続々と手を引くローン会社

 当紙先月号に引き続き、東京都生活文化局が行なったアポ業者実態調査の結果をもとに、その問題点を探ってみよう。
今回は、悪徳アポ業者にとって『経営の要』である信販会社について。
下記の文書(都の調査結果)を一読すると、東京都の指摘が正鵠を射たものであることが分かる。やはり信販会社にも、これら問題の多いアポ業者に対して何らかの措置を講じる義務、若しくは責任があろう。
尤もこの事は信販会社も痛感しているようだ。

「昨年末に御社(敬天)から頂きました抗議文を契機に調査・会議等を進めて参りました結果、本年3月31日を持ちまして(株)ブイ・アイ・ピーとの加盟店契約(ローン提携)を解除することとなりました。
また、サンミッシェル南青山に関しましては引き続き契約を結んではおりますが、現段階では、その取引件数も限りなくゼロに近い状況です。
消費者被害の拡大を未然に防ぐ為にも、今後のことも含めまして一層調査・検討を進めて参ります」(ジーシー株式会社担当者談)

こう語っているのは何も一社だけではない。
お次も大手信販会社だ。
「御社(敬天)のご指摘があってから直ぐに担当部署の人間を呼びまして、徹底した調査を行なうよう指示いたしました。
 本来ならば、このような問題はご指摘を受ける以前に信販会社として把握しておくべき性質の物でして…今後は、お客様がトラブルに巻き込まれることの無いように、一層の注意を払って参りたいと存じます。
従いまして結論を申し上げますと、サンミッシェル南青山との取引は、既に皆無に等しくなってきております。
但し、元々お客様が弊社クレジットカード(オリコカード等)をお持ちで、サンミッシェル南青山でご利用になられた場合には、もちろん正規の手続きや審査を踏まえて契約する場合もございます。
これは個人的な『予測』ですが、サンミッシェルさんとの取引に関しましては今後、やはり大きな問題となる事も懸念されますし、弊社との提携がゼロに近づく事はあっても増える事はまず無いであろうと思われます」(株式会社オリエントコーポレーション担当者談)
―と言った具合である。

 もちろん、中にはこういった問題に無頓着な信販会社もあるにはある。
 「業者さんが刑事告訴を受ける等の大きな社会問題へと発展した場合には、当社もそれなりの対応を致しますが、VIP及びサンミッシェルに関するそういった情報はありませんので、現時点では提携を破棄するようなことは考えておりません」(アコム株式会社担当者談)
 『アコム』に対する個人的な恨み辛みなど当紙には毫も無いが、何故アコムだけが…?というのが率直な感想である。

信販会社(特に大手)にしてみれば、このようなアポ業者との取引による売上げは全体から見るとほんの数%に過ぎない。その数パーセントの売上げのためにトラブルを抱えたり、自社のイメージが下がったのでは割に合わない。
従って常識的には、VIPのような問題の多い企業とは手を切る筈である。それでも敢えて取引を継続するのは何故か…?

アポ業界に詳しい情報通氏(当紙先月号にも登場した人物)によると「そんなのはアポ業者の接待漬けによる『癒着』に決まってますよ。
アポ業者の中では信販会社の担当がちゃんと決まっていて、呉々も信販会社側の機嫌を損ねることの無いように、必死で接待してます。何せ信販会社とのローン提携が無かったら、彼らアポ業界は成り立って行かないんですから…。
ローン提携を継続させる見返りとして、アポ業者から多額のお小遣いを貰っている信販会社の社員も結構居ます。まさに“持ちつ持たれつ”なんでしょう…」
氏は、飽くまでも一般論として信販会社とアポ業者との癒着の実態を語ったに過ぎないが、前述のアコム担当者のコメントを踏まえると「もしかするとアコムもアポ業者と癒着しているのでは?」と疑いたくなるのが人情ってモンだ。

 
 
 乗り遅れた(?)アコム

 話は少々逸れるが、同じアポ業者で『(株)オー・ツー・アイ企画』(新宿住友ビル20階)という会社があった。VIPと似たような複合会員権やダイヤモンドを商品としていた(他に絵画等も販売)会社だが、昨年(平成12年)の九月下旬に約5億8,600万円の負債を抱えて東京地裁で破産宣告を受けた業者である。
(余談だが、このオーツーアイ企画の倒産で顧客の受け皿《経営譲渡》となったのが、奇遇なことにVIPなのである)
その後、平成12年12月下旬の毎日新聞紙上では『詐欺的勧誘で6,000人が契約!被害総額は50億円』というような見出しが躍り「〜被害者側は弁護団を結成し、業者と提携を結んでローンを組んだ信販会社に『契約は詐欺行為だった』として契約取り消しを求める通知を出した〜」といった記事が掲載された。
このオーツーアイ企画とローン提携を結んでいた信販会社の中には、やはりと言うべきか『アコム』が名を連ねていた。
繰り返すが、アコムには個人的な恨み辛みなど一切無いが、こういった経験がありながらもVIPの問題に関して静観を決め込むアコムの裏側に「何かあるのでは?」といった訝るような視線が注がれる事は至極当然のことであろう。
何も無ければ良いが…。

また、これとは違った見方もある。
なんでも、アコムは他の信販会社に遅れてオーツーアイ企画と提携を結んだ、言わば最後の方になってから参入してきた信販会社であったらしく、他社が「これは手を切った方が良さそうだ」と悟った頃には『時既に遅し』で、オーツーアイ企画の被害者(現在ではVIPが受け皿となっているが、結局はVIPが倒産すればその被害者も含め)の債務を保証する立場に立たされてしまったのだという。これらの補償額が莫大な金額になる事は明白だ。
であるからこそVIPから手を引く訳にも行かず、またVIPに倒産されては困る、というのが正直な所だとか…。
何れにしても、VIPが優良・健全な企業ではないこと、そして近い将来に破綻を来たすであろう事は疑いの余地無し、と言ったところか…。 〔以下次号〕

 
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