代議士時代の気概は何処?
県民の期待は大きいゾ。頑張れ!上田知事
 当紙が本社を構える「彩の国」=埼玉県が変わろうとしている。前知事の辞職を受け新たな首長となった上田清司氏が、県民の行政に対する不信感の払拭に、見た目に素早い対応を示している。

 先の知事選挙ではマニフェストをいち早く掲げ、選挙公約の実現化を目標ではなく実行するとして、県民の支持を受けたのだ。知事就任後には、公約の「知事交際費の公開」と「知事の給与・賞与・退職金の2割カット」を早速打ち出し、その実行力を県民にアピールした。

 ただ、これ等に関しては然して目新しいものではなく、改革のスタートとしては多少の物足りなさを感じる。何らの不祥事を起した訳でも無いのに、就任早々自身の給与を2割カットするなら、現状の県政不信を招いた責任として、県庁全職員の給与も一律にカットしてこそ改革と言えるのではないか。
 逆に、給与や交際費がいくら高額でも、其こそ身を粉にして改革を推進し成果を出していくなら、それは当然の報酬として堂々と受け取ればいいのである。
 1兆7,000億円を超える、県の歳出総額からしてみれば、知事個人の給与などは正しく大河の一滴に等しいのだ。県民に媚び諂うような姑息な手段などは、民主党きっての「イケイケ代議士」だった上田清司氏には似つかわしくなく、その揺るぎない政治姿勢に県民は改革を託したことを、今後も肝に命じて貰いたいものである。

 しかし、野党の一代議士から700万人を抱える県知事に鞍替えしたのだから、当初から全てが思惑通りにいく筈はない。特に知事選では敵役であった、県議会を牛耳る自民党勢力との関り合いが、今後公約通りの改革を推し進めるに重要な課題であるといえる。

 例えば、既に計画に乗った大型公共事業の再検討を視野に入れている知事にとっては、建築土木関係者の票田を持つ議員等から、相当の抵抗を受けることであろう。しかし、議会が改革の抵抗勢力と成りうる可能性があったとしても、その議員らも民意を託された代表者であることに変わりはない。
 その者達の意見を無視すれば、ガラス張りの部屋に鎮座する小太り知事が率いる長野県のように、全国に恥を晒すことにも成りかねない。
 一方で、ワンマン振りだけが目に付く当県お隣の石原都知事だが、こちらは2期目という事もあって、議会をある程度統率し、都政運営はスムーズにいっている模様だ。何より、口は過ぎるがその政治信条に心酔し、後押しする議員が多数いることからも、益々強気な姿勢が見て取れる。

 この両者、犬猿の仲であることは有名であるが、自身を全面に押出す、元来の目立ちたがりといった共通点もある。自己中心的で我侭な性格は甲乙付けがたいものがあるが、首長たる資質と政治手腕を比べれば、圧倒的大差で石原都知事に軍配があがる。
「作家活動の傍ら市民運動をそこそこかじって知事に転身した者」とを天秤にかけること自体が無茶とも言えるが…。

 さて、代議士を経て知事となった上田知事は、この似て非なる先輩知事の何方に近いのだろうか。
 知事選挙の折には田中康夫長野県知事の応援を受けてはいたが、代議士時代の「限りなく右より」のスタンスは石原慎太郎張りで、今後も変わることは無いだろう。
 しかし、前知事による県政を否定することで有権者から高い支持を得たからには早急な改革が望まれる訳だが、石原慎太郎程の実行力は未だ兼ね備えていないのが現実だ。
 そのあまりの期待の高さからか、一部の支援者からは「議会の自民党勢力に遠慮し過ぎだ。知事になって変質した」と、厳しい評価も出始めている。

 だが、今後の改革がどれだけ困難なものか、上田知事自身が誰よりも理解しており、自分の考えのみで達成できるもので無いことも先刻承知の筈だ。これから議会に対し自身の考えをいかに浸透させる事が出来るかが大きな課題であるが、其には今少しの時間が必要なのかも知れない。
 有権者は県政改革の先導役を上田知事に託したのだから、下手な混乱を引き起こさせぬよう、結論を急がずにその舵取りを見守ることが懸命である。

 
 出資法人改革の決断を求む
埼玉県住宅供給公社
埼玉県道路公社
埼玉県土地開発公社
(財)埼玉県公園緑地協会
(社)埼玉県農林公社
(財)埼玉県中小企業振興公社
(財)埼玉県下水道公社
(財)埼玉県埋蔵文化財調査事業団
(財)埼玉県国際交流協会
(財)埼玉県暴力追放・
    薬物乱用防止センター
(財)いきいき埼玉
(財)埼玉県河川公社
(財)埼玉県芸術文化振興財団
(福)埼玉県社会福祉事業団
(財)埼玉県勤労者福祉事業財団
(財)埼玉県県民健康センター
(財)埼玉県産業文化センター
(財)埼玉県創造的企業投資育成財団
(財)埼玉県消防協会
   埼玉新都市交通(株)
(財)埼玉県生活衛生営業指導
   センター
(財)さいたま緑のトラスト協会
(株)秩父開発機構
   埼玉高速鉄道(株)
(株)さいたまアリーナ
(株)さいたまリバーフロンティア
県指定出資法人

 さて、県政の重鎮達への対応は一先ず脇に置いて、「日和見」と思われるのが余程癪にさわったのか、元来のイケイケ的発言も飛び出している。
 それが『県指定出資法人への県職員の天下り廃止』である。
 『天下り=悪』といった認識は多くの国民が共有しており、多額の給与と常識外の退職金を一部の者だけが授かることに怒りが向けられているのだ。

 実際に、住宅・道路・土地開発の3大公社を含む26出資法人には、多くの県庁退職者ばかりか県内市町村の首長経験者等が、ずらりと理事職等の役職に納まっている。
 この慣例を県レベルで廃止にすれば、改革推進派の知事として県内外にその指導力をアピールすることが出来る。但し、本当に意義のある改革は、天下りの廃止のみによって成されるわけではない。
 天下った者に能力がありその団体に必要とされ、其に見合った働きをするのであれば、それを廃止するのは「蛮行」とも言われかねないし単なる「高給取りへのやっかみ」とも取られかねない。世論の本質は「これといった仕事もない肩書きだけの役職に多額の公金を垂れ流す悪行」にこそ、駄目を出しているのだ。
 結局、今ある26出資法人の存在価値そのものに目を向けなければ、折角の試みも片手間の改革に終わってしまう危険があるということだ。 
 無駄な出資法人は直ぐにでも解体すべきだが、少なくとも似たような業務内容ならば、統合しスリム化を計るべきであろう。

 国策の1つとして、市町村合併が行なわれている昨今、一自治体が指導監督する法人の統合などは、わけもない筈だ。
 上田知事が其すらも考えずに、世間受けが良い「天下り廃止」を叫んでいるだけではないことを信じ、これからの県政改革の推進に期待したい。

 勿論、当紙は違う角度でも出資法人の現状にメスを入れるつもりだ。手始めに全ての出資法人、特にホール等の大型施設を運営管理している法人に対し、外注委託料の適正性とその委託契約方法を検証するつもりだ。
 ここ数年、行政発注の委託業務を追い続け『入札あるところに談合あり』が、当紙が得た持論である。
 次年度の入札が実施される前には、検証結果を紙上にて報告したい。当紙の報道が改革の一助となることを願って止まない。

 
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