうことなく、今もせっせと金貸し稼業に励んでいる。

 世間が事件そのものを忘れ張本人が流出の“前科”をもみ消そうとしても、三洋信販が心からの反省と確たる企業責任を果たさぬ限り、本紙の追及は止むことはない。
(つづく)

 
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