新しい日本大学をつくる会
田中理事長ら執行部を提訴

(敬天新聞 令和元年6月号 2面)


文科省で記者会見

昨年五月六日に起きた日本大学の『アメフト危険タックル問題』から丸一年が過ぎた。発生直後から続いた、世間を見縊るような日大執行部の対応とその後の不手際が、部活動の対外試合での問題から、大学全体のガバナンスを問われる事態にまで発展し、社会の関心事となった。日大での常識は世間での非常識であることを露呈したのである。

問題の根源は理事長である田中英壽体制にあり、そのことをメディアも挙って報じていた。それでも日大のドンといわれる田中英壽理事長が、公の場に姿を見せて詫びることはなかった。やがて世間の関心は薄れマスコミも静まり、田中理事長の『逃げ恥』作戦は目論見どおり成功したかに思われた。

だが、現在の日大を憂え、粛々と改革を求め戦う準備をしていた日大マンがいた。五月七日、文科省に於いて「新しい日本大学をつくる会」(会長・牧野富夫元日大副総長)が記者会見を開いた。日大アメフト部の悪質反則問題などで大学のイメージが傷つけられ精神的苦痛を受けたとして、複数の日大教職員が田中理事長ら大学執行部に慰謝料の支払いを求めて近く提訴すると発表した。

弊紙も記者会見に出席して、「つくる会」の意気込みを聞いてきた。元副総長で元経済学部長の経歴を持つ牧野富夫会長を筆頭に、全員が教授出身のOBである。その中には弁護士の資格のある先生もいるそうだ。私学を代表する大学法人でありながら、しかも教職の最高権威の教授という立場にいながら、経営側の職員の認可を得なければ「自由に発言できない環境に成り下がった現実への自己責任」を痛感されての決起の感が強かった。

時折、田中理事長と暴力団の関係に未だに「怖さ」を感じているような言動も見られたが、「誰かが立ち上がらなければ、改革は前進しない」という決意のある悲壮感は確かにあった。若者にはない「老人力」である。

正面切って立ち上がることに怖さはありませんか?」という記者からの質問に、「正直言って怖いです」という答えもあった。

しかし、「自浄作用がないことが分かった以上、誰かが立ち上がり発言しなければ、改善どころかますます悪くなっていく危機感。自由に発言できない現役の先生たちと学生を救うために立ち上がった」のだと意気込みを語った。



会見の意義

マスコミも世の中が興味を持ってる時は大きく取り上げるが、「人の噂も〜」と言うように七十五日が過ぎる頃には、ほとんど取り上げてくれなくなる。それで乗り切るのが、田中理事長は長けていると、評議員の誰かがテレビで発言していた。確かに、一見そのように見える。今回の記者会見も、集まった記者の数は疎らである。

しかし、根強く「つくる会」の先生方は、活動をされていたようだ。印象に残ったのは、「アメフト危険タックルから発生した日大問題は社会問題であること。社会化した問題は社会が納得した解決を図らなければ、本当の解決にはならない。それを日大村の論理で解決しようとしている。それでは本当の解決にならないことを執行部が未だに気付いていない」という言葉である。全くその通りだと思う。

「つくる会」としては、法の正義に照らして解決が必要との考えから、今後は刑事、民事で告発、訴訟を考えているそうである。五月四日には文科省に「要望書」も提出したそうである。興味のある方は、添付している要望書を読んで頂きたい。

簡略にいうと、 @事業部のチェックをして頂きたい。

A田中理事長と反社会勢力との交際を巡る真偽を確かめて頂きたい。

B私学助成金減額理由の詳しい内容の開示と大学が何らかの改善策を取ったら、その開示をすること。等である。

確かに大学事業に相応しくない事業も沢山含まれているし、決算もアバウトで閲覧請求もできない状況であるらしい。また田中理事長と反社会勢力との話は絶えないが、たとえば写真の件にしても「合成写真」とか言うのであれば、掲載した雑誌社を訴えるとかして、法的に勝訴して初めて説得力もある話に繋がろう。そういう手順を踏もうとしないから、いつまでも疑惑が止まらないのである。それを文科省に指導して欲しいと訴えているのである。

現実に都条例の三条で、基本理念として「暴力団と交際しない」という禁止事項があるらしい。また十六条には青少年の教育に携わる者への注意として、禁止されてる行為を違反した者を知った場合は「通告の義務」と言うのもあるらしい。

また、私立学校法四十七条二項では「利害関係人(学生・教職員)は知る権利」があり、「帳簿の閲覧権」があるらしいのだが、今の学生に昔のような学生運動につながるような危機感はないだろうし、現役教職員は報復人事を恐れて「閲覧権」の行使など履行できないどころか、物が言えないのが現実だそうである。あれだけマスコミが押し掛けた一年前でさえ、最後までダミーの大塚吉兵衛学長を前面に出して、説明責任を果たさなかった田中理事長である。その実力たるや、押して知るべしである。

日大側には雇われた高級弁護士軍団がいる。片や母校愛に燃えた正義感と老人力が頼りの集団である。退職者やOBというのは、直接的な利害関係人ではないので、あくまでも側面から支援するという立場での運動を展開するという。

記者会見にまだ慣れてないのか、ぎこちなさや手際の悪さも垣間見えた。そこに記者から厳しい意見も投げかけられたりもしていた。だが、潔さと覚悟は十分に伝わった内容であったと弊紙は感じている。何よりも顔を見せて名前を名乗り記者会見した点に拍手を送りたい。

何故なら、田中理事長の暴力団との関係を誰よりも知り、その体制の中で働いていたのだから、未だにトラウマになるのも無理ないことである。

現に多くの日大マンが田中体制に不満を抱きながら、弊紙に匿名で投書は送ることはあっても立ち上がることはなかった。今まで文科省さえ日大には手が出せなかった。下村博文元文科大臣など、「田中理事長と暴力団との関係」を国会で問われながら、有耶無耶にしてしまったのである。

そんな中で「よくぞ勇気を持って、立ち上がって下さった」と思っているのは、弊紙だけではあるまい。多くの人達が思っていることだろう。

日大の現役教職員の皆さんも心の中では、みな不満を持っている筈である。だからこそ弊紙に何度も投書が届いていたのである。表だって立ち上がれない理由は、目の前で見せつけられてきた暴力団との関係が怖いことや、誰が上に立っても私利私欲に溺れて、どうせ同じようなことをやるだろうという懐疑的な所見からだろう。

多くの者が不満を感じていながらも「今の待遇を犠牲にしてまで、立ち上がることでもない」と思っているのだ。蔭では何とかせねばと言うが、所詮愚痴の部類で真剣さはないのが実情だ。日本の場合、デモや反体制運動で政権を倒すという風習がない。自己犠牲も無く私益だけは求める現代人の特徴である。

弊紙は、これまで多くの大学から体制に対する不満やトップの権力の不正使用について相談を受けてきたが、問題提起して立ち上がる人は殆どいなかった。皆、自分が可愛いのである。

しかし、日大に関しては、危機的状況が全く違うのである。大学の理事長が暴力団と交遊があるというのは、本当に稀なことである。苦労人の創業者トップには、そういうことが稀にあることもあるが、それは無名時代の話である。日大のような日本一のマンモス大学で、しかも私立大学最高の私学助成金を貰っているような学校法人のトップが、暴力団との交遊を自慢しているようなところは、日本中どこを探しても無いだろう。

そして今、現実に私学助成金がカットされ、受験学生が減っている現状に、実際に危機感を覚えている教職員が増えているのだ。

権力が集中してる時は、揉み消しも可能であろう。しかし社会問題化すると、「つくる会」の先生方が説明されたように、「日大村の論理」では、どうにも解決できなくなるのである。

 (3面に続く)


ついに立ち上がった牧野富夫元日大副総長の会見


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