配置薬老舗、富士薬品の今 セイムスを牛耳る新任専務

(敬天新聞9月号)

配置薬の富士薬品は古びた看板

古くから『配置薬の富士薬品』といわれた原点回帰を狙ってのことか、株式会社富士薬品(代表=高柳昌幸)が配置薬事業のテレビコマーシャルを長期間継続している。

元プロテニスプレイヤーでタレントの松岡修造が「元気いっぱい富士薬品」と連呼する、あのコマーシャルだ。尤も、配置薬事業収益の何倍も稼ぎ出すドラッグストア事業(セイムス)こそが、富士薬品の基幹事業であることに変わりはない。

その証左として、富士薬品の経営体制を見れば一目瞭然である。去る六月二十一日開催の同社「第六十期定時株主総会及び取締役会」において選任された役員が現体制である。

注目すべきは、平取の田中篤が配置薬事業本部長である一方、実質ナンバーツーの専務取締役がドラッグストア事業本部長の要職に就いていることだ。

既に退職(社を追われた?)している元取締役の楠匡志は、平取のドラッグストア事業部長でしかなかったが、現在は本部長職に格上げされた上に専務取締役が就いている。

世間体では配置薬事業を前面に押し出してはいるが、実際はドラッグストア事業に並々ならぬ意欲を見せている。その基幹事業を担っているのが、佐々木桂一専務取締役である。

佐々木専務は、今年二月に富士薬品に入社した謂わば外様の人物だ。ただし、実質ナンバーツーで迎えられただけあって、その経歴は中々のものだ。佐々木専務は昭和六十三年、株式会社ジェーソンに入社する。千葉県柏市に本社を置くディスカウントストアをチェーン展開する企業である。

同氏は平成十五年には同社代表となり、その四年後に大阪証券取引所ヘラクレスに上場(現、東証ジャスダック)を果たした。ただし、同社は同族経営ということもあり、手腕を買われての代表というだけで実行支配する立場ではなかった。

それでも、上場時には一%弱の株式を持たされており、三千万弱の上場益は得た模様だ。結果、役目を終えたということなのか、上場後まもなくして同社を去った。

次なる新天地は、又してもディスカウントストアを運営する、大黒天物産株式会社(岡山県倉敷市)であった。また同族経営という点でも一緒であった。

平成二十年六月に同社に入社した後、その数ヵ月後には取締役副社長兼経理部長という、企業中枢の役職に就く。そして平成二十四年六月、同社を東証二部から一部へと押し上げるという成果を残した。ただし又しても翌年の平成二十五年一月に、同社を去るのである。

都合による」ものとした。まるで、上場請負人のプロといった様である。斯くして同年二月に富士薬品に入社(招聘された?)したのである。 面白いのは、今度の職場も同族企業の体質をもった富士薬品というとこだ。この手の組織体制で動くのが、余程得意であると見受けられる。

さて、佐々木専務に与えられた権限は相当の広範囲に及んでいる模様だ。本社の専務である他、株式会社西日本セイムス(愛媛県宇和島市)、同東海セイムス(三重県松阪市)といったドラッグストア運営会社の代表に就き、他の主要関連企業の役員をも兼務している。

大きな権限を与えられ、自身も高度な流通の経営ノウハウを備えている自負もあるのだろう。ドラッグストア業界紙での最近のインタビューには「三年後に十%成長が可能な企業体質をつくる」と、自信満々に宣言している。

まるで、口にはせずとも三年後には此れまで渡り歩いてきた企業同様に、上場まで辿り着かせる自信の程を伺える発言だ。しかしである。佐々木専務を招聘した富士薬品に、そもそも上場の意思があるかというと、現時点では全く無いという他ない。

佐々木専務にしても、今回は上場ありきの仕事ではないようだ。何故なら、上場など口に出来る状況ではないことは、富士薬品の経営陣はおろか、末端の社員ですら自覚していることだからだ。

その理由は、当紙の「敬天ブログ」を読めば一目瞭然である。最近も、お盆期間に「富士薬品、疑惑資料蔵出し編」と題し、富士薬品が過去に嵌った出鱈目な不動産取引の実態を五回に亘って暴いた。

この件に決着が付くことは絶対ないと断言する。寧ろ、当紙の報道が後押しとなり富士薬品の混迷は更に続くものとなる。奇怪な不動産取引に介在した者の内、誰か一人でも逮捕される事態ともなれば、その時点で富士薬品は崩壊する恐れすらある。

前社長が残した負債とはいえ、それだけ大きな問題を今も富士薬品は抱え込み、長らく引き摺っているのだ。上場など口が裂けても言えない理由が此れである。

本来為らば、富士薬品の将来展望を語るのであれば、佐々木専務も積極的に過去の闇に向き合うべきである。外様とはいえ、それがナンバーツーの役目ではないか。

しかし、そんなことは我関せずといった具合に、ドラッグストア事業の成長にしか興味がないようである。ドラッグストアの事業業績が幾ら伸びようと、本体が潰れてしまえば全く意味も無いことなど十分承知しているはずだ。

もしかすると、佐々木専務には別の使命というか目的があるのだろうか。現在、富士薬品内で囁かれているのは、事業部ごとの解体・再編の噂だという。堅調な成長が見込まれるドラッグストア事業を、共倒れする前に切り離そうと画策し、その現場実行者が佐々木専務だとしたら、妙に納得がいくのも事実だ。

実際、富士薬品のセイムスを手中にしたい、と考える大手流通企業は少なくない。礼を尽くし佐々木専務を向かい入れたのは、高柳昌幸社長とも言われている。

果たして、佐々木専務は富士薬品成長の切り札なのか、それとも獅子身中の虫なのか、当面は騒動の種は尽きそうもない。


覇気が伝わってこない高柳昌幸社長

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