高島嘉衛門

 「高島嘉衛門」は明治期の日本設立に貢献した実業家だ。特に横浜港開港や新橋―横浜間の鉄道建設等、当時の交通網発展に多大な貢献を齎した。政界、特に初代総理大臣・伊藤博文と縁を持ち、民間人で初めて明治天皇に銀杯を賜った偉人だ。横浜には今も「高島町」など、嘉衛門にゆかり深い地名が数多く残っている。

 
  「高島易断」は書籍名

 嘉衛門は、当時「易聖」と呼ばれた易の大家でもあった。混沌とした時代に卓越した相場予想と先見の明で莫大な富を成し、易聖の才能を証明した。嘉衛門が中国へ向かう伊藤博文に死期の卦を立て中止を勧告したが、伊藤は訪中し、韓国人に射殺されたというのも有名な話だ。その者の氏名「安重根」を嘉衛門が「艮が重なる」と言う卦を立て予言していたという。

 国家の命運をも左右する易聖・嘉衛門であったが、占いを商売とする事は戒めた。皇典講究所で講演した『神道実用論』の中にそれを表す一文がある。

 「其名すでに『うらなひ(不売)』と云ふが故、決して金銀等の礼謝を受けず実に神易を以て神明に通信するを本分の職務とする時初めて神官の名称にも適い人の信用浅からざるべし」

 『高島易断』とは、この嘉衛門が「高島呑象」の名で記した『日本易学の教科書』とも呼ばれる“書籍の名称”なのだ。当時ベストセラーとなり、英訳され海外にも広く流通した。

 
 便乗商法

易聖・高島嘉衛門も自分の書が悪用されるとは占えなかった

 昭和31年、息子の高島長政氏は『易学研究』という月刊誌の取材で、「父没後、次第に社会に高島を名乗る占業者が現われ今日では『高島易断宗家』とか『高島本家』等と、恰も当家そのものかの如き印象を世人に与える人々が居るのです。しかしこれらの人々は悉く当家とは関係ありませぬ。当家縁者の者でもなく又、亡父の門下生でありし者でもありませぬ。『高島易断』を謳って当家又は当家縁者の者であるかの如く又、亡父門下生であるかの如く社会一般に於いて信じられて居る事は、迷惑至極で御座います」と述べている。

 この様に、団体としての高島易断は始まりからして「易聖=高島嘉衛門」の系譜を暗に匂わせる“便乗商法”だった訳だ。

 平成12年にはある民事裁判で、高裁が次の様な判断を下している。

 「高島易断という表示は一般に易占業を指す名称であり不正競争法上保護するに値しない」
 「当時、既に多数の易占業者が高島の雅号を用い営業に高島易断を含む表示を使用し、高島易断は易占業その物ないし易占業者の組織団体を指す一般名称となっていた」
 「そうすると高島易断ないし高島の名称使用を独占すべき正当な利益はない」としているのだ。

 
 悪評の山

 此処まで細かく「高島易断」を解説して来たのには訳がある。実は本紙のもとに高島易断の看板で商売している輩どもの悪評が数多く寄せられているのだ。その「高島易断商法」の一般的ケースを紹介しよう。

 「格安占い3,000円」等の広告を餌に集客するのが多くのパターンだ。高島云々の知名度に「3,000円というから3,000円以上取られないだろう」という気持ちで行くと、あに図らんや特別鑑定料3万円前後を堂々と要求。

 更に「家相が悪い」だの「先祖の霊が成仏していない」だの、はたまた「毎日2回の祈祷を2年間行う必要がある」等と鑑定依頼者(消費者)の不安を煽り、100万円前後の「祈祷」の契約を畳み掛けてくる。金額の大小はあれ、大方こんな感じである(もちろん、全ての高島易断がこのような悪質商法だという訳ではないが…)。

 そもそも手相を観て未来を占い、人生のアドバイス料として社会通念上妥当な金額(それこそ3,000円とか5,000円とか)を請求するのが「占い」ではないのか。ところが奴等は、神官でも僧侶でも神父でもないくせに“祈祷”を行うのだ。いったい何の“神”に対して祈っているのかは知らないが…。しかも100万、200万円という祈祷料で。これのどこが“易占”なのか。

 他にも「高島易断」同士の裏社会をも巻き込んだ金銭トラブル、脱税に結びつきそうな易断関係者の偽装離婚の告発等、高島易断を巡る悪評リークには枚挙に遑がない。

 
 高島がたりは合法です!
 6月20日には、福井県で高島易断を名乗る中年男が詐欺で捕まった。詐欺の仕方が強引でフォローも杜撰だったから捕まったのだろう。

 だが新聞によっては「高島易断を騙り詐欺」となっている記事もあった。これでは誤解を招く。恰も「高島易断」が登録商標で、その名称を無断で使用した事が犯罪の様に映るではないか。

 繰り返すが、高裁の判断について前述した通り、高島易断という名は一般に易占業を指す名称だ。言うなれば、「居酒屋・和民」や「居酒屋・白木屋」の『居酒屋』の部分と同じなのである。少なくとも我が国の司法はそう解釈しているということだ。

 我々日本人のブランド信仰は、こんな業界にまで影響を齎しているのである。正しく愚の骨頂といえる。

〔以下次号〕

 
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