談合都市の異名を持つ広島県呉市 公共工事を差配する小村和年市長

(敬天新聞5月号)


港湾都市広島県呉市の実態とは

古くは旧帝国海軍の拠点であり、かの戦艦大和が建造された地。それが広島県呉市である。現在の市長は二期目であり、今秋予定されている市長選にも出馬意欲を見せている小村和年である。

呉市は、瀬戸内海に面した港湾都市であり、風光明媚な穏やかな土地柄だ。その一方、周辺自治体からは「談合都市」と揶揄されるほど、閉鎖的なイメージをもたれている模様だ。

裏を返せば、郷土に根付く仲間意識が強いともいえるが、度が過ぎれば縁故重視や隠蔽体質、終いには排外的な偏重意識が蔓延する恐れもある。最も顕著な事例で、小村和年市長の前任者であった小笠原臣也前市長が、呉市の消防士や役所職員の不正採用事件で逮捕(=地方公務員法違反)され、懲役刑(懲役一年六月、執行猶予三年)を下された事件がある。

同事件での逮捕者は当時の助役など七名にのぼり、内六名が有罪(猶予判決)となった。同事件の背景には、採用は地元受験者を優先する、地元有力者や議員らの口利きが罷り通る、 上意下達には無批判に従う、といった仲間意識を履き違えた空気で覆われている現状があった。

実際、事件発覚当初から、呉市の市民感情として、「口利きは犯罪でもないのに」とか「採用された者が肩身が狭く気の毒だ」「市長は兎も角、助役以下は指示を受けて従っただけなのに可哀相」等々、試験結果の改ざんといった犯罪行為を棚上げした、同情の声も少なくなかったというのだから始末におえない。

事件が公になった際、現職の小笠原臣也を退け新市長となっていた小村和年は、職員の不正採用を決定したのは前市長だが、実際に採用辞令を交付したのは自分であると、何ともトンチンカンな理由で自らの減給処分を発表して火消しに走った。

更に、広島県や周辺自治体へのポーズなのか、職員採用での口利きや仲介などを禁止した条例を態々制定するなど、口利きが横行していた事実を暗に認めるような、恥ずかしい縛りを設けもした。条例化せねば意識改革が出来ないほど、政・官・業、そして市民さえもが情実がらみの馴れ合い市政に浸かっていた証左と言える。


契約解除は英断であったのか?

さて、前市長以下、関係幹部が刑事処分を受ける汚点を残した後、小村和年市長の現体制となって呉市は変わったのか。

残念ながら、今後は外に漏れないようにと、逆の意味で更なる内向きの結束を強めることになった。小村和年市長が市長就任から四年目、任期満了による市長選を目前に控えた平成二十一年六月、呉市が他の自治体とは異なる、異質な集団であることを、またもや世間に知らしめる事件を起した。

呉市が同市苗代町で進めていた『苗代工業団地二期造成工事』(事業費約五億円)にて、約二年あった工期を既に半分以上経過していた時点で「工期内に完成する見込みがない」とした理由で、請負業者であった桜美建設に契約解除の決定を下したのである。

当時の桜美建設は「呉市がいう工事遅れの指摘は間違いだ。工期内には完成できる」と、契約解除の撤回を求めたが、決定は覆ることはなく現場からの撤収を余儀なくされたのである。傍から見れば、契約を履行せずに工事を遅延させた桜美建設に対し、呉市が苦渋の選択として、契約解除に踏み切ったと考えられる。

しかし、其処には多くの疑問が生じるのだ。そもそも、同工事の請負業者の選定は、公募型指名競争入札を経て決定したものだ。当然、桜美建設はAランクの指名登録業者として、資格ありの立場から入札に参加し落札した。

その後、議会承認議決をもって契約が締結されたのである。本工事は、余所者業者が入札に割って入り、掻き回した訳ではない。呉市を地盤に数十年間も公共工事に携わってきた桜美建設が、通常の流れで受注した案件に過ぎないのである。

本来なら、契約中途で解除を決断せねばならない事態など、発生する余地すらないのだ。しかも、公共工事に限っては役所と議会そして業者が一体となることで、排外的な「談合都市」を形成してきたと言われる呉市である以上、混乱が生じることは不可解としかいえない。不可解なことが現実となったその原因は、桜美建設が本工事を受注したことにあったとされている。


予期せぬ落札が招いた悲劇とは

そもそも、本工事は談合によって受注業者が決められていたという。呉市の最大手とされる増岡組(呉市中央=増岡真一社長)が、入札予定業者に根回しを済ませ自社落札で話は付いていたと。  しかし、桜美建設も入札意志があることを見落としていたことから、結果、独自積算で弾き出した金額を電子入札で応札した桜美建設が落札したというのだ。

これが、今でも呉市にて実しやかに囁かれている裏事情だ。果たして、桜美建設抜きで談合が成立していたのか、当初から鼻薬をきかされていれば談合に参加していたのか、今となっては確かめようもない。

しかし、増岡組及び呉市にとって桜美建設の落札が想定外であった事は、後の不可解な契約解除に至った事から明らかだといえる。落札後、程なくして桜美建設の苦悩が始まる。その最たるものが、前払保障を得られなかったことである。

通常、事業費の四割まで可能とする前払い金を得る為には、民間保障事業会社の前払い保障が必要となる。但し、公共工事前払金保障の事業会社は全国で三社しかなく、広島県の業者は「西日本建設業保障」が唯一の窓口になっている。

因みに、民間株式会社を名乗ってはいるが、事業を三社で独占する旧建設省時代からの天下り先である。桜美建設は、過去数十年の事業期間にて、幾度となく同社からの保障を受けて、問題なく公共事業に携わってきた。

当然、積み重ねてきた信用は揺るぎないものだ。しかし、本工事の保障に限っては門前払いを食らうこととなった。

呉市が認定するAランクの指名登録業者であり、呉市との工事契約書を交わし、議会承認まで得たにも拘らず、前払いの保障は出来ないとされたのだ。  通常なら、施工能力を十分に満たしているのだから、呉市が掛け合ってでも保障を取り付けるべきなのだが、その素振りさえも見せなかったという。

余りに整合性に欠く扱いであったことから、自主的に辞退させようとした呉市が西日本建設業保障に圧力をかけ、桜美建設を兵糧攻めにしたとの噂が広まったという。これを決定的な妨害だとすれば、他にも大小の嫌がらせ等を呉市から被ったらしい。

それでも、資金の自己工面と長年培った信用を糧に、多くの協力者と共に工事を計画通りに進めたというが、業を煮やした呉市は最終手段として契約解除に踏み切ったと思われる。斯様な、執拗ともとれる行動の裏には、増岡組から落札を前提に小村和年市長へ五千万円の金銭授受があったからなどと、出所不明の陰口が広まった。


注目の行政訴訟は広島高裁へと

さて、桜美建設を排除したからには新たな施工業者を決めなければならない。呉市は早速、残工事として新たに発注した。落札業者は計画通り(?)増岡組となった。ここで呉市は、問題というか厄介なことに直面する事になる。先の契約解除の理由が、工事が進んでいないことを挙げていたからには、費用と工期を整合しなければ理屈に合わなくなる。

どうにか辻褄を合わせ発注したものの、工期の半分を費やして進ちょく率が一割に満たないとされていた工事が、準備期間を含め僅か十ヶ月程で完了してしまったのである。

なんと、桜美建設が、工事進ちょく率は五割を超えており、残り九ヶ月の工期で完了できるとした言い分を、図らずも後を受けた増岡組が証明してしまったことになる。出来の悪い絵図の見本のようなものだ。兎に角、不当な扱いを受けたとして、桜美建設は呉市と小村市長を相手取り訴訟を起こし、審議は高裁へと移ったという。今後とも呉市は要注目である。

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