真の首謀者は宮内義彦だ!

 本稿では、先月号に引き続き、本紙の良き理解者であるS氏の投稿をご紹介したい。内容は前稿同様「プロ野球再編問題」。オーナーサイドが一定の譲歩を示した結果、選手会による2度目のストは回避され、事態は終局へと向かいつつある。そして今や、多くのプロ野球ファンの興味は、花の都・仙台市を巡る「ライブドア VS 楽天」の熾烈な本拠地争い(そしてパ・リーグのプレーオフ)に移っている。さて、今回S氏が「喝!」を入れる相手とは一体誰なのか?


個人的な好き嫌いは別として、宮内氏の経営手法には悪評紛々!
 ―収集した多くの新聞や雑誌の記事を、細部に亘って分析してみた。その殆どが「プロ野球界を混乱させたのは、渡邊恒雄前巨人軍オーナーだ」と、恰もA級戦犯の如き扱いである。しかし、それは全くの誤解であり、“ナベツネ”さんは寧ろ被害者であると言ってもよい。

 赤字続きのパ・リーグ3球団(オリックス・西武・ロッテ)のオーナーに泣き付かれたナベツネさん。浪花節が大好きなこの御仁、ここで男気を出したのが間違いのもと。相手の真意を推し量ろうともせずに、いとも簡単に協力を約束してしまった。

 3人のうち真の首謀者はオリックスの宮内義彦オーナーである。堤(西武)・重光(ロッテ)の両オーナーは、宮内氏に抱き込まれたに過ぎない(宮内氏が将来的にオリックス球団を転売するという、真の狙いを見抜いてはいなかった)。

 宮内氏は「計算通り」と内心ニンマリとしたことだろう。これがプロ野球界を根底から揺るがすこととなる大騒動の発端である。このあたりの状況は「週間大衆」9月27日号が詳細に報じている。

 その後、謝罪のため讀賣本社へ足を運んだ宮内氏に対する、ナベツネさんの胸中は推して知るべしであろう。

 「文芸春秋」10月号に、「12球団オーナー経営力格付」という、大変興味深い内容の特集が組まれた。4名の評論家やジャーナリストたちによる座談会形式の記事である。

 この記事によると、セ・リーグ6球団のオーナー中でも、ナベツネさんは飛び抜けて勉強家であったという。野球協約などを1人よく勉強していたそうだ。これに反し、残り5球団のオーナーは“怠け者”揃い。ナベツネさんにぶら下がっていた。このような状況下では、当然「独裁者」にならざるを得ない。4人の評論家たちが異口同音に「彼にとって不幸な状況であった」と指摘している。この様に、独裁者は周囲が創りだすものなのであろう。

 このことは、讀賣グループ内に於いても同じ事が言える。ナベツネ氏の子分は多数存在するであろうが、その多くは保身の為“イエスマン”を通す人材で占められている。週刊誌などにナベツネさんのイメージダウンになる記事が出ているのを見て、部下達の努力不足を痛感する。

 ナベツネさんは、プロ野球よりも天下国家造りに活躍して欲しい逸材である。側近達は、勇気を持ってナベツネ氏を男にして貰いたいものだ。

 
 スト招いた宮内の責任
個人的な好き嫌いは別として、渡邊氏の能力と影響力は周知のとおり
  8月16日付「日本経済新聞」第1面が報じているが、3ヶ月前の5月10日、オリックス本社(港区)で宮内氏は、近畿日本鉄道社長=山口昌紀氏に球団経営の統合を持ち掛けている。これが両球団合併問題でプロ野球界を混乱に陥れた第一歩である。正に、球団親会社の経営トップ同士の会談でスタートしたのであるが、当初は対等のスタートだったと言える。

 スポーツチーム同士の合併はアンフェアーであり、スポーツ精神に反する。その事は今は棚に上げるとしても、合併とか統合といったものは、50対50つまりは対等でなければ意味がない。

 近鉄本社から見て、最下位の球団から合併を持ち掛けられ、20対80で吸収される形では筋が全く通らない。これは、正に「乗っ取り」に他ならない。

 2者の合併に於いて、一方が49%以下であれば、20%でも5%でも同じなのである。やがてゼロになる覚悟がありながら20%だけ残すのは気休めに過ぎない。

 それにしても、日本一の営業距離を有し、かつ歴史と伝統を誇る超有力電鉄会社たるものが、新興企業如きに子会社の球団を吸収されて、よくプライドが許したものだ。19名の取締役と5名の監査役の諸君にその点を是非とも問いただしてみたい。

 8月4日付「日刊ゲンダイ」第40ページ1面にわたる記事により、近鉄球団を有力企業「花王」が買収しようとしていたことが明らかにされた。それを宮内氏が合併という手口で横取りしてしまったのである。

 近鉄本社はオリックスとの合併を白紙に戻し、裏切った花王に謝罪せよ。そして、今一度真摯な態度で花王と交渉を始めることである。全てに於いて責任を取るにはこの方法しかない。オリックス球団との合併は暴挙そのものである。

 ストを目前にした選手会からの要求(合併の1年間凍結、新規参入を認める)を、オリックスだけが拒否し続けた。結果、日本プロ野球史上初となるストを打たれてしまった。その後も拒否の姿勢を崩さなかったのだが、2度目のストを目前に、選手会の要求項目2件の内、新規参入をあっさりと認める譲歩をしたのである。

 この経過を見ていて、オリックスのこの譲歩は、1週間早く出来ていた筈。

 宮内オリックスの我儘がなければ、プロ野球界および関係業者の損失は全く生じていなかったことは間違いない。宮内オリックスの罪は余りにも大きい。

 宮内氏は、今年4月に発足した「規制改革・民間開放推進会議」の議長に就任している。

 長年に亘って政府に対し規制緩和を求めて来た宮内氏が、プロ野球界に於いては一貫して新規参入を拒み続けている。これは明らかな矛盾である。要するに、宮内氏はご都合主義なのである。プロ野球関係者は、宮内義彦氏の戦略を知れば知る程、野球改革に関する宮内氏の存在に不安を感じるのではなかろうか。

《いかがわしさでオリックス宮内の右に出るものなし。規制緩和が持論なら自ら球界を去れ》

 これは、9月28日付「東京スポーツ」に掲載された評論家佐高信氏「毒筆啓上」の一節である。多くの“宮内義彦評”の中でも、ズバ抜けて的確な宮内評と言える。たぶん宮内氏や先代の会長=乾恒雄氏を熟知した上での論評であろう。

 宮内氏は推進会議議長としての役割を全うする為にも、佐高氏の指摘通り、プロ野球界から即刻身を引いた方がよい。同じ神戸を本拠地とするJ1の「ヴィッセル神戸」を所有する「楽天」三木谷浩史氏に後を任せればピッタリではないか。

 近鉄を吸収しても、転売を策していることは最早周囲の知るところ。ここは未練を捨てた方が男らしい。

 
 これを機会に球界の膿出せ

 巨人軍選手会の総意の現われなのか、副会長の仁志敏久選手が、9月17日付「東京スポーツ」で“1リーグ7チーム制”を提案している。これに対し、ダイエー王貞治監督も「手を上げる人は多いほどいい。他にも『オレも』とまだ出てくる可能性がある」と極めて肯定的な反応を示している。「7対7」は交流試合がかえってやり易いということのようである。

 小生の提言は、「花王が近鉄を」そして「楽天がオリックスを」各々買収せよというもの。そうすれば、仁志選手や王監督が提案する(セ)7対(パ)7の実現に繋がるばかりではなく、仙台を本拠地として名乗りを挙げている「ライブドア」も、楽天との競合が無くなる。

 以前から参入が噂されていた野村監督率いる「シダックス」も面白い。ノンプロながらチームには有力選手が揃っている。ライブドアだけがチーム作りに骨が折れるかもしれない。しかし、各球団が可能な限り協力すべきだ。

 セ・リーグの優勝チーム中日落合博満監督などは最高に立派なスポーツマンだ。有望選手を貸して貰ったらどうか―


 以上がS氏から寄せられた原稿である。読者諸兄は如何感じられただろうか。

 冒頭で述べたように「熱しやすく冷めやすい」日本のプロ野球ファンの興味は既に新規参入チームへと移っている。しかし、これを最高の機会として、プロ野球界全体の“膿”を出し切ってしまった方が良い。

 そして“消毒”の痛みとカサブタの痒みを耐え抜けば、その先には必ずや「健全なる状態への回帰」が待っている筈だ。(つづく)

 
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