呉市新庁舎建設は五洋建設が受注 暴力市民を徹底監視の要塞市役所

(敬天新聞11月号)


五洋建設が実質随意契約で落札

広島県呉市、小村和年市長の悲願が漸く叶った。呉市新庁舎建設は、過去二度の入札不成立を経て、今年八月に実施された三度目となる入札で、五洋建設中国支店呉事務所が落札した。

ただし、応札したのは落札した五洋建設のみで、入札予定の錢高組広島支店と大成建設中国支店の二者は、いずれも辞退した。入札が一般競争方式とはいうものの、競争原理が機能しない事実上の随意契約という不透明な決着となった。

本来ならば、応札一者の場合は不成立としていた呉市であったが、四月に制度を態々変更し落札を可能にしたのだ。呉市は今回の結果を予測していたかのように、事前準備を整え万全の体制で入札に臨んでいたといえる。因みに落札額は百三十三億三千五百万円で、予定価格に対する落札率は九十七・五%だった。

予定価格については、初回より十三億円以上も引き上げられ、総事業費は百五十億円を超えることになった。当紙としては、この入札経緯を見る限り、九月の市議会定例会における契約締結議案の議会審議は紛糾するだろうと考えていた。

実際、新庁舎建設の是非を問う呉市民の声が日増しに大きくなっていたのも確かであり、賛成派の市議も無視できない状況であった。

しかし、本契約締結案(議第八十九号)は賛成多数であっさりと通過し、五洋建設株式会社と「呉市新庁舎建設工事」の請負契約は正式に締結となった。

小村和年市長は「度重なる入札中止で市民には迷惑をかけた。 防災拠点機能に優れた庁舎を一日も早く完成させたい」と、事挙げなコメントをしているが、本音は「してやったり」といったところか。

既に任期満了に伴う次期市長選(十一月三日告示、十日投開票)に、三選を目指して無所属で立候補する意向を表明している小村和年市長だが、今回の入札決定を受け仕事欲しさに群がるであろう建設業者や物品業者、既に幾ばくかの調整金を得たと噂される政・官・業の薄汚い連中の支援を受け、当選は鉄板だということらしい。

これから入札決定を覆すことは容易ではないが、少なくとも入札経緯に疑義を訴える強力な対抗馬でも現れるのなら、そこそこ見応えのある選挙戦になるのだろうが。

呉市では存在感の薄い共産党は早々と候補の擁立を断念しており、選挙戦は無風のまま終る予感だ。だからといって、小村市長に死角が全くないとはいえない。

現在決まっていることは、二年後の平成二十七年末に五洋建設が新庁舎を完成させるということのみだ。建ててしまえば終わりの建設は、金額は莫大だが所詮は一時のシノギでしかない。

本当の旨味は巨大な箱物が完成した後にある。庁舎が存在する限り業務が発生する保守・管理・維持等々、所謂ビルメンテナンス業者は虎視眈々と受注を見据えているに違いない。だからといって完成までじっと待っている訳ではない。

附帯設備等の物品業者は既に動き始めており、中には小村市長とその周辺者とで「発注・受注の話がついている」と思われる事案が幾つか出てきている。特定業者に便宜を図り儲けさせようとすれば、おのずと発注仕様が膨れるものだ。

こういったことが頻繁に露呈すれば、その度に小村市長は議会や市民から追及を受け、説明に追われることになる。


呉市民を大量カメラで徹底監視

いい例が新庁舎に設置する「防犯カメラ」の計画内容だ。市は「窓口の職員らが被害を受ける行政への暴力の増加を考慮し、死角をつくらないようにした結果、この台数になった」と説明。その台数、何と二百四十九台だという。

九階建ての広い庁舎とはいえ、この台数が実際に設置されれば市の説明通り死角は皆無となるだろう。カメラの設置場所については窓口や出入り口といった通常考え付く場所の他には、職員が市民から要望や意見を聞く相談室にも設置する計画だという。

新庁舎には様々な用途の相談室を二十二室設けるようだが、その全てにカメラを設置するらしい。呉市民は新庁舎に足を踏み入れた瞬間から、一挙手一投足をカメラに晒されることになる。

しかもその理由が、対行政暴力の防犯だという。市の言い分からしたら、呉市民は相当に暴力的なのか。或いは、市民の怒りを買う理由を自覚しているから過分に怯えているのだろうか。

いずれにせよ、市民からは死角のない監視カメラでしかないといえよう。一方、職員の立場からは身の安全を守る要塞市役所ということになる。傍から見れば、呉市は何て物騒な街なんだと思われても仕方がない。

この件では、呉市議会でも一般質問に立った議員から「多すぎるのではないか」と疑問視する意見も出たようだが当然だろう。それでも市は「台数を減らすことは考えていない」と、計画変更には応じない構えだ。

犯罪を防止・抑止する目的として設置するのが防犯カメラの本来のあり方だというなら、過去の不祥事を鑑み犯罪発生が見込まれる市長室や職員会議室にこそ監視カメラを設置するべきではないかと考える。監視すべきは市民ではなく市役所の中枢ということである。

この防犯カメラの過剰設置計画が、事前手引きによって特定業者に有利に働いているとの確たる証拠はない。ただし、行政暴力への対応といった理由で市役所を厳重監視の要塞化するというだけでは、市の説明は不十分であることは確かだ。

結局、理由は後付けしただけで何が何でも(誰かさんとの約束通り)、二百四十九台のカメラを設置したいというのが本音ではないか。カメラ一台の値段と設置費用が幾らなのかは知らないが、大事なのは設置する台数なのだ。台数が多ければ多いほど、その後の維持管理費等のメンテナンス契約が上積みされる。業者にとっては、後々の委託業務を発生させることが重要ということだ。

斯様な事例は、これからも噴出するであろう。況してや新庁舎に絡んで様々な利権をあっちこっちに振り分けたとの情報もあり、それらは防犯カメラ過剰設置問題と同様に、業者利益に配慮した非常識な仕様内容になっている可能性がある。

小村市長は新庁舎建設が決定したからと、喜んでばかりはいられないのだ。

【議題89号】 新庁舎建設契約締結案 賛成:25 反対:8 (右から2番目)


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