石原都知事が奮起した理由
頑張ってくれたまえ、規制Gメン諸君!

 このほど、10月1日より首都圏の大気汚染解消を目指し、東京千葉埼玉神奈川の1都3県が条例に基づき大気汚染物質(粒子状物質PM)の排出基準を満たさないディーゼル車の走行を禁止する生活環境保全条例=所謂ディーゼル車規制が始まった。

 大気汚染といえば、本紙が本拠を置く埼玉県戸田市も『物流の街』と呼ばれるほど物流業者の非常に多いところで、事務所の目と鼻の先には国道新大宮バイパスがあり、更にその頭上に外環自動車道と首都高速5号線がクロスする美女木ジャンクションが君臨し、1日外に立って居ようものなら鼻の穴を真っ黒に染めるほど排気物質が降り注いでいるところである。

 以前から、我が国の大都市地域における窒素化合物(NOx)による大気汚染は非常に深刻な問題となっており、過去に何度か改正されながら国の法律として存在していた。工場に対する規制や自動車の排ガスに加え、自動車NOx法(平成4年)に基づいて特別の排出基準を定め、車種規制を始めとする対策を講じてきた。しかし、自動車の交通量の爆発的な増大により対策の目標とした大気環境基準を達成することが困難な状況となってしまった。

 また、近年特に問題視されている大気汚染物質の粒子状物質(PM)は大気中に長時間浮遊する特性を持ち、高濃度で肺や気管などに沈着して呼吸器に悪い影響を与えるだけでなく発ガンの恐れもある為、従来の対策を更に強化することを余儀なくされ、平成13年6月に自動車NOx・PM法が成立したのであった。

 しかし、法律の規制では規制対象地域で車検が取れなくなるだけで、規制されていない地域で車検を取れば、規制対象地域で運行出来てしまうザル法となってしまった。

 今回の条例は、そういった国の法律に異論を唱え、一刻も早く大気汚染という深刻な問題に歯止めを掛けようと奮起した石原都知事を筆頭に進められてきたものである。
 本紙も人命を尊重するという観点からこの石原知事の試みには心より賛同したいところである。しかし、ちょっとまてよ!耳を澄ませば何やらヤヤコシイ話が巷に錯綜しているではないか。

 

 その割に、厳しすぎやしないか?

「…係長、あれ規制車すか?」「あー、わしゃ老眼でね。それよりイスないか?この年で立ち仕事は疲れるて」
「しっかし、ナンバー確認っても、この渋滞じゃ後ろの車で見えねっつの!おっ、今の運転手、ヤンママと違うか?」

 そもそも、先に述べたように国の法律で自動車の排気ガスによる大気汚染を規制する法律『NOx・PM法』というのがあり、それに基づいて、御上のお墨付き=車検証というものを頂戴しているのに、車検も切れていない車に対して、県の条例で10月1日から乗っちゃ駄目だなんてちょっと厳し過ぎやしないか?

 自動車は歴とした個人の財産である。その財産に県が「車検があっても県の条例で運行しちゃ駄目」とはどういうことだ?ならば、車検証を大枚叩いて取得した意味がない。財産としての価値もゼロじゃないか。
 それから、この規制は条例であって国の法律ではない。だから「走行禁止」などと言ってはいるが、道路を走っている車に対して警察官が停止を求め「君の車は違反車両じゃないか!」と言って取り締まることもない。

 ではいったい誰が取り締まるのだろうか?
 そんな素朴な疑問を地元である埼玉県に問い合わせてみると、埼玉では32人の自動車監察員が路上で車両検査を実施し対応するとのことである。東京都に於いては70人の自動車監察員(Gメン)が対応するそうである。

 しかし、この条例がスタートした現在でも、粒子状物質減少装置を装着するなどして規制基準を満たす対応を講じている車は、埼玉と神奈川で半分、東京で6割、千葉では4割程度というのが現状である(対象の1都3県に登録している車両)。
 そして、これらの規制対象区域以外(他県)に登録している車の流入台数は1日平均18万台とされ、そのうちの9割の車が対応策を講じていない規制対象車なのだという。

 交通戦争と言われるほど街に溢れ入り乱れる車両軍団を、県の監察員たかが数十人で、いったいどうしようというのだろうか。
 足並みを揃え首都圏全体で抑止しようと強い決意を表した石原都知事を始め、娘の桃子ちゃんのお行儀の悪さで崩壊した土屋県政の建て直しにやる気満々の上田清司埼玉県知事等の各県知事の心構えとは裏腹に、現場での対応を任された御仁たちの心情は…?

 
 本紙も賛同はしてますから

 条例開始直前まで違反者に対する罰則適用を遅らせる「条例改正案」の是非を論議していた千葉県(堂本暁子知事)、そして「規制の周知徹底が重要である」として罰則の適用を半年間猶予することにした神奈川県(松沢成文知事)の動きでもわかるように、幾つかの課題を抱えたままのスタートとなってしまったのは明らかだ。

 規制の対象となる車に取り付ける装置が100万円前後と非常に高額であること。
 そのため対処できず、倒産・廃業・休業に追い込まれる運送業者が続出していること。
 行政側の補助金も財源に限りがあり、対象者の一部しか救済できないこと。
 装置の製造が間に合わないこと。
 国の法律と条例が入り乱れ、一般ユーザーどころか自動車販売業者や県の職員ですら満足に説明できないほど内容がややこしくなってしまっていること。
 せっかく100万円も払って装置をつけて条例(PM)をクリアーしても、国の法律(NOx)により次の車検が取れずに乗れなくなってしまう車もあること…。

 このように新車を買う以外に安堵を得ることは出来ないという状況のまま、法や条例ばかり先行し、金のない規制対象者が対応しようにも出来ないのである。
 また、大手自動車メーカーなども、率先して安価で手軽な装置を開発するべき立場にありながらやっておらず、自動車を製造し売っておきながら「その車両の軽減装置は作ってません」などと、大手自動車販売メーカーT社でさえ平然と答え、新車が売れていると浮かれている辺りもまた問題である。
 この現状下で強行に規制し罰則を科し『即座に運行禁止』を訴えることは、車の運行を生活の糧としているものに対して死ねと言っているに等しい行為だ。

 長引く不況によりただでさえ失業者が増え、自ら命を絶つ人の数が一途に増え続けている現状を踏まえれば、条例が更なる不幸の火種となることを避けるためにも、神奈川県が罰則を猶予したように国民と足並みを揃え、穏便に行っていただきたいものだ。
 条例で今すぐ規制しなくても、法律に則り、古い車は車検が取れなくなり消えていくのだから…。
 本紙も規制対象となる街宣車両を所持している為、今回は物流業者の悲痛な叫びを代弁させていただきました。大気汚染物質が健康に悪いという理由でその根源である車を規制するならば、何故タバコは容認しているのか?と、ついでに屁理屈の1つも付け加えておきますが、基本的には最初に申し上げたように進行の一途を絶たない大気汚染に歯止めを掛ける石原都知事の試みに、本紙は心から賛成しており、苦しいながらもガソリン車への買い替えなど、対処策を講じておりますので悪しからず。

 
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