命短かし整形せよ乙女?

 “叶姉妹”が何故か世間に受けている。
 これでもかという程の際どい衣装をまとい、世の男性の注目を浴びているのだが、姉妹の支持者の多くが女性たちであるというから不思議なものだ。
 男性が女性に対し求めるものは、飽く迄自然な美しさが基本であり、人工的?に作り上げられた容姿には興味をもつにせよ、それは一時のものである。
 男から見て“キワモノ”でも、女にとっては憧れの対象と言うのだから、女心は複雑である。

 華やかな表舞台を闊歩する叶姉妹にも、裏では俄かに信じがたい噂が飛び交っているのだが、今回はその話ではない。
 「綺麗になりたい」といった女性の願望は、ダイエットやエステのように自身を磨くものから更に飛躍してしまい、昨今ではより早く簡単で直接的な美容整形に流れているというのだ。
 しかも、多額の手術代が必要とされる美容整形だけに、ある程度収入のある女性に限られていた来院者の中に、女子高生が、しかも友達同士のグループでの姿が見られるというからなお驚きである。
 そして、この収入を得ていない未成年女子児童を積極的に迎え入れる事を営業戦略の柱とし、利益を上げている病院が存在する。
 全国都市部を中心に31もの分院・診療所を要する『神奈川美容外科クリニック』(医療法人社団博美会=徳永祐介理事長)がまさにそれである。

 言うまでもなく、この病院内で行なわれる診療の殆どが、外科手術である。健康な皮膚にメスを走らせ、異物を体内に隠し入れたと思えば、骨を削ぎ肉を切り刻む行為が“人工的な美”を得る為の代償というのだから、社会的に自立している成人女性であっても、かなりの決断と勇気が必要とされる。
 果たして経験、判断能力共に乏しい未成年者に、的確な決断が出来るのかが甚だ疑問である。
 そもそもが、15、6歳はまだ成長の過程であり、年齢を重ねていくにしたがって顔も体型も変わっていくものである。
 良識有る病院または医師であれば、いくら利益に繋がろうとも、未成年児童から美容整形の相談を受けたその時点で、手術の回避を説くはずである。
 それ故、成長過程の児童に、営利目的の為に本来必要性の無い手術を斡旋する神奈川クリニックの企業方針や、所属する医師の倫理観に目を向ければ、常識的に理解し難いものを感じるのは当然である。
 それでも手術を熱望して止まないのであれば、保護者を交えての話し合いを繰り返し行なうべきだ。その結果、保護者の同意のもとに手術が行なわれるのであれば、これは致し方無い。

 
 “早い・安い・バレない”

 ところが、未成年女子に手術を施す際、病院側が最低限クリアーすべきこの保護者同意さえも、神奈川クリニックでは事実上受けていない。
 同病院の営業常套句は、“早い、安い、バレナイ”である。
来院はしたものの手術の決断に踏み切れない女子児童に対し「親の同意確認は同意書の提出時点で認めます」と、あたかも同意書さえ提出すればその真偽は問わない、と匂わせるようなことを言うのだ。
 女子児童にとってみれば内緒で手術を受ける為の一番の問題が、これで解消されるのである。無論、親に書かせた同意書ではなく、友達に書かせた偽物で一丁上がりである。

 次のネックは手術代であるが、これも「ローン(院内割賦契約)は当病院で組んであげるし、支払いは銀行口座からの自動引き落としだから、誰にも(勿論、親にも)バレません」と、これまた一件落着である。
 未成年児童に手術をし、その代金を徴収することは神奈川クリニックにしても大きな壁であることに変わりはない。
 常識から言っても、いくら娘が美容整形を希望しているとはいえ、た易く承諾する保護者がいるとは考えにくい。
 更に未成年児童のローン契約にしても、保護者と直接の交渉を踏まえずに引き受ける信販会社などは存在しないのである。
 それでも将来的に再来院が計算できる若い患者を確保したいが為に、神奈川クリニックではあの手この手の姑息な手段を用いるようなのだ。
 この“神奈クリ商法”ともいうべき営業方法に関しては、取材を通した関係機関から信じられない証言が相次いだ。

 まずは、神奈川クリニックに勤務する外科医の大半が所属する『日本美容外科学会』(自称権威有る団体だそうです)なる任意団体に本件に対する意見を聞いたところ、当初は「倫理に欠けた行為であり、問題だ」と、怒りを露にしていたにも拘わらず、後日わざわざ連絡をよこし「営利を目的とした病院の経営方針に、口は挟めない」と、何故か態度を豹変させたのだ。
 それならばと、同学会を母体とする『社団法人日本美容医療協会』の監督官庁である厚生労働省に同じ質問をぶつけたところ、返ってきた答えは「手術の必要性は医者が判断する事で、患者が未成年であれ保護者の了解など取る義務は有りません。何故なら殆どの手術行為が緊急を要するものであり、命に関わる事だからです」と、自信たっぷりに答えてきた。
 こちらの質問の仕方がマズかったと思い、病気や大怪我でもなく、ましてや緊急な判断を必要としない美容整形手術に限っての場合で、保護者同意の必要性を再度聞き直すと「手術は手術です」と、人間味の欠片も無い官僚らしい冷たい答弁が続くだけであった。

 

 日栄も顔負けの“神奈クリ商法

 結果的に未成年であり、しかも学生の身分でありながら、病院の協力(策略)を得ることで、親にも知られることなく手術を受け、その上借金まで背負ってしまうのだが、この時既に、自身が地獄の淵に足を踏み入れた事には全く気付かないのである。
 月々の返済額が少額とはいえ、確たる収入を得ていない児童には、時には返済に窮することがあって当然である。しかし、神奈川クリニックは僅かな遅滞さえも許さないのである。

 そこに満を持して登場するのが、悪徳金融顔負けの“神奈クリ信販部”の回収部隊である。
 支払いが遅れた児童には先ず手始めに、未納金以外に遅延損害金が発生している旨を記した『催告書』を送り付ける。
 追い込みを受けた児童にしてみれば、親にバレたくない一心から、無理してでもこれに応じるのである。 それでも支払いが遅れる児童に対しては、最後の詰めの一手『第三者への債権譲渡』で回収を仕上げるのである。この債権譲渡の通知は、内容証明付郵便で児童宅に送られる。
 ここに来て初めて、娘が整形手術を受けた事と、その後の現状を保護者が知ることになるのだ。
 児童は親にバレたこと以上に、見知らぬ金融業者に整形の事実が知れ渡ったことに強いショックを受けるが、無論これ以上娘を傷つけまいとする保護者が、娘を問い詰める以前に残金の支払いに応じるのである。

 言っておくが、女子高校生が受ける美容整形手術である。その大半は10万円を超えるものではなく、残金にしたら僅か数万円といった所だ。その僅かな金を回収するが為に、患者のプライバシー共々平気で売り渡すのだ。
 医者が何を於ても守るべき『秘匿義務』と僅かな金を天秤にかけると、神奈川クリニックではやっぱり金のほうが重いらしい。
 最後に、神奈川クリニックの債権を買ったオークス(代表=福原孝司)は「神奈川クリニックからは院内割賦契約の債権を回してもらっています。ご指摘の未成年者の債権も多件有りますが全て保護者から回収しており、極めて優良な債権ばかりです」との話。
 美容整形手術を受けて発生した債権が、巷で売買されている現状をどう捉えるか。それでも貴方は綺麗になりたいですか?

 
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