詐欺強盗が蔓延る日本の危機 道徳の荒廃で求められる厳罰化

(敬天新聞令和5年3月号 1面)


貧すれば鈍する

3年に及ぶコロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や気候変動といった複合的な要因で、日本の景気・経済・安全保障が先行きの見えない不安定なものとなっている。

衣食足りて礼節を知る、貧すれば鈍するという言葉がある通り、これまで保たれていたあらゆる秩序が綻びを見せている。治安の悪化もその一つと言えよう。

世界から平和で安全な国と評されてきた日本であったが、今では刑法犯の認知件数が20年ぶりに増加傾向に転じていることが警察庁の犯罪情勢統計でわかった。加えて国民の「体感治安」も悪化している。つまり「治安が悪くなった」と感じている国民が増えているということだ。

現在相次いで起きている詐欺事件や強盗事件もその要因である。やはり何よりも先ず考えなければいけないのは、日本の犯罪に対する罰則の甘さ、軽さ。特に詐欺に対する国民の認識の甘さと、法律の甘さというものを一刻も早く改めなければならない。

詐欺と言えば特殊詐欺ばかりが世の耳目を集めているが、投資詐欺の件数もここ数年で若者の被害を中心に倍増している。そして詐欺師達は逮捕されても、報道陣の前で悠々と笑みを浮かべる等、盗人猛猛しい者が多いのも罰則が甘いからである。

弊紙は過去に詐欺師を追う過程で、詐欺師が儲けた金を原資にゲーム制作会社を立ち上げて、メディアで起業家だと持て囃されたり、人気グラドルと結婚してシンガポールに高跳びする姿を目にしている。そんな木の葉が沈み石が浮く世の中であってはならない。

よく刑罰は犯罪者への懲らしめではなく、更生を図る為に科すものだと言うが、被害者は回復不能な心身の傷を負い死活問題を抱えることを最重視すべきである。

犯罪学者で知られている立正大学の小宮信夫教授が、読売新聞の記事の中で「若者らが金欲しさに闇バイトに応募するのをどう防ぐか?」という問いに対して、「道徳を説くだけでは心に響かない。闇バイトに応じれば、逮捕されて刑務所に送られ、人生を台無しにすると言うリスクを具体的に教育現場などで伝えていくことが重要だ」と述べていた。

その前提に成るのはやはり厳罰化だろう。加えて足りないところは補う法整備も必要だ。弊紙はこれまで日本人の道徳と性善説を信じ、それが犯罪抑止に繋がることを唱えてきたが、目の前の問題解決を図るには、もう思想信条だけではどうにもならないところまで日本は来てしまっているようだ。



警察庁の犯罪情勢統計(出典:時事通信)



犯罪抑止力

一連の闇バイトによる強盗事件や特殊詐欺事件を論じるときに、メディアでは、「なぜ金のために若者が犯罪に手を染めてしまうのか?」とか言われている。

しかしながら今起こっている世の中の事件を総じて見れば、「なぜ若者が?」というよりも、日本の社会全体に過度な「個人主義」「利益至上主義」が蔓延していることで、他人の不幸や悲しみを顧みない利己的な事件が幾つも起きていることを、同時に考える必要があるのではないか。

直近の事件を例にあげれば、「なぜ世界的なスポーツの祭典である東京五輪で、汚職事件や談合事件が相次ぎ起こり、大会組織委員会の幹部や電通など大手企業の幹部達が逮捕されているのか?」「なぜ難病患者支援を掲げるNPOの理事長が違法な臓器移植あっせんで逮捕されているのか?」ということだ。逮捕されたNPO理事長は、臓器移植を希望する患者の弱みに付け込んで多額の現金を要求し、陰では「金だけ取れればいい」と関係者に漏らしていたそうだ。

東京五輪を巡る事件にしても臓器移植あっせんのNPOにしても、非営利組織に属しながら、金さえ儲かれば何でもありと言わんばかりの事件である。昨今オリンピックの商業化が問題視されているが、この事件を見ていると、弊紙で十年以上前から追及していた日本大学の田中英寿元理事長の築いた日大王国で起きた数々の不正の構図によく似ている。

他にもSMBC日興証券による相場操縦事件やスルガ銀行が後ろ盾となった「かぼちゃの馬車事件」も然りである。銀行や証券会社という社会的信用を悪用し、顧客を騙すのだから質が悪い。このような事件は例をあげればきりがない。

今や東京五輪大会組織委員会であろうが大手企業であろうが、学校法人であろうが、NPO法人であろうが、宗教法人(カルトで話題の)であろうが、本来の存在意義を蔑ろにして、他人の迷惑や不幸など顧みずに「金さえ儲かれば何でもいい」と言わんばかりの利益至上主義・商業化に傾倒し、利己的な事件を起こしているのである。

こんなことが蔓延っている社会で育った子供達や若者が、ましてコロナ禍で人との交流を制限され、現金より電子マネーの使用を促されている社会で、いったい仕事やお金に、或いは人の命や繋がりに対して、どのような価値観を抱くのだろうか? 「なぜ今時の若者は金のために犯罪でも何でもやるのだろう?」と考えると共に、社会全体で考えなければならないこと、やるべきことがあるのではないか?

嘘偽りが社会に蔓延し、オレオレ詐欺や強盗が蔓延る世の中は異常である。厳罰化は一定の犯罪抑止効果を得られるだろう。しかし、それでも忘れてはならないことがある。千の蔵より子は宝。先祖を敬い、お爺さんお祖母さん、親兄弟を大切にするのは当たり前。生まれ育った故郷や国を愛することは当たり前。嘘つきは泥棒の始まり。悪い事をすればお天道様が見ているよ。そんなこと言うまでもなく当たり前だった日本人の良心道徳心を今一度取り戻すことである。

さもなくば、いくら対外的に防備を増強したところで、この国は亡国の一途を辿るのみではないだろうか? 勿論そんな国民を食い物にする詐欺師や盗人、金のために魂や国を売る輩ばかりではない。だからこそ希望を抱いて述べているのである。


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