暑中お見舞い申し上げます。
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 勉強すべきはお前らの方だ
病院の悪性腫瘍が
大学に転移しなければ良いが…

 【「麻酔で意識を失う直前あの子は『マーマ、マーマ』と言いました。生まれて初めて、私のことをはっきりと呼んでくれたんです。まさかそれが最後の言葉になるなんて……」
 東京都内に住むKさんは1歳3ヵ月で逝った一人娘の写真を本誌記者に見せ、声を詰まらせた。
 先天性の心臓疾患があったKさん夫婦の長女、澪花ちゃんは昨年3月12日、東京女子医大病院付属の日本心臓血圧研究所(東京都新宿区)で心臓手術を受けた。
 「我々は神の領域に入った仕事をしている」
 主治医の内科教授は手術前、そう豪語した。Kさんが質問しても「お母さんが治せるものじゃない。余計なことは考えなくていい」と遮るほどだった。
 ところが―。
「危篤状態です」
 術後に告げられたのは思いもかけない言葉だった。
 2週間以上たっても意識を取り戻さない娘を心配し、問いただそうとするKさん夫婦に、執刀した主任教授は「そんなに聞きたければ医学部に入って勉強しろ」と、ICU(集中治療室)で言い放ったという。】
―(サンデー毎日2002年7月21日号33頁)

 本紙、敬天新聞紙上に於いて、東京女子医大の医療ミス疑惑を初めて報じたのは、平成13年9月のことであった。翌10月には、本紙が取材を行なった際に同大学側が晒した醜態を含めて報じた。
 断っておくが、ここでいう医療ミス疑惑とは、前段でサンデー毎日から引用した澪花ちゃんの死亡事故でもなければ、先月28日に医師2人が逮捕された明香ちゃんの死亡事故の件でもない。

 東京女子医大教授で同大付属病院医師の某氏に纏わる手術ミス疑惑である。
 昨年夏のある日、本紙の許に1通の投書が寄せられた。内容を要約すると以下の通りだ。
 『某医師兼教授が行なった生体肝移植手術で、某医師の手が震えて血管がうまく縫合できず何度も縫い直したため、ドナーの肝臓が温まり、レシピエントが術後約1ヶ月で死亡した例があった。いずれも術後は、亡くなる日まで毎日血漿交換して引き延ばし、ミスを誤魔化した』―というものだった。
 さっそく真偽の程を確かめるべく、同大学を取材した。面会してくれた同大総務課高橋係長は「仮に事実だとすれば大変な問題」としながらも、「自分には答えられないので、適切な部署に回答させるよう伝えておく」と返事した。
 数週間待っても連絡が無いので再び同大学を訪ねてみたところ、総務部保安課の大島某が出てきて見苦しい嘘を重ね、或いは支離滅裂な暴言を繰り返した。
 曰く「高橋は3人居るが(真っ赤なウソ)アンタが役職名を言わないから、高橋係長ではなく高橋課長に聞いたら、会わないと言っている」
 曰く「とにかく誰も会わない」
 曰く「警察を呼ぶぞ!」
 筆者の「あ、そう、じゃあ呼べば?」に答えて曰く「何で俺が呼ばなきゃいけねえんだよ!てめえが呼べ!」
 まだあるが、馬鹿馬鹿しくてやってられないので詳細は割愛する(詳しく知りたい方は、昨年10月号をご覧下さい)。

 
 大切な「何か」

 ことほど左様に東京女子医大の実態はヒドイものであったが、冷静に考えてみれば、こちら側は1人だったし、別に取って喰おうという訳では無いのだから、正々堂々と会って受け答えをすれば良かった筈だ。
 あれだけの人数がいながら、たった1人の取材に大騒ぎして逃げ回り、或いは電話をたらい回しにして、大島某を使って脅してみたけど効果が無いから警察を呼ぶ、という対応は、醜態以外の何者でもない。

 「堂々と自信を持って疑惑を否定できない」ということを自ら証明したに過ぎない。
 いや、だからと言って本紙が掴んだ疑惑が真実だ、と断定しているのでは無いし、断定した事も無い。
 ただ、明確に否定できなかったところに、同大学の抱える問題の根深さが如実に現れているのではなかろうか。それは、前述の澪花ちゃんや明香ちゃんの死亡事故の根底にも、共通して流れていると言える。
 即ち杜撰な管理や指導体制、歪んだエリート意識、隠蔽を是とする秘密主義である。それらを正しく学び習得する場が大学であり、それらを生かす場が病院ではなかったか。
 創立100周年を記念して総工費300億円の新校舎兼病棟を建設するため、その募金活動に奔走するのも結構だが、医師を目指す学生たちに徹底的に指導すべき大切な「何か」を忘れていやしまいかと、今年1月号の本紙で吉岡理事長に叱咤激励したが、どうやら馬耳東風だったか。

 
 悲劇を繰り返さぬために
吉岡理事長には
本紙の忠告も馬耳東風?

 また、これらを取り巻く環境にも、全く問題が無いとは言い切れない。

 【東京女子医大病院の心臓手術中のミスで昨年3月に平柳明香ちゃん(当時12歳)を失った父親の利明さん(51)は、しばらくして警視庁に相談に行った。
 しかし、当初は取り合ってもらえなかったという。
 「葬儀を済ませていて司法解剖もできないし、物証はない。証人探しも難しい。『これでは立件できない』と言われました」(利明さん)
〜中略〜
 「病院が勝手な死因をつけた死亡診断書を出してきても受け取らず、病院が自分たちで病理解剖するといっても拒否し、警察に司法解剖してもらうべきです。火葬してしまってから警察に訴えても証拠は残っていません。また、訴えるとき、病院の近くの警察署は病院と親しい可能性がある。警視庁なり警察本部に相談するほうがいい」(医師でジャーナリストの富家孝氏)】
―(週刊朝日2002年7月19日号152頁〜153頁)

 病院と製薬会社の癒着は時折り耳にするが、もしも取り締まり当局まで骨抜きにされていたとしたら……想像するのも恐ろしい。
 これに、患者やその家族の無知・無防備が加わったとしたら、社会全体が医療ミスを惹起し、犠牲者と共に真実を闇へ葬ることにも繋がりかねない。
 国も、その他の公の機関も、そして我々国民も、これらを防ぐ手立てを考えるべきだ。
 例えば悪質なドライバーは運転免許を取り上げられるが、はて、医師免許はどうなのか?どちらも人の命に関わるのだが… (続)

 
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