スルガ銀行住宅ローンの闇 婚活サイト悪用業者との絆

(敬天新聞8月号)


スルガ銀行と悪徳業者等の関係

ネットの婚活サイトを悪用した投資用ワンルームマンションの販売手法が問題となっている。当紙ではいち早くこの問題に着目していたが、今ではNHKを含め民放各局、大手新聞社や週刊誌でも取り上げられるようになった。併せ、被害者が提起した民事訴訟が東京地裁にて複数件争われている。

訴訟の一つには、被害者が結束した集団訴訟も含まれている。訴訟内容は何れも婚活サイトで知り合った異性からマンション購入の勧誘を受け被害を受けたというもので、大きな差異はない。

 

訴えられている被告を見ても、勧誘者と所属業者、売主の不動産屋、そしてローンを組んだ金融機関等と横並びだ。因みに、悪徳業者の実名報道を行った当紙は訴えられた被告の立場だ。尤も、チマチマと記事削除を求めていないで裁判で白黒決着つけようと、相手業者らを法廷に引っ張り出したのは当紙の方からだった。

それは兎も角、この件を報じるマスコミは勧誘者の悪質性に焦点を搾った内容に偏っているのが気になる。勧誘者がマンション販売の目的を隠し婚活サイトで相手を物色し、その後に恋愛感情を抱かせて「二人の将来のため」といった戯言でマンションを買わせる。

しかも、買わせたマンションは市場評価に三割から五割を上乗せした物件だ。ことが済んだら徐々に疎遠となり最後には連絡が途絶える。被害者には相手が去った後に巨額の住宅ローンだけが残る。方や勧誘者はグループ内の別の業者に移動し、新たなカモを婚活サイトで物色する。

 

大手マスコミが報じる内容は概ねこういったもので、恋愛感情を利用した悪質なデート商法だと論じている。勿論、勧誘者を非難することに異論はない。加えてグループを統括する首謀者を暴き、これが組織的に行われていることを周知する報道が為されれば尚よい。

しかしである。この新手のデート商法を完成させるが為に最大の役割を果たしている金融機関については、何故だか追及の矛先を向けていない。昔ながらのデート商法といえば、テレアポや路上キャッチでカモを掴まえては、英会話教材や絵画、宝石や化粧品等の商材を売り付けるものだった。

そして数十万円の支払いには信販会社がセットで用意されていた。当時、アポ商法を重点的に叩いていた当紙では、業者の生命線である信販会社に対し、悪党の片棒を担ぐ企業と名指しで批判した。

それでも大手マスコミの追及は信販会社には及ばなかった。広告出稿が多い業界という大人の事情で縛られていたということか。

但し、今回の対象は銀行であり、契約金額も数十倍の住宅ローンである。悪徳業者からの持ち込みネタのなかでは、一人あたりの被害規模は最大といえる。そして最も重要なことが引き受ける銀行が某銀行に集中しているという事実だ。某銀行とは地銀の雄「スルガ銀行」(沼津市=岡野光喜取締役社長)である。

当紙が把握している訴訟の全てで、被害者はスルガ銀行と住宅ローンを結んでいる。集団訴訟においても、被害者の多くはスルガ銀行との契約だ(他に関西アーバン銀行・イオン住宅ローンサービス=どちらも被告)。しかし、どの裁判でもスルガ銀行は融資契約に問題はないと強気だ。

ある裁判では、被害者と売主との間の不動産売買契約がクーリングオフの適用で無効であることが確定しているにも、スルガ銀行は「自行と契約者(被害者)との金銭貸借契約は有効だからローンを支払え」と、被告の立場であることが納得できない、不愉快だと言わんばかりの姿勢を崩さない。

困惑したのは裁判官だったかもしれない。不動産売買契約は無効なのに、住宅ローンだけは残る。仮にスルガ銀行の言い分を認めれば、原告の被害回復を閉ざす判決を下さねばならない。結果、公開弁論を中断し和解を模索する準備手続きを重ねているのが現状だ。

また、スルガ銀行を被告に加えても悪戯に裁判が長引くとの判断から、勧誘者(所属業者)と売主の不動産会社のみを相手にしている裁判もある。果たして、スルガ銀行の「問題ない契約」という主張は世間に受入れられるのであろうか。

銀行の融資における基本は担保至上主義だ。融資に見合った担保を付けるのが最低条件だ。住宅ローンの場合は返済が長期間であることから、担保物件の調査は厳密に行われる。販売会社との提携ローン方式ならばいざしらず、今回のような持込の場合は、より慎重な物件調査となる。

 

それに併せて契約者の与信作業も進めるが為に、時間を要することは必然なのだ。更に、本人や家族が居住する住宅ではない投資用ワンルームマンションが担保対象であれば、審査は一般的な実需ローンより厳しさが増すのは金融機関の常識である。

ところが、スルガ銀行の場合は遅くとも二週間以内、早いものでは十日あまりで契約を完了してしまうのである。けして仕事が早いということではない。物件調査と査定がデタラメであるということだ。

ある裁判では勧誘者の女に「貴女の為に特別なすごいマンションを紹介したい」、と言われて被害者男性が購入したワンルームマンションの価額は約二千三百万円だった。融資したのはスルガ銀行である。

因みに、この被害者は以前にも同じ女から「私は貴方に寄り添って将来にわたって資産運用のお世話をしたい。だからこそ、貴方に特別な物件を紹介したい」、との甘い言葉で惑わされ、都内のワンルームマンションを二戸同時に購入してもいた。

但し、この時の融資はオリックス銀行であり、既に和解が成立している。話を裁判に戻すと、約二千三百万円で購入した物件の売れ残りが、その二年後に一千三百万円程度で売り出されたが、三ヶ月間も売れ残った事実がある。

常識からして、たかだか二年で新築物件の価値が半分になることはない。被害者が購入した価額が異常に高値だったことの証左といえる。更に言及すれば、二年で半分も価値が急落する物件は既に担保割れしているに等しい。そんなクソ物件、しかも婚活サイト経由の持ち込み物件を担保にして「正常な融資だ」と臆面もなく裁判所で証言しているのがスルガ銀行なのである。

しかし歯痒いことに、スルガ銀行が融資は正常であり適正と言えば、そこに明らかな不正がなければ罪には問えないのである。誰に幾ら融資しようがしまいが、物件の査定基準をどうしようが、よそ様から意見される覚えはないということだ。その言い分には売主も相乗りしている。

被害者が「容易に売れない投資用ワンルームマンションを、勧誘者(業者)と売主が銀行と結託して相場より高く売っている」との主張に、売主と勧誘者は「スルガ銀行が物件価値を厳密に審査した上で融資を実行している。価値は明らかだ」と、真っ向から否定する始末だ。

但し、スルガ銀行の罪を法的に問えなくとも、社会的責任を追及することは可能だ。このクソ物件を仮に本当に価値あるすごい物件としたら、住宅ローンを主力商材とする大手銀行に持ち込んでも融資は可能だろう。

しかし、大手銀行や公的金融機関が関わった事例は皆無に等しい。そもそも物件価値がどうのこうのではなく、持ち込んできた業者や売主を調べれば、門前払いするのが通常の銀行だということだ。結局は何処の銀行も手を出さない融資事案を、スルガ銀行が積極的に拾っているに過ぎないのだ。

複数の民事訴訟の被告となったスルガ銀行だが、裁判で本当に問われているのは悪徳業者に加担したことに対する社会的・道義的責任、そして金融機関としての企業倫理観の在り方についてということだ。

スルガ銀行 岡野光喜取締役社長(創業一族のボンボン)

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