「戦友」の絆
(左から)アンワール・ジェクダリク氏、本紙社主、田中光四郎先生
 本紙社主の友人で武道家の田中光四郎先生が、またまた“大殊勲”である。
 戦後復興の只中にあるアフガニスタン選手団(約60名)を、韓国釜山で開催された「釜山アジア大会」に出場させたのだ。

 戦後という事もあって、まだ同国ではスポーツに対する理解度が低く、政府からの予算も出ないため、その出場は直前まで危ぶまれていた。しかし田中氏の人脈を頼りに資金を手繰り寄せ、なんとか出場に漕ぎ着けることができたのだ。

 田中氏のアフガンでの実績については、本紙第57号で既に触れたので割愛するが、シルベスタ・スタローン主演のアクション映画「怒りのアフガン」のモデルとなった人物と言えば、判り易いかもしれない。
 その田中氏が、一肌も二肌も脱ぐには理由がある。
 というのも、今回アフガニスタン選手団長として参加したアンワル・ジェクダリク氏は、ソ連軍のアフガン侵攻時、田中氏と共に10年以上も山間部に篭り、ゲリラ兵としてソ連軍を相手に戦った「戦友」だったのだ。

 それ以前のジェクダリク氏は、高校教師を務めながら同国のレスリング・チャンピオンに輝き、モスクワ五輪へも出場する……はずだったのだが、前述の通り1979年末から始まったソ連軍のアフガン侵攻により、五輪の夢は絶たれた。
 その後、92年に五輪委員長としてスポーツ界に復帰を果たしたが、またもや夢への道を阻む敵が…。即ちタリバンによるカブール制圧である。
 イスラム原理主義を唱えるタリバンは女性解放とスポーツを敵視していた為、身の危険を感じたジェクダリク氏は家族と亡命し約6年間にわたって欧州、アジア諸国を転々としながら反タリバンを訴えた。
 そして今年、祖国へ戻り五輪委を再建して会長を務め、現在はカルザイ大統領の要請でカブール市長にも就任している。
 ジェクダリク氏は今回、アフガニスタンの大会参加資格停止を解く為、アジア五輪評議会に幾度となく働きかけたという。

 田中氏とジェクダリク氏の絆。それは、共に命を賭けて戦った男と男の堅固な友情であり、真の人類愛である。この2人の情熱が、大会参加という結実を招いたのだ。

 9月30日、京王プラザホテルで、ジェクダリク氏と田中先生を励ます会が開かれた。アレッ?確か2人は、昨日(9月29日)の釜山での開会式で、役員として入場行進していたはずだが、本当に本人達が来るのか?
 我々は疑いながらパーティー会場へ向かった。果たして紛れも無く本人達が出席していた。やはり2人の「情熱」は本物だ。
 こういうところが田中先生の魅力なのである。
 「約束は必ず守る」これぞ武道家の真骨頂。世の中には安っぽい武道家も一部見受けられるが、田中先生は真の武士道精神を持つ、筋金入りの武道家だ。
 「リーダー二人が居なくて大丈夫なんですか」と尋ねたら「明日一番でトンボ帰りです」と、当然の事のようにサラッと答えて下さった。確か先生は還暦を超えていると聞いていたが、本当にタフな方である。

 このパーティーに衆院議員の松浪健四郎先生も見えていたので話を伺ったら、ジェクダリク氏にカブール大学でレスリングを教えたのは松浪先生だったそうである。一件落着、よかったよかった。

 
 オリエの唄 
田中先生のお話は、面白く、わかりやすく、説得力がある。話だけでなく、歌もお上手です。

 ところで本紙社主(及び我々)は最近、パーティーに招待される機会が多いのだが、よく主催者の方から「今日は久間先生がお見えになる予定ですがどうしましょうか」と尋ねられる。
 恐らく、社主と久間章生先生とが同郷で、因縁浅からぬ友人という立場を察しての事だろう。

 この日も大地社の水谷代表が「たぶん今日は久間先生もお見えになると思いますが、どうしましょうか」と社主に声を掛けて来た。

 

――彼は票にならないところには来ないと思うよ。

「久間先生は良い人なんですよ」

――そう?秘書がピストルで狙われるような奴だよ。

 「先生自身はそんな人ではないんですよね」

――そう?大臣室で暴力団と記念撮影するような能天気な男だよ。

 「きっと人がいいから利用されてるんですよ」

――そう?顔がキム・ヨンサンに似てるよ。

 「……………」
 ということで会話は終った。確かに金泳三(前韓国大統領)に似ている。

 ところで、田中先生は、体術の練習を毎日欠かさない。
 しかし、仕事は全然しない。昼間はカスミを食って生きている。だから昼間は元気が無く、夕方になると元気が出てくる。
 「五時から男」の武道家である。

 歌舞伎町コマ劇場のそばに「俺の味世」という五月みどりをちょっとふっくらさせたようなママがやってる可愛い小料理屋がある。そこが先生の行きつけの店だ。
 料理が旨いのかママが美味しく見える(?)のか、いつも店内は混んでいる。
 ここで先生は、自分はあまりツマミを食べず、同席者に料理を勧める。先生はというと、焼酎をひたすらロックで飲む。ほろ酔い加減になったら、次に行く店がスナック「恵美加」ちゃんである。
 韓国人と韓国クラブの街=歌舞伎町2丁目にあって孤軍奮闘しているお店だ。
 そんな恵美加ちゃんのお店では、先生の十八番が必ず披露される。先生の故郷=福岡県田川市が舞台となった「青春の門」の主題歌「オリエの唄」である。
 十九番(十七番と呼ぶのか筆者には順番がわからない)が「恨の五百年」であろう。
 目を閉じて聞いていると泣けてくるほど素晴らしいのであるが、間奏で「いい娘紹介してっ!」のセリフが必ず入り、現実に引き戻されてしまう。
 「いい娘紹介して」は先生の専売特許であるが、たいていの場合、行く先々のお店で酔っ払って寝てしまうので、いい娘を紹介されたという話を聞いたことがない。

 カスミ(イカスミではない)と酒で生きている先生の生きがいは、武道とアフガンである。
 日本自由アフガニスタン協会の理事長でもある先生の生き様に共鳴を感じた方は、御厚志のほど宜しくお願い申し上げます。

 

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