土肥町の常識
「ラストエンペラー」ならぬ「最後の土肥町長」として、身を賭して取り組むべきでは?鈴木町長!
 西伊豆に土肥町というところがある。過去に本紙上で、同町観光協会に纏わる事件を何度か取り上げたので、本紙読者諸氏はご存知かも知れない。
 今般、土肥町のある自治会で横領事件が起こり、その事実を町ぐるみで隠そうとしていたことが本紙土肥支部の調べで分かった。詳細は以下の通りだ。

 平成14年4月、土肥町中浜区自治会青年部会計を務めていた三浦慎二から現会計=山田和彦へと引継ぎが行われた。ところが、会計の引継ぎに於いて絶対に忘れてはならない大切なもの=通帳が引継がれなかった。区民・町民の寄付金で運営されている自治会青年部の部費。その部費を大切に管理すべき立場にある会計。その会計が通帳を引継がずしていったい何を引継ぐというのか。
 「通帳を紛失した」「残金も覚えていない」との前会計三浦の回答に、同青年部幹部連中も、たいそう困惑したそうだ。
 そうは言っても三浦君だって1人の人間、間違いだってたまにはあるさ。心配はご無用。通帳の再発行を申請すれば、よほど意地悪な金融機関でない限り、必ずや再発行してくれることだろう。と、普通ならばこうなるのだが、世界の最先端(伊豆の最西端)に位置する土肥町では、このような常識が通用しなかった。
 なんでも、関係者の証言から部費の出納を辿り、記憶に基づく残金=193万円を算出し、何とそれを、通帳を紛失した三浦に支払わせて新規通帳に入金し引継いだのだ。
 仮に三浦の行為が単なる『通帳紛失』だったら、同青年部はここまで厳しい措置を講じるだろうか。三浦だって『通帳を紛失したお詫び』に193万円も自腹を切るとは思えない。

 通帳を再発行すれば預金の出納は一目瞭然だ。三浦は、自身に掛けられた横領疑惑を晴らすためにも通帳の再発行を懇願するべきだし、これは同青年部にとっても同じだ。その結果、仮に三浦による横領の事実が判明したならば刑事告訴すれば良いし、或いは通帳紛失後に拾得した何者かがネコババしたならば、これもまた遺失物等横領罪として警察に捜査を願うことになる。

 
 要するに横領

 これら2つに該当しない限り部費は口座にそのまま残っている筈であり、いくら三浦が反省しているからと言って193万円も弁償する必要は無かろう。つまり真相は「紛失」ではなく「横領事件」で、その責任を取って弁償した、としか考えられないのである。
 しかも前会計三浦慎二、現会計山田和彦、共に土肥町役場観光産業課勤務の歴とした地方公務員だ。横領若しくは横領を隠蔽した事実が明らかになれば、当然「懲戒免職」又はそれに近い処分が下されるだろう。

 ところが、鈴木衛=土肥町長は三浦に対し「通帳紛失」として戒告処分にし、「横領に関して調査したが事実が無かったので不問にした」という公的見解でお茶を濁したのだ。
 アレレ?「横領に関して調査した」ということは、当然、口座を洗ったということになる。口座も調べずに横領の有無を知ることは出来まい。その結果「(横領の)事実が無かったので不問にした」というのだから、やっぱり同青年部の部費は口座にそのまま残っていたってこと?すると、三浦に193万円弁償・入金させた新規通帳とは別に、昔の部費が入った口座がまだ存在するってこと?それは誰のお金?何に使うの?
 仮にそのような事実があればそれこそ大問題だが、そんな筈は無い。要するに鈴木町長は、問題となった口座の出納すら調べずに、「横領の事実は無かった」と言い張っているのだ。

 
 町ぐるみの隠蔽
4町合併を間近に控えて大チョンボ!?(土肥町役場)
 それだけでは無い。
 同町役場山田利治助役・福室恵治総務課長の両名が大仁警察署に出向いたものの、前記の鈴木町長の公的見解だけ伝えて帰ってきたというのだ。大仁署としても被害届け・告訴状が提出されなければ調査出来ない旨を伝えたようだが、未だにそれらしき動きは同町には見られないのである。
 こうなると、もはや「町ぐるみで横領の事実を隠蔽した」としか表現のしようが無くなってくる。
 確かに自治会青年部は市役所でもなければ町役場でもないが、その部費は地域共同体の公のお金。皆の寄付金で成り立っている。

 しかも横領疑惑が掛けられている前会計も、通帳の再発行をしないで引き継いだ現会計も、紛失として処分を下した町長も、そして警察まで出向いておきながら町長のコメントを伝えただけの助役等も、み〜んな歴とした地方公務員なのだ。こんなことが許されるのか!
 さすがは最先端?土肥町である。

 
 
 何の為の畳か
 「大規模地震対策等総合支援事業補助金」。読んで字の如く、地震災害を始めとする災害対策事業のために交付される補助金だ。
 筆者の手元に、その補助金の交付申請書(平成13年7月30日付)の写しがある。申請者は鈴木衛=土肥町長で、石川嘉延=静岡県知事宛てとなっている。交付申請額は230万3,000円、事業の目的は防災設備、資機材、備蓄品の充実及び、町民に対し防災の啓発事業を実施し災害に対する強化を図る、とある。
 土肥町はこの補助金で避難所用マットを100畳購入した。まあ、マットとは言っても本当は柔道用の畳なのだが、どちらであっても、災害時には学校の体育館等の避難所に敷いたりと何かと重宝するだろうから、それはそれで良い。
 問題はここからだ。現在筆者の手元に平成13年10月22日付け「土肥町総合会館使用及び使用料減免申請書」なる書類の写しがある。
 申請者は土肥町の教育長=小長谷邦夫、会場責任者は佐藤裕一、催物名称は土肥町文化講演会、使用日は平成13年12月21日及び同22日の二日間となっている。
 実はこの講演会、昨年大晦日の「PRIDE―2003男祭り」という総合格闘技でブラジルのホイス・グレイシー選手と闘って惜しくも引き分けた、オリンピック柔道金メダリストの吉田秀彦氏を招いて行なわれた柔道の大会だった。講演会というぐらいだから、いくらかは講演が行なわれたかもしれないが、飽くまでもメインは柔道の試合。もっと言うならば、町の柔道少年・少女も参加しての「柔道大会」だったのだ。
 
 制度の悪用

 健全なる精神は健全なる肉体に宿る。少年少女が武道を習得することには本紙も大賛成なのだが、この柔道大会に、なんと前述の補助金で購入された畳が用いられていたのである。しかも新品の柔道用畳を1回使っただけでは勿体無いと思ったのか、現在では100畳のうちの60畳が、土肥中学校に於いて課外活動用として流用されているのだ。

 町としては「有効利用」のつもりかもしれんが、こんなことが罷り通って良い筈が無い。これが許されるなら何でもカンでも「災害用」といって補助金で購入し、災害が起こらない限りは、平時に使う事が可能となってしまう。
 同補助金の交付要綱第5―交付の条件―(3)には「補助事業により取得し、又は増加した不動産及びその従物については、知事の承認を受けないで、補助金の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない」と記されている。
 例え地域振興やスポーツ振興など公共の福祉に関わる目的であっても、補助金交付の目的に合致しなければ、交付条件に反していることになる。これでは、町が県の補助金を『詐取』しているに等しい。

 
 県への報告を怠る

 当然のことながら土肥町役場、静岡県庁に対し「知事の承認」の有無を確認したが、やはり知事が流用を承認した事実は無かった。
 町に対しては再三に亘って「県に報告」するよう訴え掛けたが、未だに動こうともしない。緊急時の為に購入した畳を柔道大会や課外授業に流用することを、知事が承認する筈が無い。それを分かっているからこそ町も黙っているのだ。
 町役場の担当者と激論を交わした本紙土肥支部長=植村武司も、土肥町の公的見解として同町総務課長=福室恵治が述べた「有効利用しているだけであって、町が頂いた補助金を町として使うのだから問題無い」との不見識な答えに呆れ返ったというが、2時間にも及んだ激論の末、教育委員会事務局長=鈴木敏夫が最後の2分で吐いた台詞を聞いて「馬鹿馬鹿しくて話にならない」と思い、席を立ったという。

 曰く「確かに表向きは災害対策としながら実際には道場の畳として使ったが、40畳は緊急用に残してある。中学校で使っている60畳をもう一度古い畳と入れ替えて(緊急用を)100畳にする」。
 恰も、泥棒しても元に戻せばそれで済むかの如き稚拙な論理には、怒りを通り越して笑止千万。呆れ果ててモノも言えない。さすがは最先端?=土肥町だ。
(つづく)

 
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