デート商法融資担当のスルガ銀行 松尾眞一に加担するスルガの大罪
(敬天新聞10月号)
東京地裁で公判中のデート商法裁判。原告女性はスルガ銀行とオカベ、フロンティアの澤田俊之個人に対し、売買代金返還等請求事件を提訴した。
この裁判で最も注目すべき点は、松尾眞一グループの御用達銀行「スルガ銀行」(岡野光喜社長)が、デート商法の融資担当として、大きな役割を担っている現実が暴かれたことに尽きる。
本年七月三日、裁判の一回目の口頭弁論では、オカベの代理人である弁護士法人E-ジャスティス=蓮見和也弁護士は、対決姿勢を示す原告請求を棄却するとしていたが、二回目となる八月二十八日には争う姿勢から一転して、和解を持ちかけている。
同様に「原告に対し責任を負うようなことはしていない。今後は弁護士を選任する」と、勇ましい態度で裁判に臨んでいた澤田も、オカベの和解提案に追従し、弁護士も付けないと述べた。
尤も、オカベの代理人である蓮見弁護士が澤田の実質的弁護を担っていると考える。一方、スルガの弁護士は「通常の融資で全く責任はない」と強気の姿勢を崩していない。
被告側の訴訟対応にズレがあるが、裁判長が「オカベから和解提案が出たが、本事案は特殊なケースであり被告側意見を調整する必要がある」として、次回を準備室での調整を促した。
結果、三回目は準備室、その次も準備室となり、既に具体的な和解条件の提示が原告に示されたと考える。当紙との訴訟では、蓮見弁護士自らも原告となり全面対決の強気な姿勢であるが、被告の立場では争うことなく白旗を振る節操のなさだ。
この裁判決着が和解となれば、弱気なオカベと澤田にスルガが渋々同調したと、加え原告に一定の配慮をしたと、スルガの体面は傷付くことなく保たれる。
ただし、これが予定調和でしかないことが、訴訟原因の詳細を知ることで明らかになっている。
「スルガ銀行、岡野光喜社長」
さて、裁判に至るまでの経緯だが、原告は昨年十月に大手婚活サイトに登録。程なくして自称コンサルタントだとする澤田俊之がアプローチ。サイトを通じてメールをやり取りした後、十一月末に女性が職業(某有名企業社員)を明かした途端に(聞き出した?)、携帯番号を交換する。
因みに、澤田は三十二才でサイトに登録していたが、実際は二十八才。四十才前後の経済的・社会的に安定自立した独身女性をターゲットにするために、見合った年齢に詐称したのであろう。
約十日後に、初めて喫茶店で会う。数日後の夜には食事。また数日後にはランチ。そして、初めて会ってから四回目のデート?で、フロンティアの社員であることを初めて明かし、投資マンションの購入を原告に勧める。
「山手のマンションは値下がりしない、サブリース(又貸)すれば月額二万円の負担で済む、千五百から千八百万円のマンションがねらい目だ」等々、不確定且つ断定的判断を述べるが、そもそも営業行為を隠して接触したことからしてアウト。
ただし原告は、嫌われたくない一心で「興味がある。話を聞きたい」と答えてしまう。ここ迄で、私も(俺も)同じ経験があるという被害者は多いだろう。 怪しいと離れるか、嵌められるかの分かれ目である。
ここからは一気呵成に進む。翌日にランチに誘われたが、免許証のコピーをとられる。次の日には「二千五百万円のマンション(オカベ売主)を押さえた」と連絡し、保険証のコピーをファックスしてくれと言われる。
興味があると漏らしてから僅か二日で物件を選定する早業だ。オカベが売主となる物件が端から準備されていたことは言うまでもない。
後に判明したが、送信先番号はフロンティアではなくカノーバホールディングスだった。両社が一体となりオカベの物件を捌いていた事が証明される。
原告は、当初の話より一千万円も高い物件であること、余にも急に話が進むので、購入を考え直したいと澤田に言うが「既に会社が動いているから今更止められない。信じてくれと」いう。
澤田はここで「会社同僚の主催パーティーがあるから同伴して欲しい」と誘い、嬉しさの余りいいなりとなる。それからの数日は、給与証明や納税証明証など、いわれるがままに手渡す。
パーティー出席のカップルは殆どが敬語で会話しており、今に思うと顧客を繋ぎとめる会社業務だったと思えたという。パーティー翌日、新宿エルタワービル内の喫茶店で契約。ここでオカベの社員と初めて会う。
オカベは宅建業者であるが、事務所を使用せず喫茶店で契約。当日は祝日の振替休日だった。興味があるといった日から九日後にはオカベと不動産売買契約を結び、十万円の手付け金を現金で支払う。
それにしても、澤田とオカベの見事な連係プレイである。澤田はフロンティア社員を名乗っているものの、実務はカノーバ社で行っていた。
因みに、この二ヶ月前には松尾眞一が代表を務めるマンハッタンインベストメントの係長として、同僚である渡邊恭大の披露宴に参加している。澤田が松尾グループを渡り歩いているというより、状況ごとに所属先を使い分けしていたとも考えられる。
売買契約終了後、オカベ社員と澤田と原告がそろって移動。移動先は同ビル内のスルガ銀行新宿支店。先ずは司法書士法人トライの社員指示のもと、所有権移転登記手続き書類を作成。
終了後にスルガ銀行の担当者と入れ替わり、金銭消費貸借契約を作成。同時に、団体信用生命保険の加入手続きが必要であったが、原告の過去の疾病が完治したとの証明書類の不備で、契約は未完了。
本来ならば、本契約も保留とするところだが、なぜか後日提出でオーケーとなる。契約は、物件価格二千五百七十万円。但し、手付け金十万円とオカベの報酬二百五十万円を控除した残り、二千三百十万円。毎月約九万六千円を二十五年二月から五十九年十二月まで、利率は年三,五五〇パーセント。
契約から翌々日、原告は我にかえって澤田に「私を騙したのではないか」と、問い詰めた。澤田は「自分が信用できないのか、解約したいと言われたら会社をクビになる。どうか騒がないでくれ」と、脅しと泣きを入れた。
目が覚めた原告は、弁護士に相談。弁護士はすぐに動き、クーリングオフの適用期間内にオカベに対し契約無効を通知する。クーリングオフの適用を無視できないからか、オカベからは反論すらなかった。しかし、結果としては本訴となる。
契約無効となった事情はスルガとて全て知っている。ただし、契約解除で損金を計上するにはいかない。加え、融資即引き上げでは後々拙速融資だったと問題となるからだ。
常識からして、二千数百万円も融資するのに、九日間で融資審査を完了し実行したことを正当化するには土台無理がある。百万円の中古車を銀行ローンで買うにしたって、もっと日数も手間もかかる。
またスルガの担当者は、原告に「物件をサブリースすれば毎月二万円程度の負担で済む」と、伝えたという。(スルガは同発言を答弁書で否定)もし悪徳商法レベルの詭弁を用いたとするなら、スルガは処分を免れない、故に発言を否定したのであろう。
スルガとしては、責任はないが協力はするというのが落としどころか。尤も、スルガも和解決着しかないとするのが本音で、もし和解成立しなければ、追い込まれるのはスルガである。
契約がクーリングオフ適用で白紙になる以上、スルガが単独で原告を追い詰める訳にはいかない。逆に、デタラメな物件評価と杜撰な融資判断を世間に晒すだけだ。
そもそも、不動産売買契約が通販並のクーリングオフの適用を受けるという、杜撰な契約だったのだ。その事実を受けて尚、原告に請求できるものならやってみればいい。
世間や預金者はもとより金融庁が黙っていないだろうが。天の配剤というべきか、スルガ銀行は今、金融庁検査の対象となっている。
「スルガ銀行本店(静岡県沼津市)」