施行規則と返答の矛盾
神保国男市長
 戸田競艇場(以下「競艇場」)の管理者である神保国男市長は、政治理念として『公平・公正・公開』を掲げている。この理念が単なるお題目ではなく実際に競艇場の運営に活かされているかどうかを検証するべく、戸田市図書館に足を運んでみた。

 果たして、戸田競艇例規集決算書はあったが、肝心の戸田競艇議会会議録が見当たらない。聞けば、戸田競艇組合(以下「競艇組合」)は情報公開が設定されていないから置いてないという。

 おかしい。どう考えてもオカシイ。

 「決算書」だって立派な情報の筈だ。お金の出し入れという「情報」は市民に見せるけれども、議会の内容は見せないというのはどういう理屈だろうか。競艇議会に於いて決議された内容は『公的事項』の筈。市民に知られてはマズイことでも話し合っているのか。そもそも、その競艇議会の『傍聴』が出来るのに会議録を見せないというのは、しかもその理由が「情報公開が設定されていない」というのは、一体どんな論理なのだろうか。甚だ理解に苦しむ。

 まあ、会議録すら開示できないのだから、他の書類(競艇場発注書類・入札契約関係)など開示できるワケがあるまい。

 さて、競艇場を運営する競艇組合に対し本紙は今年4月、陳情書(内容的には陳情と質問)を提出した。質問事項は「自販機の事業主体者は誰か」「こういった契約は又貸しにならないか」などといったものだった。

 それから1ヶ月以上も音沙汰が無かったが、忘れた頃に弁護士から「通知書」なる文面が寄せられた。

 曰く「通知人(競艇組合のこと)が貴新聞社の質問や審議要請に答えなければならない義務はありませんので云々」。出た出た、弁護士センセイの常套語だ。

 断っておくが、本紙は、「競艇組合は本紙の質問に答える義務や、審議要請に応える義務がある」などと書いた覚えは更々無い。飽くまでも、同様の質問に対し戸田社協がマトモに答えず埒が明かないから、「貴組合に於ける本件問題点の審議を強く要請する次第である。〜以上、陳情する」というように、「審議」を「陳情」(お願い)しているのであって、だ〜〜れも「義務」だなんてことは言って無い。

 それでも彼奴らが、どうしても「義務が無い」という文言を用いたいのならば「法的義務が無い」と表現するべきだ。何故なら道義的にはその義務が無いとは言い切れないからだ。

 しかも同通知書には「通知人は戸田社協に対し、競艇場における自販機の設置につき使用許可を与えてはおりますが、その運営は独立の法人である戸田社協の専属事項であり、通知人の関与すべきことではありません」とまで言い切っている。本当か。本当にそう言い切って良いのか。

 『戸田競艇組合モーターボート競走場飲食店等の使用並びに営業に関する条例施行規則』第4条2には「許可書の交付を受けた者は許可書と引替えに、請書(様式第3号)を管理者に提出しなければならない」とある。

 下の資料はその請書の写しだ。本紙は、戸田社協の行為が特にこの7に違反するのではないかと疑っている。何故なら、三国コカ・コーラ社(以下「コーラ社」)がジュースを補充し、自販機の点検・修理等を行い、周辺のゴミ処理や清掃を行い、衛生管理の面で全責任を負い、販売業績表を作成・提出し、売上金を回収・管理し、売上金に掛かる消費税を納付し、そして販売手数料を戸田社協に支払っているからだ。

 これは転貸若しくは転貸に準ずる行為に当たらないか。飽くまで戸田社協は、自らが『主体者』となって事業を行う目的で競艇場の1区画を借りたのではなかったか。請書の2にしても9にしても、実際にはコーラ社がやっていることで、これらは本来、事業の主体者たる戸田社協がやるべきことではないのか。ということは事業の主体者はコーラ社で、戸田社協は競艇場から借りた場所をコーラ社に又貸しして「ショバ代」をハネていることになる。

 もしそうだとすると、戸田社協会長(神保市長)は請書の誓約内容に反していることになるし、競艇組合管理者(神保市長)も、その状態を許しているということになる。これは重大な誓約違反の疑いと言えないだろうか。

 また同請書3、8、10を見れば競艇組合にそれなりの権限と強制力があることは明白であり、「通知人の関与すべきことではない」という返答内容と矛盾している。本当に関与すべきでないと思うのなら、請書から3、8、10の文言を削除すべきだ。

 
 
 たかが回答に弁護士を依頼

 さて、本紙の陳情書に対する競艇組合の対応について、もう1つ興味深い話がある。今月5日、第2回戸田競艇議会定例会の席上、総務常任委員会委員長が以下のとおり報告した。

 「金壱百五拾万円、補正予算第1号、承認されました。これは、場内に設置いたしている、自動販売機の契約許可についての質問状に回答するため、民事暴力専門の弁護士に委託するものである」(※本紙注・正確には民事介入暴力=警察庁が暴力団取締対策のために作った言葉で暴力団関係者による民事事件に対する介入のこと)。――嗚呼、何たる無駄遣いであろうか。たかが陳情書(内容的には質問も含んでいたが)に返答するのに、しかも、これっぽっちのA4用紙3枚の「通知書」を配達証明で送りつける行為に、何で150万円も必要なのか。それに、暴力団専門の弁護士を雇う必要性がどこにあるのか(競艇組合風に言うと、暴力団専門の弁護士に150万円で依頼しなければならないという法的義務はない)。

 ともかくも、いい加減な自販機事業、杜撰な管理体制、有って無いような書類(特に起案書)、姑息な情報不開示、税金のムダ使い等々、戸田社協や競艇組合が抱える問題の多くは、戸田市長への権力一極集中に起因しているのではなかろうか。出店許可を申請した自分に対し、自分が許可をあげるのだから、これをお手盛りと呼ばずして何と呼ぶのか。

 ただ、平成17年5月に川口市・蕨市・鳩ヶ谷市の3市が合併して新市が誕生することによって、競艇議会の議員定数が現在の『川口市議8名・蕨市議8名・戸田市議14名』から『新市議16名、戸田市議14名』へと変化する。

 そうすると競艇組合の規約を変更する必要が生じ、規約変更となると「そもそも何故、管理者は戸田市長じゃなきゃいけないのか。そこら辺もこの機会に変えたらどうか」という声が必ず出てくるだろう。それでも、こういった規約変更等は各地方公共団体の協議によって定める(地方自治法第286条)ことになっているから、戸田市1市だけでも反対すれば規約は変更できなくなる。

 但し、市長が1人で反対したところで「市民の代表である市議会の過半数が賛成しているじゃないか」と言われれば、強硬に反対を唱えるのも難しくなる。況してや人口11万人の戸田市に対して、合併後の新市の人口は60万人になる訳だから、色んな圧力や数の論理によって押し切られてしまうだろう。

 神保市長としては少なくとも市議会を味方に付けておかなければ、今後競艇場を運営する上での主導権は握れなくなるのだ。

 
 平成会と共産党の関係
細井幸雄議員
 本年6月、戸田市第3回定例議会で一般質問に立った細井幸雄議員(平成会)は、概略次のように発言した。

 「平成16年度予算案は共産党市議団の賛成を得て全会一致で可決した。これは新聞でも報じられたぐらい珍しいことだが、決して神保市長が方向転換をしたから共産党が賛成した訳ではなく、市長の政治姿勢は一貫している。市長が推し進める素晴らしい政策とその成果が、共産党さえをも動かしたのだ」―以上の言い回しは筆者の作文だが、趣旨としては概ねこのような発言だった。

 細井議員としては、神保市長へのオベンチャラのつもりだったのだろう。確かに読売新聞でも報じられた通り、昭和41年の市制施行以来、共産党が予算案に賛成したのは初めてのことだ。しかしこれは、裏を反せば余程のこと(何らかの密約?)があったからこそ賛成したとしか考えられない(細井議員は墓穴を掘った?)。

 ところで、戸田市議28名の中で1人だけ票決権がない役職がある。それは議長だ。本来は最大会派である平成会の議員が議長を務めても良さそうなものだが、どういう訳か4年連続で公明党議員が議長を務めている。従って票決数は27、過半数は14だ。

 現在の各会派の人数は、平成会10名、共産党4名…あれれ?自民クラブや公明党の人数を列挙するまでもなく、この2つで既に過半数を占めている。

 で、でも、共産党が予算案に賛成したのも、平成会から議長を出さないのも、平成会と共産党を足すと14(過半数)になるのも、たた、単なる『偶然』ですよネ、平成会神保市長!
〔以下次号〕

 
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