何でもいいから起訴しろってか?

検―その時被告人はどういう状態でしたか

証―伊藤さんに覆いかぶさるようにして、大声で怒鳴ってました

検―何て言ってましたか

証―伊藤、コノヤロ、説明しろ!と…

検―その時伊藤さんはどうでしたか

証―恐怖で何もできないという状態でした


 今年3月9日、本紙植村が強要未遂罪で逮捕された。新聞報道によると「戸田競艇場内の自販機をどかして知人の業者を入れろ」と強要した疑い、本人の弁は「公営ギャンブル場の自販機事業は随意契約ではなく競争入札にすべき」であった。

 果たして2人とも処分保留(実質的には不起訴と同じ)となった。

 当たり前のことを述べるが、『起訴』というのは刑事裁判を行なうという意味だ。つまり「知人の業者を入れろ」と“強要”したことを立証できる(=2人を有罪にできる)ならば起訴するだろうから、それをしないということは1.必要性が無いか、2.有罪にできるだけの証拠が無いか、3.事件(事実)そのものが存在しなかったことが判明したかの何れかであろう(事件の内容によっては、訴えた側が訴えを取り下げたことによって、という場合もあろう)。

 ともかく、植村は暴力行為で再逮捕された。以後半年以上が経過し、幾度かの保釈申請も通らず現在に至っている。

 指一本触れていない相手にどうやって『暴力』を振るうのか、検事でも裁判官でもない筆者には理解できないが、怒り心頭に発して怒鳴ったら『暴力』なのだろうか。この解釈だと、恐らく多くの国民が暴力行為で逮捕され、半年以上拘留されることになりそうだ。

 さて、冒頭のやりとりは先日行われた公判の模様のほんの一部だ。『検』は検事、『証』は証人である。

 「覆いかぶさるようにして」という表現は、恐らく植村の長身(約187cm)に起因しているのだろう。証人は「上から見下ろし」「威圧感があった」等とも証言していたが、筆者に言わせれば、長身の男に中腰の状態で下から覗き込まれた方がよっぽど恐い。

 いずれにしても検察側の質問は、どっちの方向からどっちに歩いた、どれぐらいの速度で歩いた、そのとき被告人は伊藤さんのどちら側に立ち、何度ぐらいの角度を向き、距離は何センチだった、そのとき証人は何メートル離れたところからそれを見ていた、その時間は何分何秒…といった類のものに終始していた。

 まあ、被告人を有罪にすることが検察側の目的であり存在意義なのだから、自分らにとって都合の悪いことには一切触れずに、被告人の印象を悪くする部分のみを誇張するというのも、彼らの立場上無理もあるまい(本来そうであってはならないのだが…)。

 しかし裏を返せば、植村が何故怒ったのか、何を調べようとしていたのか、それに対する回答はどうだったか等について一切触れたくない、若しくは触れるとマズイという心理の表れと考えられなくもない。

 そこで、本紙紙上で再三に亘って取り上げてきた戸田競艇場の自販機の問題について、もう一度検証してみよう。

 
 昌永商事撤退の裏側には驚愕の事実が…
 表(上)に示した通り、本紙では戸田競艇場内に設置された清涼飲料水等自動販売機の中の、計14台の自販機設置のあり方について疑義を呈している。先ずは表にある甲、乙について説明せねばなるまい。

 競艇場内に自販機を設置するには、競艇場の正管理者の許可が必要だ。正管理者は神保国男=戸田市長である。設置許可を得た者は『事業主』として自販機を置くことが許されるが、表では敢えて事業主という言葉は用いずに(甲)と表記した。その理由は読み進んで頂ければ、後ほど分かるだろう。

 一方の(乙)は、(甲)と契約を結び実際にジュースを卸す業者だ。契約形態は(甲)(乙)の二者間で決めるのでマチマチだが、ご覧の通り1台○万円方式か1本○円方式だ。

 例えば1台3万円という契約なら、ジュースの売り上げに関係なく、毎月3万円の販売手数料が乙から甲に支払われる。1本70円という契約なら、ジュースが1本売れる毎に70円の販売手数料となるので、こちらは売り上げに左右される。

 表にある『手数料収入』というのは、これらの契約によって(甲)が得た1年分の手数料収入(左は12台分、右は2台分)を記したものだ。一部には9ヵ月や15ヶ月といった契約期間もあるが、その場合は1年分に換算した。

 また、『昌永』というのは明治乳業総代理店=昌永商事(平成13年10月に倒産)のことで、同社社長の山上女史福田延之=戸田市議(当時)の関係は周知の事実だ。同社倒産後、両者とも夜逃げして新聞各紙でも報じられた。

 『互助会』は戸田競艇組合職員互助会、『三国』は三国コカ・コーラボトリング株式会社、『戸田社協』は戸田市社会福祉協議会、『3団体』とは戸田競艇組合職員互助会、戸田市観光協会、戸田蕨川口三市社協連絡協議会の3つを指している。

 さて、これら自販機設置契約に大きな変化が起きたのは、表に※A,B,C,と付した三つの時点だ。

 先ず(A)の平成12年度だが、これは、それ以前(平成12年3月末日)まで長年に亘って経営に携わってきた昌永商事が撤退したという意味で大きな変化が起こった日(或いは年)と呼べよう。

 12台の自販機の平成15年度、同16年度の手数料収入を見れば明らかなように、乙から甲に支払われた手数料だけでも約2,000万円なのだから、甲乙両方の立場を兼ねていた昌永商事の収入が、それ以上であったことは間違いない(そればかりか、『乙』の立場でジュースを卸していた2台の方の収入もあった)。

 ならば、当時の昌永商事は、年間数千万円もの利権を易々と手放すほど景気が良かったのか、というと実態はその逆で、数億円の借金や不払いがあったことが後に判明している(詳細は本紙の過去記事をご覧下さい)。

 
 実は売買されていた?自販機利権
 前述の通り、彼らが失踪したのは平成13年10月、つまり昌永商事が競艇場内の自販機事業から撤退した1年半以上も後の話だ。多額の返済を迫られる立場でありながら、なぜギリギリまで自販機事業を行わなかったのか、なぜ易々と利権を手放したのか、その裏には何らかのカネの流れがあったとしか思えない…。

 とまあ、ここまでは過去に報じた内容だが、ここからが特ダネだ。

 捜査当局周辺から洩れ伝わる情報によると、植村の逮捕以後、事件に関連のある何名かの人物に事情聴取(任意で)を行ったが、その中には三国コカ・コーラの関係者も含まれていた。これらの関係者の証言により、昌永商事の競艇場内自販機事業撤退に際して、コーラ社側から昌永商事側に一億数千万円のカネが流れていたことが判明した。

 借金まみれの昌永商事がコーラ社にカネを貸していた(その返済)とは到底考えられないし、昌永商事がカネを借りるにしても、担保となる土地建物は抵当権がバッチリ設定されているから、そんな御仁にコーラ社がカネを貸すとも思えない。となると、このカネは『競艇場内で自販機事業を行う権利』を譲ってもらった事への対価、即ち『利権を売買した』ことになる。

 公営ギャンブル場内で事業を行う権利が、民民間で取り引きされて良いのか。いや、良い筈が無い。法的には何という法律の何条に違反するか否か知らんが、そも競艇場内の自販機設置の許認可権者は正管理者である神保市長だ。その神保管理者の許可を得る前の段階で大金を払っておいて、もしもその後許可が下りなかったら詐欺事件になる。

 常識で考えると、詐欺と知りつつ敢えて騙される馬鹿はいないから、少なくともカネを払った時点では福田延之の話を信じていたということになる。正管理者の許可が必要であることを知りつつ、どうやったら福田の言うことを信じられるか。それには、福田の政治的圧力やコネクション、それら“競艇場への影響力”の存在が不可欠だ。

 つまり、正管理者の許可なんて形だけだからどうにでもなる、それよりカネとコネが大事だ、という認識が無ければ成り立たない取り引きであり、そういう認識があったということは、そういう実態があったことを意味しているのだ。

 こういった、競艇議会を形骸化させ正管理者の権威を失墜させるような取り引きを、神保市長が黙って見過ごす筈はあるまい。本紙の街宣禁止仮処分を申請するためだけに19人もの弁護士に依頼したのだから、それ以上の強力な弁護団で福田市議(当時)なり昌永商事なりコーラ社なりを訴えるに違いない。このことは後に大問題に発展する可能性がある。

 
 互助会の撤退理由を明確に示してみろ!
神保市長
 次に(B)の平成14年1月1日だが、この日は12台の(甲)が互助会から戸田社協に変わり、1台3万円だった契約が1台6万円に変更され、また2台の方は、1本70円から1台6万円に変更された日である。

 先ず、この1月1日という時期についてだが、こんな時期に契約を新たに結んだり、契約内容を変更することは珍しい。通常は年度毎(4月1日〜翌年3月末日まで)の契約を結ぶ。

 互助会の場合、この契約は平成12年4月1日〜平成15年3月末日までの3年度分の契約だった。にも拘らず1年9ヶ月という中途半端なタイミングで何故撤退したのか。残りの1年3ヶ月は要らないのか(ここで言う撤退とは、この12台に限った話。現在でも、この表にある14台以外の5台を経営している模様)。

 実は平成13年暮れ、本紙は「互助会が競艇場内の自販機経営に携わること自体おかしいではないか」と抗議したことがあった。

 簡潔に理由を述べると、1つは、「職員の相互共済及び福利厚生に資する」ことを主たる目的とする互助会に、金儲けは必要無い。互助会員から会費を集め、その集まった金で自分たちの福利厚生でも何でもやればいい。他所で儲けた金で運営するなら会費を徴収する必要は無いし、それなら互助会ではなく株式会社ということになる。

 2つ目に、戸田競艇組合職員互助会の名が示すとおり、これは職員の互助会であって市民・県民・国民の互助会ではない。従って、公営ギャンブル場に設置した自販機で得た利益を職員には還元できても、公に還元することが出来ない。

 『戸田競艇組合』自身が「公益性のある団体に(場所の)使用を許可する」と言っているのだ。儲けを自分ら互助会員の為に使ってしまうような団体に、果たして公益性があるのか。

 というような理由で本紙が抗議した直後、契約期間中であったにも拘らず互助会が12台から手を引いたのだ。これは単なる偶然なのだろうか。だとすれば、じゃあ互助会が手を引いた理由は何なのか。この疑問については未だに誰も答えられないでいるのだ。

 また、互助会がどういう理由で撤退したにしろ、12台の方を戸田社協が引き継ぐと共に、1台3万円だった契約を倍額の6万円に変更しながら、一方の2台は1本70円を1台6万円に変更すること自体がおかしいのだ。

 
 利益半減の契約変更は何のため?
 1台6万円と1本70円の契約形態のどちらがより(甲)にとって好条件なのかは、その手数料収入をみれば一目瞭然、1本70円の方が利益が大きい。

 だからこそ戸田社協は、12台に参入した(B)の1年3ヶ月間は、互助会の時代の倍額で契約し、更に翌年度の(C)では1本70円方式にすることで、互助会の頃の実に5倍近い収入を得ることに成功しているのである。

 ならば2台の方も同様かと思いきや、これは逆になっている。(B)よりも前の時点での手数料収入は不明となっているが、左の12台の手数料収入からある程度の想像はできる。単純計算で、12台で2,000万円なら2台で約330万円だから、3団体の手数料収入は(B)以降は半額以下に減ったことになる。

 繰り返すが、3団体の中の1つである戸田市観光協会の会長は神保市長、もう1つの戸田蕨川口三市社協連絡協議会の会長も神保市長、その三市社協を構成する戸田・蕨・川口の中の1つ=戸田社協の会長も神保市長であることはご存知の通りだ。

 つまり片方(12台)で儲けを5倍にして、もう片方(2台)で儲けを半減させていることに、歴とした自覚があるということだ。

 そこで問題となるのが、3団体の儲けを半減させる契約内容変更について、これを主導的に行っていた立場の三市社協は、事前に説明して了承を得ているのかどうかという点だ。3団体のうち戸田市観光協会は神保会長だからどうにでもなるにしろ、互助会の了承は得られていたのか。また三市社協のうち、蕨と川口の社協の了解はどうか。

 三市社協とは言っても、その事務局は戸田社協の中にあり、その担当者は戸田社協の伊藤次長が兼任している。ということは、戸田社協は互助会、蕨社協、川口社協の了承を取る必要があり、そのためには説明する必要もあろう。ならば何と説明したのか。

 もし「1台6万円の方が儲かる」と説明していたら、これは騙したことになるし、逆に利益が半減することを説明されて快諾する馬鹿もいないだろう。

 3団体が、利益が半減する契約内容変更を、しかも年度途中で行った理由は何だったのかという質問書を戸田社協に突きつけたところ、その回答たるや「年度途中の変更につきましては年度途中での契約内容の変更が理由と思われます」といった、喧嘩を売るような内容のものだった。

 「何故変更したのか」という質問に対して『変更したから』と返答して憚らない、その非常識な神経を疑わずに居られないのは本紙だけではあるまい。裏を返せば、理路整然と説明できるだけの合理性・正当性を持つ理由が無いからこそ、人を馬鹿にした回答で怒らせておいて、注意や関心を他所へ逸らしたのだろう。

 
 要はテキヤのショバ代と同じじゃねえか
 また、消費税納付の状況にも不可解な点がある。本来消費税は売上金の中から事業主が納めるものだが、戸田社協は三国コーラ社から受け取った12台分の手数料収入から収めている。これでは事業主とは呼べない。

 これに関して戸田社協がよこした弁護士は、「『ジュースを販売する』という事業の主体者は三国コーラ社で、『その事業を行わせて、そこから手数料収入を得る』という事業の主体者が戸田社協」と答えていたが、これは消費税に関して細かく突っ込まれることを恐れてのことだったのだろうか。

 それにしたって三国コーラ社は、競艇場内に自販機を設置して商売する権利を持っていないのだから、自販機によるジュースの販売という事業の主体者は、飽くまでも戸田社協でなければならないのだ。しかしこの現状で主体者と呼べないのは火を見るよりも明らかだ。

 『ジュースを補充し、自販機の点検・修理を行い、周辺のゴミ処理や清掃を行い、衛生管理の全責任を負い、販売業績表を作成・提出し、売上金を回収・管理し、売上金に掛かる消費税を納付し、そして販売手数料を戸田社協に支払っている』のは三国コーラ社であって、戸田社協は何にもしていない。契約書に判をついただけだ。これのいったい何処が『事業の主体者』なのか。

 何もしないで年間数千万円の手数料収入が得られる(甲)の存在とは、競艇場にとって一体何なのか。いっそのこと(甲)の存在を無くして(乙)が直接自販機経営したらどうなのか、嘗ての昌永商事のように。

 そうすれば、もう少しジュースの値段を安くしてあげるなど、競艇ファンにサービスで還元できる。それでもやっぱり「公益性」のある甲の存在が必要というなら、先ずは互助会を排除せねば辻褄が合うまい。

 だいたい今どき、公営ギャンブル場の業者を公募せず競争入札も行わず、随意契約を結んでみたり、自分たち関係団体だけでグルグル利権を廻したり(中には高額で売買したり)というスタイルそのものが時代にマッチしないし、神保市長が掲げる公平・公正の精神にもマッチしない。

 そういう矛盾や不公正を糺すためにこそ植村は立ち上がり、身を賭して戦っているのだ。それを小バカにしたり、挑発したり、逆手にとって訴えたり…。

 お天道様は、何でもお見通しだ。誰が正しいのか、誰が嘘を言っているのか、誰が裏切り者なのかを…。

(つづく)

「なぜ随意契約なのか」と訪ねたら、こんな↑回答が…
 
「契約内容を変更した理由」については「変更したから」だそうです
 
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