未成年のリピーターに狙い
高級なホテルやマンションが建ちならぶ中、その豪華さが一際目を引く「目黒店」(当然自社ビルで〜す)
 進学や就職といった新生活のスタートは、年度の変わるこの時期に集中する。そしてその短い春の一時に荒稼ぎする業界も多い。例えば賃貸物件を扱う不動産屋や引っ越し屋などがそうだ。

 また、本紙が追及を続けているビルメン業界も、年間の利益が確定するこの時期は、それこそ血眼となって駆けずり廻っている。

 さて、こういった繁忙期を迎えている業界の中で、一際異彩を放っているのが「美容整形外科」の専門病院である。進学・就職に伴って今までの生活環境が変わる時期に、自らの“顔”“躰”迄も変えてしまう女性達が急増しているというのだ。

 最近では男性にもその傾向が強まり、某クリニックの来院者の現状を聞くとその割合が男女半々だというのだから驚かされる。今まで女性特有の願望だと思っていた「美しくなりたい」といった欲求は、もはや男女共通のものらしい。

 しかしだ、ムダ毛処理されたスベスベお肌に、クッキリ二重でパッチリお目々の日本男児なんぞ、逆に気色悪いと思うのだが…。

 兎も角、体のそこら中にピアスや刺青を入れる今時の連中には、以前ならば当然のようにあった、美容整形に対する「偏見」など、無いに等しいのが現状のようだ。だからといって望むがままに誰もが美容整形を受けられる訳ではない。そこには、当然ながら保険適用外の診療科目であるが故の高額な費用が発生する。

 人工的な“美”を求め、病気でもない体にメスを入れる事に覚悟と度胸はあっても、それだけでは儘ならないのが現実である。

 しかし、その敷居の高ささえも、安い早いがモットーの『プチ整形』なるものが流行り出したことで一気に市場が拡がり、この流行は美容整形を掲げるクリニックにとって、新規患者を増やす大きな切っ掛けとなった。

 クリニック側にすれば、利益率の低いプチ整形であれ、先ずは来院者を増やすことが大事であり、利潤追求は二の次である。何より重要なことは、その中からリピーターとなる患者をどれだけ誘い込むことが出来るかである。

 “美”への欲求は留まることは無いらしく、次から次と「追加工事」の発注があり、そこで多額の施術料を手にするというのだ。だが思惑通りに行かないのが世の常であり、未だプチ整形が廃れていないにも拘らず、業界全体への需要は伸び悩んでいる。

 その最大の理由が、「この流行を牽引しているのが女子高校生を中心とした未成年者達である」という事実だ。となると、クリニック側としてもおいそれと、それ等の患者を受け入れられない事情が出てくる。

 未成年でしかも学生となれば、いくら安いといえども支払いには不安が残る。
ならばと、少額支払いの割賦にしようにも、契約には保証人(学生の場合は親権者限定)が必要となり、出来れば内密にしたいと願う施術希望者が、手術を諦めるといった場面も多々あるようだ。

 何より、利益になるからとの理由だけで成長過程にある“子供”を手術で切り刻む行為に、違和感を覚える医師が意外と多いのだ。そもそも保険適用外の“言い値商売”が可能な美容外科の世界は、通院歴そのものから秘匿性が高く、脱税が容易ともされている。高額所得を目論んで自由診療である美容外科を選択した多くの欲深な医師達でも、最低限のモラルだけは持ち合わせているということだろう。

 
 世間の批判も素知らぬ振り

 しかし、この様に大半の医師が常識的判断の下に対象外としている患者を、積極的に受け入れているクリニックがある。

 それが、全国に34院を展開している、医療法人社団博美会『神奈川クリニック』(院長=山子大助)である。同クリニックに関しては、2年ほど前にも数回に亘って本紙面上にて糾弾したことがある。

 その内容は、マルチ商法的な勧誘から始まり、杜撰な同意書確認と無許可の自社割賦制度による手術の実行。最終的には第三者への債権譲渡で仕上げるといった悪質極まりない企業体質を、女子高生を喰いものにする「神奈クリ商法」として徹底的に叩いた。(詳細は55号1面、56号2面、60号1面の記事をご覧下さい)

 また、神奈クリ院長の山子大助が総会長として仕切った『第82回日本美容外科学会総会』の会場(横浜ロイヤルパークホテル)に、総会当日の抗議街宣を予定していた。だが、一度は許可を出した警察当局が「警備上の対応が困難であり、周辺の混乱を招きかねない」として、異例ともいうべき許可の取り下げを申し入れてきた。当局の誠意ある姿勢も鑑み、本紙も大局的見地からこの申し入れを受け入れたという経緯もあった。

 その後、取材協力者であった被害者本人とその保護者を、世間の耳目が集まり始めた渦中に留まらせることは決して得策ではないとの判断から、当該案件に対する活動を自粛していたのが今日までの流れである。

 しかし、根っからの悪党に「反省」と「自浄」を期待したのが間違いだった。今後は、これ迄とは違った視点から、不変的ともいうべき神奈クリの性悪性に斬り込んでみたい。

 さて、先に記した通り神奈クリは、全国主要都市に支院を配する業界屈指の大手である。その営業の基本方針が各院共通に「年中無休(9〜21時)診療」という事から“美容整形界のコンビニ”とも揶揄されている。

 だが、これ程の営業形態を維持するには相当数の医者が必要となる。美容整形といった性質上、患者の要望も夫々に違いがあり、術前のインフォームドコンセントや術後のケアにも時間が費やされることを考えれば、医者1人が担当できる患者は極小数に限られ、必然的に医者の在籍数を増やさざるを得なくなるのだ。

 ならば、神奈クリはどの様な手段を講じて外科医を確保しているのだろうか。

 

 時給ナンボの未熟医師が施術

先日発表された「長者番付」で総合9位にランクインした、神奈クリ院長=山子大助氏。美容整形ってホント儲かるんだね。
 本紙の手許に、「雇用契約書」なる、神奈クリが作成したと見られる小冊がある。その内容とは、神奈川クリニック院長の山子大助を雇用者とし《賃金・勤務時間・解雇・懲戒》果ては医療過誤による損害責任に至るまで、詳細な内容の条文が記されている。

 そして、この雇用契約書で何より興味深い点が、山子(雇用者)と被雇用者とで交わされた契約が時給制賃金によるものだった点である。所謂、世間一般でいうパートやアルバイトといった扱いであるが、このことを以って、神奈クリがバイトの医師を掻き集めて頭数を揃えているとは一概には言えない。

 しかし、美容整形を専門とする医師には自らが開業する者もおり、人材的には不足の状態であろう。況してや、腕に覚えがある医師を専属確保するとなれば、それが至難であることは間違いない。

 こういった現状を察すれば、全国展開している支院を運営するにあたり、専門外も含めた相当数のバイト医師に結局は頼らざるを得ないという実情が窺い知れる。

 だが、よく耳にするところの、貧乏研修医が夜間の当直勤務で小遣い稼ぎをするのと、神奈クリのバイト医師では、その置かれた立場は全くといって異なる。

 この契約書に記されている被雇用者の勤務時間を見ると、午前9時から午後9時迄と定められており、正業の片手間に行なうバイトとは決して思えない。専属並の勤務を課せられながらその身分は飽く迄もバイト扱いである。

 即ち、正式な勤務医として病院にも属さず、時間給のバイト身分で甘んじている半端者の医師が神奈クリに存在している事は事実であり、最早、何を言わんとするかは読者諸氏も察しが付くだろう。

 本紙面上で医師の善し悪しを語るつもりはないが、同じ外科医であっても疾患を扱う医師と美容整形の医師とでは、住む世界が大きく異なる。

 ミリ単位で正確にメスを扱う外科医は、修錬を積んだ職人とも言える。だが、患者によって異なる美意識を手術によって具現化する美容整形は、経験もさることながら美意識に秀でた一種の才能も必要とされる。バイトの身分に甘んじているような医師に、患者の要望を叶えるだけの腕と才能があるか甚だ疑問である。

 さて、神奈クリの現状を改めて見ると、正勤務医不足をバイトで補っても年中無休の営業方針を貫くのはやはり難しいらしい。

 そこで、診療が完全予約制である事を逆手にとり、患者の都合を無視し、特定の曜日に診療と手術を集中させることで急場を凌いでいる地方支院もあるというから呆れてしまう。多少なりとも不安を持って手術に臨んでいる患者も、まさか“やっつけ仕事”並に大量処理されているとは夢にも思わないだろう。

 全く、美しくなるのも大変なご時世である。
(つづく)

 
トップページ教育・医療・福祉関連一覧
©2005 敬天新聞社
info@keiten.net