二度の入札中止にもめげない呉市 新庁舎建設は小村和年市長の悲願

(敬天新聞8月号)


死体遺棄事件で揺る広島県呉市

広島県呉市の死体遺棄事件の捜査が進んでいる。当初、自首した十六歳少女の他に未成年男女五人を含む六名が逮捕され、事件は七名による集 団暴行の末の殺人遺棄事件へと繋がる模様だ。

事件前後の経緯などが徐々に明らかとなるにつれ、胸糞悪さが増していく事件だ。事件現場とな った呉市には多くの報道陣が押し寄せていることだろう。

それに併せ、遺体が遺棄された現場である同市灰ケ峰には、罰当たりな興味本位の野次馬が見学と称し山中へと足を踏み入れているともいう。

突然降って湧いたかの事件で、全国の注目を浴びることとなった呉市。全くの不可抗力ではあるが、出来れば注目されたくないといった事情を呉市行政側は抱えている。

現在呉市は、小村和年市長の執念とも言うべき新庁舎建設を巡って、混乱に拍車がかかっている状況なのだ。そもそも、新庁舎建設工事の入札は、本年二月に予定価格百二十三億六千万円で実施された。

当然、落札業者が決定し計画通りに進むものと誰もが思っていた。しか し、蓋を開ければ入札を予定していた建設業者が直前になって全て辞退したことで中止に追いやられたのである。

この時、入札参加を予定しながらも辞退したのは、非公開ではあるが大成建設・清水建設・鹿島建設・戸田建設といった、大手ゼネコンであったことが判明している。


ゼネコン各社辞退の本当の訳

当時、予算が合わないといった辞退業者全てに共通した辞退理由を鵜呑みには出来なかった。落札は大成建設が率いる五洋建設と地元呉市の業者、増岡組とのJVだと言われていた。

しかし、余りにもあからさまな談合であったが為に、事後発覚を恐れた大成建設が早々に辞退したことで、他も右に倣ったというのが真相だと地元では言われている。

当紙の見解も一緒である。名立たるゼネコンが、揃いも揃って入札直前になって予算積算の読み違いなど起こすはずなどない。

百億円を超える公共事業、しかも自治体の顔とも言うべき庁舎建設工事を受注するが為に、それぞれが本社事案として設計書を入手し積算を重ねての入札参加を決めていたはずだ。

それが直前になって辞退するということは、算数すら出来ない能力不足を世間に吐露するに等しいことだ。恥を掻いてでも辞退せざるを得なかった理由があるはずなのだ。

ただし、小村和年市長を筆頭に新庁舎建設に前のめりに賛成している市議等と、それに阿る呉市は直ちに予算を増額して二回目の入札を決定した。

仕切り直しとなった入札は五月に三億五千万円上積みされて実施された。ところが、またしても前回同様の理由で入札は中止となった。

一回目の入札で談合発覚を恐れて手を引いたとされた大成建設は、二回目には参加意思すら示さなかった模様だ。尤も、その大成建設の後釜として鹿島建設が落札する運びで調整が進んでいたというが、やはり直前で尻込みしたという。

考えれば尤もな話だ。一回目の入札以前に談合調整が進んでいたとするなら、既に幾ばくかの金が動いていたと思われる。総事業費百五十億円の三%にあたる四億数千万円が、政官業を跨いで飛び交ったという話も聞こえていた。それを土台とした談合の仕切り直しなど簡単に調整がつくものではない。

何しろ受注業者が、大方出来上がった談合の全てを飲み込むことが落札の条件となるわけだから、さしもの鹿島建設とて二の足を踏むに至った のも分からなくはない。

さて、いち地方都市でしかない呉市で発生した二度の入札辞退。これが大手ゼネコンが本社を構える東京で起きたのであれば、建設業界は大問題を抱えることになり、マスコミも黙ってはいまい。

入札が適正に行われたのか、予定価格は適正であったのか、何より発注者の不手際は糾弾の対象となり、呉市と同様に易々と予定価格を上積みして再入札を強行しようものなら、徹底的に叩かれるであろう。


実弾で脅された建設会社は何処

加えて、呉市では入札辞退騒動の渦中であった五月に、市内建設会社事務所の駐車場にて複数の車の窓ガラスが割られ、うち一台の被害車両の内から実弾五個と工事に絡む挨拶料の要求が記された脅迫文書が発見されるといった事件があったが、いまだ未解決のままだ。

解せないのは、被害にあった建設会社が公にされていないことだ。実弾があるということは、それを発射する拳銃もあるぞという意味だろう。脅迫内容からして、次は発砲するという威嚇であることは明白だ。

現場付近の住民にとっては、身の安全を脅かす重大な事件であり、本来ならば現場を速やかに公表し注意喚起を行うべきである。しかし、脅された建設会社に配慮してなのか現場の特定は秘匿されている。

多分、脅された側にも脅される理由があったのだろう。身に覚えのないことで車両を壊され脅されたというのなら、暴力団の不当要求には断固として応じないと声明を出すべきであり、周辺地域に図らずとも不安を与えたことには先ずは陳謝するべきである。

警察捜査にも影響を与えることが出来るとしたなら、余程の力とコネがあるのだろう。因みに、呉市内に営業所や出張所を置いているゼネコンは鹿島・清水・五洋といったところで、いずれも新庁舎建設工事の入札辞退組である。

何れにせよ、同事件の特別な配慮も含めゼネコンの不可解な連続辞退、発注者の恥知らずな公金の大盤振る舞いといったことが罷り通るのも、呉市が閉鎖的なムラ社会であることの証左だといえよう。


入札強行で三度目の正直なるか

ところで、二度も入札を袖にされた呉市は全く懲りなかった。新庁舎建設計画再考の声が、賛成派であった市議会や市民からも挙がるなか、更に九億六千万円を上積みして、結果百三十六億八千百五十万円で三度目の入札実施を決定したのだ。

当初の予定価格から約十三億円増額され、総事業費は百六十億円に膨れ上がった。

また、それに平行して十一月に市長任期を終える小村和年市長は、定例議会の一般質問に応える形で三期目を目指すと、事実上の出馬意思を答弁している。

その理由が「新庁舎建設問題の解決は責任もって対応したい」と、自身の市長生命とリンクさせた発言をしていた。

本音を探れば、新庁舎建設が第一義であって、その為には現役市長であることが大事といったところか。

八月八日〜九日に予定されている入札が成立すれば、自身の市長再選も余勢を駆って難なく当選するかもしれない。否、入札さえ成立してしまえば市長である必要は無くなるともいえる。

実際、小村和年市長は呉商工会議所の元会頭である奥原征一郎氏と、その従弟にあたる広島県議の奥原信也氏の操り人形とも言われており、入札成立をもって御役御免となるとも見られている。

問題は、三度目の入札も不調に終った場合だ。そうなると、小村和年市長の責任が問われることは明らかだ。当然、その後に控える市長選挙は惨敗する可能性が大だ。

新庁舎建設は棚上げ、市長再任もダメともなれば小村和年を担いで余禄を得ようとする輩共の思惑は全て水泡に帰す。件の死体遺棄事件の騒動は当分の間続くであろう。

これまでにない注目を浴びての三度目の入札は、小村和年市長にとって最大の山場となる。

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