一蹴された住民の願い
SG競走の売上金は200億円超
 本紙3月号と4月号で、周辺住民を蔑ろにした戸田競艇組合と戸田市との「用地交換」について触れたことをご記憶だろうか。

 先頃、そんな「周辺住民無視」の戸田競艇組合(以下「競艇組合」)に関する新たな情報が舞い込んで来た。それらをお伝えする前に、両号の記事をご存知ない読者のために、あらためて事の顛末をお浚いしておこう。

 ―JR東日本から、埼京線戸田公園駅にほど近い同社所有の土地約2,000坪の売却を打診された戸田市は、直接買収は財政的に困難と判断して「用地交換方式」で交渉に臨むことにした。

 その用地交換方式の内容とは、先ず戸田市が所有する競艇場の土地(底地権)と競艇組合所有の「氷川町駐車場」とを交換後、戸田市が取得した同駐車場とJR所有の約2,000坪の土地を再度交換するというものだった。

 この動きに対して、競艇場周辺住民162名から陳情書が提出された。内容を要約すると、「私ども周辺住民は競艇の円滑な運営に協力することはやぶさかでは無いが、今回の用地交換だけは納得がいかない。以前にも無料駐車場が無くなったし、今回の用地交換後には有料駐車場まで無くなる。すると違法駐車が増え、また競艇場の客足が減れば戸田市の財政にとってもマイナスだから、せめて用地交換によって取得する約2,000坪の土地を競艇用駐車場にしてもらえないか」というものだった。

 しかし、地域住民の願いも虚しく、戸田市議会は3月に開かれた定例会・総務常任委員会に於いて、氷川町駐車場とJR東日本の土地約2,000坪との交換を承認してしまったのである。結局のところ周辺住民の声は天には届かず、神保国男市長の思惑通りに事が運ぶ結果と相成った。

 この中で1つだけ不可解な点があった。それは、この問題への共産党の対応である。他の会派がこの議案に賛成することはあり得たとしても「何でも反対」或いは「反対のための反対」とまで揶揄される共産党が何故ここで反対しなかったのか。しかし現実に、162名の周辺住民の陳情を蹴ってまで、共産党は賛成票を投じたのである―

 以上がそのあらましであるが、競艇組合は今、周辺住民との間に新たな火種を抱えている。それは「ナイター場間場外発売」なるものである。

 
 ナイター実施に怒り心頭!
秋元良夫市議
 「8月28日と翌29日の蒲郡ナイターを試行として、戸田競艇場での場間場外発売を実施する」ことを決めた「周辺対策協議会」に怒り心頭の周辺住民(氷川町会)が、蕨警察署と戸田市へナイター発売の取り止めを要請するという騒ぎに発展した。

 これを受けて、競艇組合側は「ナイター開催時には警備員を80名増員し、照明灯を増やすほか、万全の策を講ずる」と説明してはいるが、午後9時頃までは競艇客が出入りするようになることから「防犯や交通安全の面」を不安視する周辺住民との間で、その溝は未だ埋まっていない。

 ところで、なぜ競艇組合はこうまでしてナイター発売に固執するのか。その訳は「SG競走」にある。

 現在、日本全国に存在する競艇場の数は24。その内、ナイター設備を完備している競艇場は4ヶ所に過ぎないが、戸田を除く残り19施設では全て「ナイター場間場外発売」が行なわれている。

 また話変わって、SG競走は年間で8レースが実施されているが、1レースの売上金は優に200億円を超え、配当金はその約1割、20億円にも達するのである。各競艇場がSG競走の開催のために目の色を変えて奔走するのも当然と言えよう。

 しかし残念ながら、このSG競走、どの競艇場でも開催できるという訳ではない。SG競走開催の決定権は「社団法人全国モーターボート競走会連合会」なる団体が握っているのだが、その開催の要件の1つがナイター発売なのである。戸田競艇場がナイター発売を実現しなければ、SG競走は何時まで経っても戸田にはやって来ないということになる。因みに(というよりも当然)17年度も戸田競艇場では、SG競走は開催されない。

 
 行政主導の対策協議会
住民主導の対策協議会設置を!(神保市長)
 話を元に戻そう。

 ナイター場間場外発売に関して、競艇組合と周辺住民の間で幾度となく話合いが持たれて来た。戸田市役所も競艇周辺対策調整会議を2回開き、調整にあたったが、結果として不調に終わっている。また、ナイター発売の許可を出す蕨警察署も「ナイター発売の申請を国に行なうために必要な協議には、地元住民の同意が大前提である」(生活安全課長)との立場を崩していない。

 では何故、周辺対策協議会は今回、ナイター発売の実施を決定できたのか。

 その訳を説明する上で、周辺対策協議会について触れておく必要がある。

 「周辺対策協議会」(以下「対策協議会」)とは、戸田競艇組合、埼玉県都市競艇組合埼玉県モーターボート競走会の3団体等が組織する協議会であり、各組織×2〜3人(情報公開が出来ないため、詳細は不明)と四町会(氷川町・早瀬・新曽下町・朝日ガ丘)×3人で構成されている。事務局は戸田競艇環境対策係の中に置かれ、その委員長は秋元良夫=戸田市議である。

 つまりはこの協議会、周辺住民だけで構成されている訳ではないのだ。しかもこの秋元良夫センセイ、対策協議会の委員長とは言っても、前述の用地交換の件では、住民の陳情書を無視した「総務常任委員会」委員長その人であり、はたまた戸田競艇組合議会で運営している「周辺対策特別委員会」の委員長でもいらっしゃる(当然のこと、戸田競艇組合議員も兼務)。そして極め付きは、競艇組合の管理者でもある神保国男=戸田市長が率いる平成会の団長様なのである。 

 早い話が、対策協議会とは、行政主導の組織に他ならないのだ。競艇組合の利益を代表する人間がこれだけの頭数揃っていては、周辺住民を代表する委員の意見が通ることはまず考えられない。今回のナイター発売の決定にしても、競艇組合側が住民側を数で押し切った結果に過ぎない。その証拠に、決定後に住民の猛反発を食らっているのである。

 周辺対策協議会の本来の存在意義とは一体何か?そう考えれば、住民だけで構成されることが最も望ましい筈である。SG競走という金の成る木に目が眩んだ神保一派には、そんな簡単なことさえ見えていないらしい。
(つづく)

 
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