日本大学学長選挙の茶番 田中体制への批判を封印

(敬天新聞6月号)


これを茶番と言わずして何とするか。五月二十一日、日本大学(田中英寿理事長)で学長選挙が行われた。六十六人からなる推薦委員が集まり、学長候補者四名から新たな学長を投票で選んだ。結果は現職の大塚吉兵衛第十三代総長・学長の再任となったが、得た得票数が六十二票という圧倒的勝利であった。

敗れた候補者の片山容一学部長(医学部)、出村克宣学部長(工学部)、加藤直人学部長(文理学部)にはそれぞれ一票、白票一だった。果たして、これは選挙と言えるのだろうか。

選挙と謳っているが、信任投票といって過言ではない。尤も、信任されたのは再任した大塚吉兵衛学長ではなく、田中英寿理事長の現体制が信任されたといえる。

田中英寿日本大学理事長

大塚吉兵衛第十三代総長・学長

田中理事長にとっては今回の学長選挙は圧倒的勝利が必要だった。自身の地盤を固めていた田中ファミリーと言われた主要メンバーを、内田正人を除いてすべて左遷、若しくは外した。

大学利権の全てを集中させ私物化している日本大学事業部は、イメルダ姐さんの異名をもつ理事長夫人の寵愛を受ける橋本稔子(株式会社エルフ・エージェンシー代表)と井ノ口忠男姉弟がやりたい放題で大学内外から批判を浴びている。

田中理事長の求心力は確実に落ち、教職員の怒りも沸点に達する状況にある。大塚学長の再任は選挙前から確実視されていた。しかし、票が割れ何とか当選といったことになれば、後ろ盾である田中理事長の力は落ちたと思われ、溜まりに溜まった田中体制への不満が爆発するかもしれない。

下手をすれば大規模な糾弾に発展し理事長の座を失うばかりか、大学を追われることにもなりかねない。田中理事長は圧倒的な勝利を得ることで、田中体制への批判を封じ込める必要があったのだ。

結果は御覧の通りで、大塚学長に票を投じた推薦委員は、自らの判断を否定するに等しい田中理事長への批判は、タブーとなる。大学上層部がこれでは、下々の教職員が異議を唱えるのは、今以上に困難となるだろう。

反田中の言動や態度を示せば、降格や左遷が待っている。以前からも同様の不条理な人事に触れてきた教職員が萎縮するのも無理がない。まさしく恐怖支配である。これに似通った国がある。お隣のならず者国家、北朝鮮である。

金一族の恐怖支配下にある北朝鮮でも、地方の代議員を決める選挙はある。但し、候補者は地域ごとに一人だけである。選挙とは名ばかりの信任投票であり、賛成か反対を投じるだけだ。

しかも、賛成の時は投票紙を折ってそのまま箱に入れて終わりだ。反対の時は候補者の名前に×をつけるというが、当局監視のなか×をつける行為は直ぐバレルので、そんな無謀なことは報復を恐れ誰もしない。

その結果、北朝鮮の選挙は毎回賛成百%の得票数となる。金一族の支配を内外に示す儀式である。今回の日本大学学長選挙は、この北朝鮮の儀式同様、田中体制を維持するが為の茶番といえよう。

候補者に名を連ねた片山容一学部長、出村克宣学部長、加藤直人学部長の三名は、茶番に引っ張り出された哀れなピエロといえる。本来為らば、三名共にそれぞれの分野で実績をあげている優秀な人材である。

脳神経外科の優秀な外科医でもある片山氏。工学博士として数々の著書や論文を発表している出村氏。東洋史を専門分野とし、他大学には無い、人文系・社会系・理系からなる総合学部(文理学部)を牽引する加藤氏。

いずれも日大の貴重な人材であるが、今回の記録的な大敗は三名の経歴に大きな傷をつけたことは否めない。尤も、再任した大塚学長とて歯学博士としての功績は誰しもが認めるところだ。

一方、彼らの上に立つ田中理事長は、小さい頃から相撲一筋。日大経済学部に進学し、三年のときには学生横綱となった。卒業後、日大相撲部コーチに就任したまま現役を続行し、引退までに計3回アマ横綱を獲得した。しかし、功績といえばこれだけだ。

勿論、競技者としては立派な戦歴である。学術者と比べるのは酷ではあるが、体育会系の脳筋であることは間違いない。歴代の理事長と比べても、明らかに異色の経歴だ。

因みに、前理事長の小嶋勝衛氏は工学博士。その前の森田賢治氏は公認会計士でもあった。三代前の在良男氏も大学の文理学部教授と、何れもインテリであった。大学の経営や運営を担う意味では、理事長に求められるのは知識だけではないが、田中理事長のように勉学はからっきしという脳筋男では、巨大な日本大学を担うには無理がある気もする。

逆に、インテリの周辺者に対するコンプレックスが、独裁に走るモチベーションになっているのかもしれない。内田正人や井ノ口忠男といった、勢いだけの人間を傍に置くのも、コンプレックスの裏返しなのかもしれない。

優秀な側近を外し、イエスマンや自身と似た境遇の者で周りを固めるところは、北朝鮮のオデブさんとそっくりである。

片山容一

出村克宜

加藤直人

日大学長選挙で一票ずつ獲得した各学部長。茶番劇の主役となった三人衆


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