民主党山口拓前都議会議員が献金者に騙った都市整備構想

(敬天新聞5月号)

山口拓の錬金術

時は遡ること平成二十五年九月、東京五輪開催が決定した。その三ヶ月前に東京都議会議員選挙が行われていた。既に政権を手放していた民主党(現民進党)が惨敗した地方選挙である。

但し、世田谷選挙区に限っては「当選間違いない」とされる民主党候補がいた。その候補者とは、現職で三期目の当選を狙っていた山口拓氏のことである。山口拓氏は現在四十四歳であるが、政治家としてのキャリアは長い。二十六歳の時、世田谷区議会選挙に挑戦し、同区最年少で当選を果たしていた。

任期中に行われた都議会選挙に鞍替えし、見事に当選した若手ホープである。「ゆく行くは国会に」というのが民主党執行部の考えだったようだが、同党に対する逆風は想像以上のもので、三期目を目指した当該選挙で落選してしまう。

山口拓前都議会議員


現在の山口拓氏は、政治活動から身を引くこともなく、前東京都議会議員として復活を目指し活動している。斯様な状況のなか「山口拓に金を毟られた」という人物からの告発が届いた。平成二十五年の当該選挙に突入する直前に、山口拓氏は「山口拓を育てる会」と称した政治資金パーティーを開いたという。 その時に参加した団体で「東京の街を考える会」が、九十六万円を支払っている。但し、同会は実態のない自称団体であり、金額の収支に不透明な問題が生じている。 なぜなら山口拓氏が同会に対し、資金援助の対価を約束していたことから、実行された政治献金は四〇〇万円であったということらしい。 三〇四万円は何処に?この辺の経緯については、過去四回に亘り報じてきた当紙HPブログを御覧下さい。

今回は、その山口拓氏の周辺で新たな疑惑が浮上しているのでお伝えしよう。山口拓氏は現職当時、献金が見込める支援者に対し「都市整備委員会委員長である自分の元には、様々な整備構想事案の情報が入る。その情報をいち早く欲しくないか」と、秋波を送っていた。

しかし、山口拓氏の落選でご破算になったと思われていたのだが、実は既に実行されていた口利き事案が在ったというのだ。現場となったのは「お婆ちゃんの原宿」としても有名な巣鴨地蔵通り周辺区域だ。同区域では都建設局が主体となる「白山通り拡幅整備事業」が進行中である。

それに伴い、巣鴨地蔵通りを中心とした地域の商店街組合や町会らで構成される「巣鴨地区街づくり協議会」が、一体開発を目的に同調している。そこで登場したのが、都議であった山口拓氏だ。「都市整備委員会委員長だった自分なら、東京都と豊島区の双方から有益な情報が得られる。しかも双方への口利きも行える」と振れまわったという。

それに応じたのが、鰍sHEグローバル社だった。同社社長である永嶋秀和氏は、山口拓氏と同じ駒澤大学出身で、『駒澤不動産の会』なる組織を立ち上げている。同大評議員でもある山口拓氏を担ぎ、利権に食い込むことを目的としているらしい。

しかし、銭と情報が飛び交う不動産開発の現場に、現職都議が堂々と関与する訳にはいかない。そこで山口拓氏の代理人的立場で動いたのが、都内の設計事務所代表のS氏らしい。そこで現れたのが三〇階建タワーマンションの建設計画だ。


巣鴨でバブル?

タワーマンション建設予定地として浮上したのは東京巣鴨青果市場駐車場跡地だが、現在の様子はロープで囲われてはいるが、山口拓氏が語るような開発を示す告示看板は見当たらない。そればかりか、その土地の所有者や管理者を示す看板すらない。

権利者なり開発者だと周知すると不都合が生じるから、敢えて名乗らないのだと考えられる。当時、豊島青果市場を運営する、半官半民企業の東京豊島青果株式会社が実際の所有者だった。

ところが、正式な売買契約がなされる前に、開発業者を名乗るヒサシコーポレーションが、都や区から恰も承認を得たかの態度で、更には山口拓氏の口利きで必ず開発が進むとして、精力的に動いていた。一方、件の開発予定地の所有権だけはコロコロ変わっていた。如何にも大規模開発をエサにした土地転がしの様相だ。

ヒサシ社が動き始めてから、一年半以上も経過した平成二十四年八月末、漸く正式な所有権移転の登記がなされた。新たに所有者となったのは、大手商社の「丸紅株式会社」だ。購入金額は一六億円との情報を得ている。土地取得だけで一六億円というなら、ヒサシ社が地元有力者の高岩寺(とげぬき地蔵尊)を計画に引き込もうと七千万円の献金をチラつかせたとの風聞も頷ける。

丸紅といえば、これまで数々の不動産開発を手掛けてきた。山口拓氏の口から出任せで始まったタワーマンション建設計画も、あながち嘘ではなかったのか。然し、やはりというか丸紅に開発の意思はなかった。

土地取得から一年も経たない翌年の平成二十五年五月、これまた大手商社の「大東通商株式会社」へと転売したのだ。丸紅は土地を約九ヶ月間寝かしただけで、凡そ三億円を乗せた十九億円で売ったとされる。妙なのは、買い手の大東通商だ。同社は丸紅とは違い、不動産開発は不得意だ。単なる中取りの為に購入したことが窺い知れる。

案の定、丸紅から大東通商へと転売された後、日神不動産へと再転売された。この間に売却額に七億円が上乗せされた。局地的なミニバブルといった様相だ。尤も、自己資金で賄った丸紅と大東通商とは、日神不動産の立場は大きく異なる。二十三億円とされた購入額のうち、二十一億五千万円を三井住友銀行から借入れての土地取得だったからだ。

日神不動産の立場は、名義貸しに等しい仮の所有権者ともいえ、事実上の権利者は三井住友銀行に他ならない。実際、件の土地は三井住友銀行の主導で、グループ企業である三井不動産リアルティ株式会社の基幹事業である「三井のリパーク」によって、駐車場(三井のリパーク巣鴨四丁目第二駐車場)として活用されることになる。

但し、これにしても単なる繋ぎでしかなかった。そもそも、日神不動産にしても「東京の街を考える会」(山口拓氏への資金支援団体)のメンバー、株式会社THEグローバル社の代打でしかない。信用力に劣るグローバル社に変わり、親玉である団体『一般社団法人全国住宅産業協会』のトップ企業、日神不動産が銀行融資借入れの役目を担ったに過ぎない。

さて、平成二十六年三月に名義上の所有権者となった日神不動産は、翌年の一〇月に再々転売することになる。当然だが、転売を主導したのは事実上の所有権者である三井住友銀行であろう。 平成二十七年一〇月、売買にて所有権を得たのは、三菱地所レジデンス株式会社だ。同社は『ザ・パークハウス』の自社ブランドで知られる業界最大手だ。同社の力からすれば、地元の猛反対を押し切ってタワーマンションを建設するのも可能であろう。

或いは、地元住民の許容範囲である中低層階の開発でも、利益を見込める開発ができるかもしれない。何れにせよ、転売を繰り返した件の土地は、三菱地所レジデンスの所有で、ひとまず落ち着いた模様だ。ここまでくると、山口拓氏の出番はない。

否、出番がないというよりかは、既に「がっぽり儲けたから、あとは知らない」と、いったところか。手駒のグローバル社を通じて日神不動産へと転売するまでに、凡そ七億円が湧き出た。その内から仲介手数料やコンサル料といった名目で、相当額の金額が山口拓氏の周辺に渡ったことは容易に想像出来る。

退き際を見極めた、まったく以て見事な仕事である。これだから政治家はやめられないのである。


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