指名→お持ち帰り→売春は無しだとぉ?
政務調査費を厳しく管理するための抜本的な改革が必要です、上田知事。担当職員との改革案のすり合わせには、クラブ「かわいい」を使わないようにネ
 1面に引き続き、こちらでもチョット埼玉県議に係る問題に触れてみる。

 このところ政治家のスキャンダルが続く埼玉県であるが、何れも、内部分裂をしている自民党県議団のチクリ合いに民主党が加わっての、結局は各派閥の勢力争いなのかな?それでも悪いものが表に出て、改善されるのは良いことだ。

 さて、その埼玉県政の近況といえば、清掃用品レンタル最大手「ダスキン」千葉弘二元会長が社長を務めていた平成11年から平成13年当時、傘下にある「ミスタードーナツ」の景品発注に絡み、1億8,000万円の不明朗な資金を捻出していた事件に関連し、土屋義彦埼玉県知事(当時)の長女・桃子が政治資金規制法違反の容疑で逮捕され、知事室や知事公館に東京地検特捜部が家宅捜索に入るという前代未聞の事態にまで発展し、土屋知事が辞任に追い込まれるという結果を招いた。

 また、所沢市選出の自民党衆院議員・新井正則が公職選挙法違反容疑で逮捕された事件に絡み、現職の所沢市議が9名も逮捕されてしまった。

 しかし、何と言っても埼玉県の恥を全国に晒してくれたのは、逮捕者こそ出てはいないが、埼玉県議6名による海外視察買春疑惑だろう。

 昨年12月13日午後1時半放送の日テレ報道特番「報道特捜プロジェクト」で、埼玉県議6名が11月に実施した公費による東南アジア視察中にクラブ「かわいい」を訪問し、店内のひな壇に座る女性を個々に指名し、別室へ連れて行った挙句、女性を宿泊先に連れて帰る県議の姿が放映され、全国民を怒らせてしまった。その結果、県内各地で様々な問題に波及した。

 市民団体による抗議、或いは市議会による「辞職を求める決議」が相次いだにも拘らず、当の埼玉県議会では腰砕けの追及で幕を閉じてしまった。こうした中で、視察費はもとより議員の報酬や、その他県議による公金の使途が注目され始め、各地で新たな論争を生んでいる。

 では、県会議員ともなると、一体どれくらいの報酬が貰えるのだろうか?一つ検証してみよう。

 本紙のお膝元、埼玉県では、県議1人当たりの基本報酬は1ヶ月94万円である。年額にして、1,128万円もの報酬を受け取っているのだ。議長にもなると1ヶ月116万円だ(現在、議員の報酬額の特例に関する条例が実施されており、平成15年8月1日から平成17年3月31日までの間、議員は報酬年額の3%、議長は5%各々減額される)。

 この他に「費用弁償」なるものがあり、議会開催中に本会議や委員会に出席すると、交通手当として1日当たり1万1,700円から1万8,700円、県内視察旅行に行けば同じく1万2,000円、その上視察宿泊費として1泊当たり1万6,500円プラス日当3,000円が支給されるのだ。この他に、「期末手当」というサラリーマンで言うところのボーナスが、議長で182万7,000円、議員148万500円支給される。

 百歩譲ってここまでは良しとしても、実はこれらの報酬以外にも、「第2の報酬」と呼ばれている、不透明極まりない「県政調査費(政務調査費)」が別途支給されており、これまた高額なので2度ビックリである。

 
 酒付きコンパニオン付きで反省する馬鹿

 この県政調査費ほど使途が不透明で、一般に知られていないものは他にはないだろう。

 この県政調査費の額は都道府県によって異なるが、今回はあくまでも本紙のお膝元、埼玉県に的を絞り検証する。

 県政調査費は議員1人に対して交付されるのではなく、各会派に対して支払われるのだが、金額は「埼玉県県政調査費の交付に関する条例」第3条によれば「県政調査費は月額50万円に会派の所属議員の数を乗じて得た額を交付する」とある。埼玉県議会には現在6つの会派があり、議員の総人数は94名であるから、実に年間5億6,400万円にも達する。

 「交付に関する条例」の第9条には各会派はその年度において「残余」がある場合は「返還」しなければならないと明記されているが、平成13年および翌14年度の「県政調査費に係る収支報告書」を見る限りでは、公明党を除く会派は皆きれいに使い切っており「残余ゼロ」である。

 消費税の導入で、端数が出て当たり前なのだが、ぴったり使い切るなんて議員の先生って「すごーい」としか言いようがない。また毎年のように「残余」どころか予算オーバーしている会派もあるが、貴重な血税なのだから少しは学習して無駄な支出をしないように努力したらどうなのだろうか?交付額の3分の1以上の「残余」を返還している公明党を、今回ばかりはご立派と褒めてあげたい。

 何れにせよ、その報告書にある使途の詳細について調べれば調べるほど不透明で、それを管理する筈の議会事務局も杜撰で怪しいことがわかる。今回は紙面に限りがあるので追及は次の機会にしよう。

 ただ、埼玉県民の皆さんにこれだけは言っておきたい。この程、県議6名が海外視察先のバンコクで夜遊びをしていた挙句、買春疑惑まで浮上し、その視察費が計530万円で、そのお金が公費だと騒ぎ立てているが、これは飽くまで氷山の一角に過ぎず、前述した基本報酬の他に様々な手当を貰っている挙句、「第2の報酬」と呼ばれる「政務調査費」を年間5億6,400万円も使っていることを知っておいて頂きたい。そしてこの政務調査費も、調査という名目を盾に本来の目的とは乖離(かいり)した使い方がなされている、ということを。

 今年3月、田中康夫県知事で知られる長野県では、政務調査費を料亭などでの飲食代として使っていたことが判明した。

 これは、「県包括外部監査人」の公認会計士・広田達人氏の報告で明らかになったのだが、その報告によると、平成13年度当時、長野県議会の最大会派であった旧県政会は、平成13年4月から14年1月までの間だけでも、長野市内などの料亭で部会懇談会なる会合を合計16回余りも開き、9月議会の反省会なる会合では、酒つきコンパニオンつきで長野県民の行く末を担う本会議の反省会を行い、公金である政務調査費で支払いを済ませていたと言うのだから、うらやましい…、いや驚きである。

 言うまでもなく政務調査費とは県民が一生懸命働いて稼いだお金から納められる血税で賄われている、言わば公金ある。

 この問題視されている年度当時、会計担当者だった島田基正氏によると、この他にも、うらやま…、いや不適切な支出が10件もあったそうである。長野県議会のホームページでは、政務調査費の使途に関する「事業実施報告書」を閲覧できる。

 しかし、そこには料亭などで会合を開いたとは一言も触れていないのだが、外部監査人が、非公開対象となっている領収書などを調べたことで明るみに出たのだった。当時の会派団長だった下崎保氏(新緑会)はコンパニオンを呼んだとされる9月議会の反省会は拠出金(参加者自己負担)から支出したと主張しているという。

 
 問われるべきは金額よりも使途と透明性
政務調査費を小遣いと勘違いしている職員を厳しく叱ってやって下さい、田中知事。但し、説教する時は酒抜きコンパニオン抜きで!
 そう言えば、嘗て戸田市でも似たような疑惑が浮上し、本紙の地元ということもあって、第47号(平成13年1月号)で市議会を糾弾したことがあったっけ。県議会に比べれば金額は小さいが、問題は金額の大小ではなく、その使途である。 

 戸田市では「会派調査研究費」と呼んでいて、各会派に年間48万円掛ける人数分支給されるお金である。議員1人につき毎月4万円という計算になるが、あくまで個人に対してではなく会派に支給されるもので、1人会派の場合は独り占めできることになる。

 これらのお金は、くどくなるが全て税金で賄われる公金である。何にでも使って良い訳ではなく、建前として一応の制約はあるのだが、戸田市においては、お金の使途を明確に現す領収書の提出が義務づけられていなかった為、支出報告書に適当に「研究会費に○○円」と書いて出すだけで済まされてしまっていた。車のローンに充てようが、子供の給食費に充てようが、報告書に尤もらしい名目を書いておけば済んでいたのである。

 そんな長年続いた理不尽な行為に嫌気がさした現職議員から、「実は僕たちの会派は今年もまた調査研究費で沖縄にゴルフに行っちゃいました」と本紙宛に告発があったのである。

 当時その真相を掴もうと戸田市議会事務局に問い合わせたところ、対応した戸塚光正氏=現議会事務局長は「私達は議員の先生を信頼しています」と苦しい言い逃れをしていたっけ。

 しかしその後、本紙の追及が発端で、市民や一部の市議からも改正する必要があるのではないかという声が次々と上がり、平成16年4月から領収書の提出が義務付けられて、領収書の開示請求も可能となった。職場の仲間同士でさえ「ちょっと弁当買ってきて」と金を渡されれば、お釣りと一緒にレシートくらい渡すものだ。こんな当たり前のことが、庶民が知らないことを良いことに、今まで実行されていなかったのだから、「年金問題」どころの騒ぎではない。今の議員たちには「納税の義務」さえ市民に説く資格がない。

 この政務調査費に限らず機密費等も問題になっているが、その使途が不透明だから騒ぎの発端となるのである。隠そうとするから余計話がおかしくなるし、納税者も馬鹿馬鹿しくなって金を払う気をなくすのである。本当に疚しいこともなく、必要とするお金だったら、「何々に幾ら必要なんだ」と堂々と公表し、足りないなら足りないで、必要なだけ予算を出してもらえばいい。そうすれば、コソコソ裏金作りをしなくても済むのだ。

 次回は国会議員の政務調査費にも焦点を当てよう。何せ報酬も調査費も市議や県議の比ではないだろうから…。 
(つづく)

 
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