潰えた合併話

 昭和58年、埼玉の県南5市(川口市・戸田市・蕨市・鳩ヶ谷市・草加市)が集まって「まちづくり協議会」が設置された。目的はその名の通り、合併を含めた未来の「まちづくり」を協議することにあった。しかし、その後間もなくして草加市が離脱を決めたため、残り4市で協議を行うこととなった。

 まちづくり協議会発足から約17年が経過した平成12年、4市は政令指定都市を目指し「合併問題研究部会」を設立。ところがここでも、戸田市が離脱(平成14年)することになった。それでも、残された川口・蕨・鳩ヶ谷の3市は合併を諦めなかった。

 戸田市離脱から程なくして、今度は「任意合併協議会」を同14年に設け、更に同15年には「法定合併協議会」へと移行し、いよいよ合併のための“正式な協議会”として同17年5月1日の合併を目指して協議を重ねてきた。

 このような最後の詰めの段階に及んで、新市名称が「武南市」となることに川口市が強硬に異を唱え、本年8月2日の臨時議会で川口市の離脱が議決された。事実上3市合併問題は終局を迎えた。

 このように、今夏の終局を迎えるまでの紆余曲折を振り返ると、そこには様々な事情や思惑が複雑に絡み合っていたであろうことが容易に推察される。

 さて、この様な合併によって、或いは予定していた合併が直前に無くなることによって、各関係機関や組織に齎される影響というのは決して少なくない。

 戸田競艇の施工者『戸田競艇組合』もその一つだ。同組合は戸田・川口・蕨の3市で構成されているが、これまでに本紙で再三に亘って述べてきた通り、配分金の割り当てや清涼飲料水等自販機事業のあり方に公平性を欠く部分がある。

 しかし最近まで、このことで3市が揉めている或いは表立った問題として取り上げられたという話は聞いたことが無い(水面下では色んな不満や確執もあったのだろうが…)。

 
 謎の許可変更

 例えば、つい1年前の競艇議会でのやり取りも、旧態依然とした競艇組合の実態を如実に表している。

 平成15年、戸田競艇組合第1回総務常任委員会に於いて「3市への配分金について見直しの議論をすべきではないか」という意見が出された。しかし、これに対する答弁は「正副会議者会議等で、現段階では改定の議論をする時期ではないと判断し、議案が提出されればテーブルに乗せる」というものだった。一言で言うと「今のところ変える必要は全く無い」という意味に等しい。

 この時点では、先述した「3市合併」が恐らく実現するだろうと考えられていた。そのため、合併すれば一気に人口や議員数も変わり、勢力図が塗り変えられることになる。

 それに伴って競艇場の正管理者=戸田市長、副管理者=川口市長・蕨市長、議員定数=戸田市14名、川口市8名、蕨市8名等といった『戸田競艇組合規約』が大幅に変更されることになるので今変えても意味が無い、ということだろう。

 しかし合併問題が立ち消えとなった今、戸田競艇組合を取り巻く情勢は大きく変わりつつある。

 何せ、平成17年度は20億円の競艇事業収入金が見込まれ、戸田・川口・蕨の配分率2対1対1、配分金、戸田市10億円、川口市5億円、蕨市5億円の歳入金額が見込まれている。景気が低迷して久しい今日、各市は自主財源増額のためいよいよ本音で「我が市の権益」を語りだすだろう。いや、既にそれは始まっている。

 本年10月18日に開かれた第4回戸田競艇組合議会定例会では、管理者=神保(戸田市長)に10項目の一般質問が浴びせられた。それは、競艇場内に設置された飲料水等の自販機運営についての質問だった。

 ―「飲料水自販機23台中の12台は、社会福祉法人戸田市社会福祉協議会の神保会長(=競艇場正管理者)が兼職されており、ここの運用にあたっては、使用申請者代表、使用許可発行は同一人でどうなっているのかと指摘せざるを得ない。しかもすべては随意で決裁されているようだが、なぜ随意契約なのか伺います」―

 これに対し保科総務部長は「民法108条の規定もあるので、今後は代理人を選任する方向等により採用をしていく。使用許可は公益性の高い団体に許可を出している」と答弁した。

 今までの経過を知らない人の耳にはまともな答弁に聞こえるかも知れないが、これは詭弁ではないか。

 例えば、競艇組合互助会は、平成13年4月1日から16年3月31日までの3年間使用を許可されていた。しかし契約期間中にも拘わらず、平成14年1月1日から戸田市社会福祉協議会に使用許可が変更されたのだ。まだ2年以上使用する権利が同互助会にあるというのに、である。

 許可する側(管理者)と許可を申請する側(戸田社協)が同一(神保市長)だからこそ罷り通るのだが、契約期間中の使用許可変更について、管理者から同互助会に何らかの説明はあったのか、あったとすればどのような理由から変更の必要性が生じたのか。全く以って不可解な話だ。

 同互助会は残った契約期間に対して損害賠償を請求してもいい筈だが、変更の明確な理由も知らされないまま何故黙って引き下がったのか。

 
 公平公正公開

 また、そもそも同互助会への使用許可に問題は無かったのか。保科総務部長の答弁によると、同互助会は「公益性の高い団体」ということになるが、本当にそうだろうか。

 戸田競艇組合職員互助会は、読んで字の如く、職員の「互助会」に過ぎない。ある特定の職員の福利厚生を目的とした互助会に公益性があるのなら、どの企業の職員互助会にも公益性があることになるが如何か。

 更に言うならば、この自販機は3市社会福祉会(戸田市・川口市・蕨市)が昭和の時代から事業運営を行っている。いくら管理者とはいえ、川口市や蕨市の承認も取らずに、神保市長の独断で、次は互助会、次は戸田社協とタライ回しにしていいものなのか。戸田競艇が3市で運営されているという大前提を度外視しなければ、そう易々とこんなことはできないと思われるのだが…。

 また、こんな質問もあった。

 「一部事務組合(※本紙注・この場合、戸田競艇組合を指している)は地方自治体と異なり、情報公開条例を制定する積極性が見受けられないが、来年に向け条例を制定する考えは無いのか」との質問に対して、また保科総務部長が答弁に立った。

 「17年度に向け、県内の一部事業組合及び競艇場の一部事業組合の制定状況を見ながら検討していく」との答弁であった。これも一言に纏めると「公開しない一部事業組合が何箇所か存在するから、ウチも公開しない」という意味だ。

 これ以外8項目の質問があったが、(傍聴も出来て、メモを取っていいのに)議会の議事録を開示してくれないので、確実にメモが取れた前記2つの質問しかご紹介できないのが残念である。

 戸田市議会議事録は公開しているし、川口市議会はインターネットで、蕨市議会はケーブルテレビで放送している。なのに、この3市の集まりである競艇議会だけが何故、議事録公開を拒むのか、甚だ不思議でならない。

 これでは神保市長の政治理念「公平・公正・公開」が泣くというものだ。
(つづく)

住民に配慮(非住民区という約束で交換)した市とJRとの契約も、第三者である「第一倉庫」には拘束力無し。仮にマンションが建っても文句は言えない。市は、予め転売が決まっていたJRに「乗せられた」?
 
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