昨年12月に巡視船と銃撃戦を繰り広げた北朝鮮の工作船(左)と、それを追跡中の巡視船(右)
 当たり前の法整備を!

 衆院武力攻撃事態対処特別委員会は今月7日、漸(ようや)く有事関連三法案の審議に入った。
 小泉総理は「与野党が対立する問題ではない。独立国としての体制をどう整備するかであって、民主党からいい提案があれば検討する」と述べた。
 当然だ。余りに当たり前の話である。
 世界中の独立国のなかでも、国軍と呼べる軍隊を持たないのは、この日本ぐらいのものである。既にこの時点で「独立国家としての体を成していない」という辛辣な意見すらある。
 況してやロシア、中国、北朝鮮という国々に囲まれているといった、アジア極東地域の地理的・国際政治的情勢に照らし合わせてみれば、先の大戦以後今日までこのような法案が審議されなかったこと自体が『異常な事態』と言える。

 その異常事態を脱して正常な状態に近付こうとしているときに、与党も野党もヘチマもあるか。
 一旦緩急アレバ(有事の際には)屁理屈をこねている暇などない。我が故郷もあなたの町も一瞬にして焦土と化す。 イデオロギー論争に声を嗄らしている場合ではないのだ。
 だからこそ有事の為の対策は平時に於いて講じなければならないのである。
 時折、筆者の左耳に「いまどき一体何処の国が日本を攻めてくるというのか?『いざという時』とはどういう時のことを想定しているのか。そうやって軍備を拡大し、軍事大国化したいだけなのではないか」という声が聞こえてくる。決まって左側から聞こえてくるのである。

「悪の枢軸」の中の枢軸、金正日

 どうやら左側の人々は想像力が貧困なようなので、幼稚な平和主義者にも解かるように具体例を挙げてみよう。
 昨年暮れに鹿児島県・奄美大島沖で北朝鮮の工作船が沈没したという事件があった(本紙では「不審船」と呼ばず「工作船」と呼びます)。
 中国・韓国・北朝鮮の船舶が、我が国の「排他的経済水域」(EEZ)内に無断で侵入すること自体は決して珍しい出来事ではないが(そもそもこのような事態が珍しくないというのが異常なのだが)、海上保安庁の巡視船と銃撃戦となり沈没(というより自沈?)したことで、日本中に衝撃が走った。
 事件後、北朝鮮は「我々は、北朝鮮の尊厳ある在外公民団体である朝鮮総聯への白昼テロだけでなく(どうやら彼の地では、当局による強制捜査のことをテロと呼ぶらしい)、『正体不明の船舶』まで我々と関連付けて狂乱的に振舞う日本の北朝鮮敵視策動を、絶対に傍観しない」と、いつもの調子で逆ギレ。

 また、自国のEEZ内で工作船が沈没した中国は、「中国の権益と懸念を十分尊重すべきであり、日本は事態を大きくし複雑化させるような行動をとるべきではない。中国政府は、引き続き必要な措置を講じて、自国のEEZ内の管轄権を保護する」と、工作船の引き揚げを牽制した。
 また中国は「我々は、日本が軽率に武器を使用して不審船を沈めたことに強い不満を表明した」と、お怒りでもあったようだ。

 
 優しい太陽?
最近、色んな事があり過ぎて少し元気が無いけど、頑張ってください、小泉総理!

 結果を先に述べると、最終的には工作船の引き揚げに同意するのだが、このように予めゴネておいて後に譲歩することで『恩』を売ることが当初からの目的なのであり、その『恩』という名の切り札を集めておいて「いざ」という時に使うというのが、中国外交の常套手段なのである。
 工作船の引き揚げに同意すれば日本に恩を着せられるし、最後までゴネて同意しなければ北朝鮮に恩を売ることができる。つまりどっちに転んでも損は無い。
 願わくば北朝鮮よりも日本に恩を着せたいと思ったとしても、決して不思議ではない。その方が何十倍ものカネに結びつく。

 このような外交手段に於いて、北朝鮮と中国のそれは酷似している。翻って我が国はどうか。
 太陽政策の美名の下に、カネとコメをばら撒いて憚らないのが我が国の外交である。
 寓話「北風と太陽」に登場する外套(ジャンバー)を着た男は、太陽がやさしく照らしてくれたから心を開いて外套を脱いだのではない。暑くて暑くて苦しかったから脱いだのだ。勘違いしてはならない。
 現実に、米国政府による「悪の枢軸」発言以来、北朝鮮は行方不明者(拉致された日本人)の調査にも柔軟な構えを見せている。
 種々の支援や援助を全否定はしないが、時として強硬・毅然とした対応も外交には欠かせないのだ。何でもモノやカネで解決できると思ったら大間違いなのである。

 ところで、嘗て韓国に亡命した北朝鮮元工作員は、昨年暮れの事件を受け、興味深いことをマスコミに語っている。
 工作員が壮絶な訓練を受けているであろうことは想像に難くないが、その工作員が受ける講義では「日本の巡視船は絶対に銃撃してこない。戦闘訓練も受けていないため、とても弱い」と教わるそうだ。従って精鋭部隊は韓国、それ以外は日本に振り分けられるという。
 また、大韓航空機爆破事件で金賢姫が自殺に失敗して韓国当局に捕えられて以来、徹底した自殺の教育が為されているとも語っている。
 昨年、我が国巡視船が銃撃した以上、今後は、工作船が搭載する武器も強力化し、追跡を振り切る訓練が強化されるだろうとの事。
 つまりロケットランチャーは序の口だった訳だ。
 この銃撃戦で、巡視船に充分な防弾装備が施されていなかったことが図らずも明らかになった。これでは国民の生命を護ることは愚か、巡視船自体が危うい。様々な法改正と対策が急務である事は言を俟たない。
 お解り頂けたかな?首が左側に傾きかけた坊ちゃん嬢ちゃんよ。
 ヘイワ・ヘイワと呪文を唱えるだけでは平和は守れないのですよ!

 
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