町議会で4度も否決
結果的に談合に荷担したことになるんですよ!阿久津町長!

 伝統的悪しき慣習、必要悪などと言われている建設業界における談合。
 今では当局の監視も一層厳しくなり、この犯罪行為は『前世紀の遺物』と化したかに思えていた。
 しかし「経済発展の一翼を担ってきた〃古式伝統〃こそが談合である」と、これを率先して仕切るゼネコンが、未だ後を絶たない。
 経済発展の大義名分はもはや名目ばかりで、一部の有力企業の為だけに機能しているのが、21世紀型談合の実態である。
 取り締まりが厳しい都市部では何かとやりにくいのか、地方の地元有力者と手を組み田舎行政を翻弄し、公共工事を食い荒らすことが、今般談合に依存するゼネコンが多用している手段のようだ。

 今回、当紙が入札以前に察知した談合情報は、正にこれである。
 舞台となったのは茨城県常北町という1万人余りの住民をかかえる、年間税収10億円といった典型的な田舎町(失礼)だ。
 そして舞台裏で暗躍したのが大手ゼネコン鹿島建設(東京都港区)と、地元有力企業の株木建設(水戸市吉沢町)の共同企業体である。
 常北町が計画した『健康増進施設』は、土地の買収に建設費そして周辺道路の整備等で、約30億の予算を計上する町史始まって以来の大規模事業である。
 其ゆえに、同施設の計画案はこれまで4回常北町議会で否決されてきたが、賛成派の執拗な動議が続くなか、今年の3月定例議会にて漸く修正案が可決(寝返った町議は誰?)するといった経緯を辿っている。
 議会の可決を取り付けた町は、4月25日一般競争入札を告示して、後は入札、そして議会承認へと、粛々と業務をこなす筈だったに違いない。

 そこにきて当紙が入札日の1週間前に「今回の入札は鹿島・株木JVが落札する事で談合が仕上がっている」と、発注元である常北町に警告を発したものだから、日々の業務に惚けていた町職員は慌てふためき、それでも情報提供に感謝しつつ、業者への調査を約束したのである。
 無論、その水面下では鹿島・株木JVが他の指名業者(20のJV=40社)に対し、落札予定者(手前勝手に名乗るな!)として談合を仕切り、談合協力金の配当や下請け発注等の密約に奔走していたことは言うまでもない。

 
 町役場は責任感ゼロ

平成13年5月21日
常北町一般競争入札結果
《町健康増進施設整備工事》

(単位:千円)

JV名
金額
JV名
金額
大本・大須賀
2,386,000
三井・古久根
2,300,000
佐藤・坂田
2,385,000
清水・岡部
2,298,000
日本国土・三菱
2,366,000
東急・仙波
2,298,000
大林・鈴縫
2,360,000
五洋・アイサワ
2,290,000
東亜・菅原
2,350,000
間・浅野
2,282,000
東洋・小松
2,350,000
奥村・武藤
2,270,000
福田・河野
2,333,000
大成・田口
2,268,000
フジタ・染谷
2,320,000
前田・秋山
2,250,000
戸田・昭和
2,313,000
鴻池・要
2,248,000
日産・東鉄
2,300,000
鹿島・株木
2,080,000
熊谷・佐田
2,300,000
   

 しかし町の対応は最悪の結果を招くことになる。
 町は入札に参加する全企業を呼び出して事情を聴取し「談合はしていない」との確認を取り、企業側の本社社長名の誓約書を提出させる事で一件落着とばかりに、予定通りの5月21日に入札を強行したのである。
その結果、当紙の事前情報通りに鹿島・株木JVが20億8,000万円で落札してしまい、この悪党共を阻止するに至らなかったのだ。「談合したの?」と問われて、素直に認める業者などいるはずもなく、誓約書などは何ら意味を為さないものである。
 それを「調査の結果談合はなかった。入札は手順を踏んだ正当なものだった」などと、まるで当紙の情報が偶然にも落札業者と一致したとの姿勢である。

 この自作自演の田舎芝居を演じた常北町の三文役者海野管財課長は入札後、当紙による結果開示の要請に対し「今後予定される臨時議会の承認後でなければ、常北町住民であろうとも情報開示には応じられない」と、尤もらしい理由を付けて情報提供者である当紙への協力を拒んだのである。
 だがその翌日には、当紙が開示を要請した内容そのものが、業界新聞朝刊に掲載されており、どういうことかと問いただせば「その新聞社には入札の告示で世話になったので教えた」などと、自ら情報漏洩を暴露する始末なのだ。
 “民”に奉仕する事こそが公僕としての使命であるにもかかわらず、特定の民間企業に媚を売る態度が悪党らに付け込ませる隙を作っている事を、全く自覚していないのである。
 多額の公金を扱う職務に就きながら、自身が公僕の立場である事さえ忘れているような、責任感の無さには呆れ返るばかりだ。
 一町民そして納税者の立場になって考え、課せられた使命の重さを再確認してもらいたいものだ。

 それに増して、町議員もまた揃いも揃って腰抜けどもだから始末におえない。
 5月28日の本件落札業者の承認を取る臨時議会に合わせ、当紙は阿久津勝紀町長以下全町議に対し、抗議文及び民意を反映した審議を行なうよう要請する書簡を送付したのだが…。
 議会開会前、当紙の意を汲んだ一部議員からは「入札以前に入った情報通りのJVが落札した以上、議決を急がず慎重に審議すべきだ」と、当紙情報の信憑性が高いことをあげ全員協議会での審議を求めたが、要求は認められず川又克己議長の判断で臨時議会が開会された。
 その結果「談合の疑いがある鹿島・株木JVは承認出来ない」とする8名の議員が議会を欠席するといった混乱の中「問題なし」とする9名の議員(貴様らが問題ダヨ)によって採決が強行され、これを承認可決してしまった。
 賛否が割れた議案なら、今一度協議をした後に、採決しても良さそうなものだが、可決を急いだ九名の議員は、このJVで1日も早く工事を着工させたい理由があったのかも知れない。(下請け工事のおこぼれを貰う約束でもしたの?)

 

 公取委も興味津々

 思えば8年前、茨城県の歴史的汚点となった、全国初となる現職知事の逮捕劇も、公共事業を舞台としたゼネコンが絡んでの贈収賄事件であった。
 竹内知事(当時)とゼネコンの逮捕を切っ掛けに、『談合は犯罪である』との認識がその後全国に広がったにも関わらず、当の茨城県は現在に至っても何一つ変わってないと言わざるを得ない。むしろ、常北町々政の談合容認ともとれる今回の事例をみても、公共事業を巡っての環境は、深刻なまでに悪化しているのではないか。
 承認を受けたJVの片割れ=地元業者の株木建設にしても、元請けでもない立場で公共事業(牛久沼改良工事)に裏ジョイントを組んで携わったとして指名停止処分を受けた過去があるが、今なお、懲りた様子はない。

 今回、談合行為が露呈した経緯には、過去の教訓を活かすことなく自己主導による談合を繰り返すこれら企業に対し、同業他社からの不満が一気に噴き出したからに他ならない。
 当紙は常北町への抗議活動と同時に、公正取引委員会へも情報を提供していたが、ここにきて審査局が非常に関心を寄せてきた。
 現状に危機感を抱き、談合を排除する決意が有る企業は、見て見ぬ振りはいい加減止めて、勇気を持って告発に踏み切ってもらいたいものだ。
 審査局の担当官も「匿名の情報でも、こちらが関係者と推測するに至れば捜査は充分可能です」と内部からの情報提供に期待を寄せている。
 鹿島も株木も、そして阿久津町長も「承認されたからには、談合は無かったんだ。問題は何もない」と、まるで口裏を合わせたかのごとく居直ってますけど、後々恥を晒すことになりますよ。まぁ恥だけで済むとは思えないけどネ。

 
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