南島原市の公共事業を巡り議会で賛否が割れた怪入札

(敬天新聞 令和2年7月号 2面)


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故郷から凶報

長崎県の島原半島南部に位置する南島原市は、山と海が臨む自然豊かな環境に恵まれている。一方、雲仙普賢岳や島原の乱で天草四郎が籠城した原城遺跡といった激しくも痛ましい歴史を刻み全国に名を馳せている。

その南島原市は、弊社の社主が生まれ育った故郷でもある(詳細は安藤組外伝『白倉康夫 殉心』向谷匡史著・青志社)。故に、この地における相談が寄せられれば、郷土愛を持って事に臨むのが弊紙の習わしである。

そんな南島原の市民から相談が寄せられたのは、コロナ過で国民が自粛生活を余儀なくされていた五月初旬のことである。ことの発端は、地元の新聞で報じられていた南島原市が建設を予定している新学校給食センター(西有家町)に設置する厨房機器の指名競争入札で(予定価格四億一五七二万三千円)、諫早市にある樺キ崎日調が四億一四〇〇万円で落札し、その落札率が99.58%であったことにある。(※何れも税別金額)

昨年末に実施したこの入札は、市議会の本会議でも一部の議員が議題に挙げて、他の工事に比べて落札率が突出して高いことや、入札前に行われていた同センター新設に係る南島原市教育委員会所管の作業部会に、落札会社の社長が同席していたことを指摘し、「核心の情報が筒抜けで、公平性が担保されていないのではないか」と厳しく質していたのである。これに対し、山口周一副市長は「設計会社の協力会社として専門的で高度な質問に答えるため」として同席に問題ないとする認識を示していた。

また、地元新聞の取材に応じた南島原市教育委員会の深江良蔵教育次長は「具体的にどこのメーカーの製品を検討する部会ではない。参加に問題はない」と見解を述べていた。


高い落札率

とはいえ、結果的に落札業者が発注者側の重要会議に事前参加していたことは公平性を欠き、99.58%という極めて高い落札率で応札していることには、疑念を抱かずにはいられまい。副市長や教育次長の言い分は、説得力を欠くといわざるを得ない。

また、同じく作業部会に同席していた日本調理機鰍ェ、四億一六○○万円の落札率100.06%というこれまた際どい価格で入札に参加している。こちらは予定価格を上回り落札には至っていないが、作業部会に同席していた二社のみが極めて予定価格に近い金額を出しているのである。

市議会では、落札した樺キ崎日調と市が本契約を締結する議案において、「公平性が担保されていない」などとして、採決を行った結果、反対8、賛成7で否決されている。つまり白紙と成ったわけだ。

そこで弊紙は南島原市、入札参加業者、市議会議員を対象に書面にて取材を申し入れ、談合の疑惑を質し、回答を求めた(※紙面資料)。弊紙の質問を真摯に受け止め回答に協力して下さった市長や市議会議員の先生には、先ず御礼を申し上げたい。議員からの回答の中には「市の直近の物品の落札率は平成二十九年度79.7%、平成三十年度82.7%であったことや、当初は建設予算の暴騰が問題視されており、憤りを感じている」との意見もあった。また入札に参加した業者からの回答は、示し合わせたように無かったのは残念であり、不可解でもある。


燻る疑惑

結局この入札は、一工区と二工区というように作業規模を二つに分けて、前回は「指名競争入札」であったものが、「制限付一般競争入札」に改められて五月二十六日に再び入札が行われた。その結果、一工区(予定価格二億二八ニ七万円)を潟Aイホー長崎営業所が落札率94.9%の二億一六六九万円で落札し、二工区(予定価格一億八八五九万二千円)をこれまた潟Aイホーが一位で応札するも何故か無効となり二位の日本調理機鰍ェ落札率95.4%の一億八千万円で落札した。

そして議会の採決では反対8、賛成8で割れたものの議長判断で成立したそうである。だが一部の地元民の中には未だ疑念が燻っている様子である。

この新学校給食センターは敷地面積約5500平方メートルに、鉄筋二階建て延べ床面積2600平方メートルにもおよび、一日3700食の提供能力を有しているという。

今年三月に着工し、来年九月の供用開始を目指しており、総工費二十億六千万円を見込んでいるというから田舎では大きな事業の一つである。故に怪しげな所に疑惑の目線は絶え間なく注がれているのである。

この際、天草四郎に身を重ね一揆を起こすという訳にもいかないので、談合根絶に采配を振る松本政博市長の手腕を信じるほかあるまい。


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