人生終わりだ もう駄目だ
返却されたチケットを恐る恐る受け取る川田女史(左)と、アップフロント側幹部社員
 筆者の所にモーニング娘の話が来たのは、コンサートの3日前の1月26日(水)、新橋駅での定例街宣が終った夜7時過ぎのことだった。話のあら筋はこうだ。

 29日(土)、30日(日)の両日に「モーニング娘、飯田圭織サヨナラコンサート」というのがあるが、キャンシステムの斉藤信之営業部長がこのコンサートチケット30枚を川田という女性に売りつけた。川田女史は自分だけでは捌ききれず、知り合いの何人かに原価で売った。一部はダフ屋に流れ、一部はインターネット上で販売されたそうである。

 インターネット上で販売されたのを見た、モーニング娘の所属会社アップフロントの関係者が何故か慌てて回収を命じ、キャンシステムの斉藤を通じて川田女史も本社に呼ばれた。

 「とにかく全チケットを引きあげろ。もし戻らなかったら大変なことになる。その時はアンタもタダじゃすまない」と脅され怖くなった川田女史は、売った人達に連絡を取ってチケットを回収して回ったという。

 そのチケットを買った人物の1人に筆者の後輩がいて、その後輩が理不尽さと疑問を解くために先ずキャンシステムの斉藤営業部長を訪ね、問い質した。

 斉藤は近所のファミリーレストランで話し合い中に突然「これで俺の人生も終わりだ、もう駄目だ」と独り言を呟きながらテーブルに頭を打ちつけたという。「泣いたってわからないからちゃんと説明してくれ」という後輩の言葉にも、ただ「勘弁して下さい。私はどうしたらいいんでしょうか」と人目も憚らず泣き続けるだけで、そのうち「妻を呼んでもいいですか」と訳のわからないことを言い出す始末で、実際に女房も来て、ただ2人で泣き続け許しを乞うたという。

 何故謝り続けるのかわからないが、余程疚しい理由があったのだろう。そこでどうしたものかと筆者に相談があったのである。

今回問題となった、「深い意味合い」を持つチケット
 3日後にコンサートを控え、手を打つにもその手段が限られている。先ず人気のあるチケットを無駄にできない。それから飯田圭織という女性のサヨナラコンサートを一部の腹黒い連中の犠牲にしたら可哀相。聞けば斉藤という男は芸能界では相当顔が利き、誰のチケットでも手に入る兵(つわもの)だという。そこで筆者は「話を大げさにして何も知らないモーニング娘を傷つけるより、今回は斉藤を許してあげて、今後良い付き合いをした方が得策だろう」と教示した。

 後輩も納得し一件落着かと思いきや、今度は斉藤と連絡が取れない。昨日までの泣き崩れ、哀願した態度とは打って変わって、ダンマリを決め込み雲隠れしたのである。誰かの入れ知恵か本人の浅知恵かわからないが、親の心子知らず、である。となれば戦うしかあるまい。

 夫婦で泣き崩れ、「これでもう俺の人生は終りだ」とうろたえた、あの姿はいったい何だったんだ?という訳で、チケットの流れと理由を徹底的に解明することにした。

 斉藤信之が所属するキャンシステムに電話をしても「何もわからない」と言うし、モーニング娘のチケットを販売しているアップフロントワークスでは「担当者がいない、わからない」を繰り返すばかりで埒があかないので、取り敢えず会社に行って事情を話すことにした。

 
 一度売ったチケットをタダで回収

 夕方5時まで斉藤の連絡を待ったので、アップフロントを訪ねたのは夜の8時頃だった。やっぱり勢いのある会社は活気がある、夜の8時だというのに昼間と同じくらい社員がいる。若い社員に事情を説明してもわからないので「責任者を呼んでくれ」と待つことにした。しばらくして社長の不破久夫氏、執行役員の高木貴司氏、警察OBらしき北村武洋氏ともう1人の、計4人と面談した。

本紙 「用件を申し上げますが、貴方方が販売したチケットを強引に回収されたそうですが、それは何故ですか」
ア社 「いやあのチケットは関係者に配るチケットで一般に販売するチケットじゃないんです。それがインターネットで一般に流れたものですから」
本紙 「いやインターネット上に流れたものや金券ショップに流れたものを貴方方が買い戻すのは、それは結構です。私が言っているのは、斉藤信之氏を通じて川田女史に流れた物を『全部持って来い』と言って取り上げた分を返して下さい、と言ってるんです」
ア社 「いや、あれは関係者に配るもので販売するものじゃありませんから」
本紙 「それではあのチケットは貴社が30枚もキャンシステムの斉藤信之氏に無料であげたものですか。それなら賄賂ということですか」
ア社 「いや、斉藤信之氏からはちゃんとお金は戴いている、と聞いております」
本紙 ちゃんと金を貰っているなら、そのチケットは正規の手続きを経て斉藤信之氏の手に渡った代物であり、その斉藤信之氏に全額を払った川田女史の物ではありませんか。その川田女史に回収を命じチケットを取り上げる権利が、何故アップフロントワークスにありますか。川田女史にお金を払って回収するならともかく」
ア社 「………」
本紙 「それに金を払って斉藤氏が手に入れ、それと同額で川田女史に譲ったのなら何も問題はない筈です。斉藤氏は何故泣き崩れ『これで俺の人生も終った』などと騒ぎ、奥さんまで呼んだのでしょう」
ア社 「それは私達にもわかりません」
本紙 「とにかく現時点でチケットの所有権は川田女史にある筈ですから、先ずチケットを返して下さい」
というようなやり取りがあった。
BOX席からの眺めは最高だ。背後にはガラスの扉があり、(下の写真へ↓)
その中はこんな風に寛げるスペースになっている。言わばVIP席だ

 アップフロント側は殆んど高木執行役員が答えた。社長の不破氏は話の内容がわからなかったのか、自分が口をひらけば代表として最終責任になるという考えからか、一度も口を開かなかった。

 顧問の北村氏が「うちは斉藤氏にチケットを売ったので斉藤氏の先のことはわからない」と如何にも筋違いの訪問と言わんばかりの言い方をするので、「それなら斉藤氏と、斉藤氏にチケットを売った当人、それとチケットを回収した本人をここに呼んでくれ。事情を聞きたい」と言ったところ「今日は誰もいない」の一点張りである。

 我々は時間がないので今日中に解決しようと、川田女史を近くに待機させていたが、結局は高木執行役員の「再度詳しく調査して、明日の2時までに報告します」との言葉を信用して帰ることにした。どうやら斉藤から都合のいい説明を受けていたようである。

 次の日、コンサートを翌日に控えて「無理やり回収したチケット全14枚分を返す」というので、アップフロント本社一階の喫茶店に川田女史を連れて出向いた。相手側は、川田女史から取り上げたので本人に直接返したい意向という。当然だろう。

 しかしチケットを持って来たのは昨日会った4人ではなく、また川田女史を恫喝し回収した者でもなく、見知らぬ社員と警察OBらしき昨日とは別の顧問だった。川田女史は余程恐いらしく、ただ下を向いて、何を言われても「ハイハイ」というだけで、チケットを返されても「すみません、すみません」というだけである。アップフロントに名うての暴力団でも付いているのだろうか。不破社長や高木執行役員を見る限り、そんな風には見えなかったが…。斯くして、取り敢えずチケットは返ってきた。28日(金)午後3時のことだった。

 
 入手困難なチケットを本紙が進呈
ちょっと前のモー娘。左上が飯田圭織
 本番は明日である。さあチケットをどうするか。このチケット席であるが、ロイヤルボックスシート6番席1列1番から5番、2列1番から5番という特等席である。

 インターネットで調べたら3階の突き出た部分に10部屋あり、中でも5番、6番がステージ中央の一番いい部屋で、会場の雰囲気に飽きたら後のドアを開ければ応接室になっていて、そこで寛ぎながらガラス越しに静かに見物できるのである。各企業が、偉いさんや取引業者の接待に使うような場所である。

 1枚6,800円の値段こそ付いているが、明らかに招待券であろう。招待券でなければインターネットに出回ろうが金券ショップに売られようが右往左往する必要はない筈である。この豪華チケットが何故斉藤を通じて川田女史に流れたかを解明するのは後回しにして、取り敢えずこのチケットを無駄にできない。

 この時、筆者の手元にこの特等席のチケットが19枚あった。ダフ屋なら1枚最低でも10万で売るというシロモノである。筆者にそれだけの器量はないし、加えてこんな物で儲ける意思もない。ということで我々が考えた作戦は、「さぞや子供達が喜ぶだろう」と当日、現地で無料でプレゼントすることに決定した。

 小学生の女の子が中心の観客だと思って現地へ行ったら、何とビックリ。モーニング娘のファンというのは、殆んど変態に近いようなオタク族やロリコン趣味的な20代の若者の男が中心で、女の子は殆どいないのに驚いた。ファン同士がグッズを自慢し合ったり、物々交換したり。何人かに声を掛けてみたが、完全に「イッテル」様な目をした若者が多過ぎる。とてもじゃないが自分の娘を連れて来られるような雰囲気ではない。慌てて娘に明日行かないように電話を入れた。

 そんな中でロイヤルボックス席プレゼント大抽選会を行った。当たった人は半信半疑で、後日何か因縁でもつけられるんじゃないかと恐る恐る受け取りに来たが、当たる人が増える度に場は盛り上り、チケットはあっという間に捌けてしまった。

 一番ビックリしたのはダフ屋だろう。ダフ屋の仕事は、1万円で仕入れた物を2万円で売ることである。その横で高級チケットを無料で放出したのだから大変である。しかもこのチケットの場合、一度ダフ屋に流れたのである。それをどういう説明をしたのか、アップフロント側が回収してしまった。そのチケットを今度は本紙が回収し、無料でモーニング娘ファンにプレゼントするのだから、おもしろい現象が起こったものである。インターネットでも無料プレゼントを呼び掛けたものだから反響は大変なものだった。

 
 斉藤詣では新人歌手の必勝祈願か

会場周辺で、携帯電話の番号による抽選を行った
本紙の大盤振舞いにファンも大喜び(ちょっと不思議そうに)していた

 ところで、キャンシステムの斉藤信之とは一体何者なんだ。どんなチケットでも手に入る。毎晩銀座に接待され、週のうち3日はゴルフ場通いだそうだ。もちろん接待で。この泣き虫男のどこにそんな力が潜んでいるのだろう。どうやらキャンシステムに秘密がありそうだ。

 『キャンシステム』というのは有線放送の大手らしいが、その歌手やタレントの売り出しに裏から斉藤が力を発揮するらしい。簡単に言うと、斉藤に睨まれたらどんなに実力があっても上位には上がれないし、逆にどんなに能力がなくても斉藤に気に入られたら、売れていることを演出できるという。そこでプロダクションの社長連中の斉藤詣でが行われるという。

 後日、アップフロントの高木執行役員から社内調査結果が報告された。

 「今回のチケットは、川田女史から頼まれた斉藤氏がアップフロントにチケット購買を申し出て、調達した。その際斉藤氏の使いの者(キャンシステム社員)がチケット30枚を受け取り、受領と同時に代金を支払って行った。その際このチケットは関係者席で一般の売買はできませんということを斉藤氏側に伝えた」という。これでは問題は無いように見える。

 斉藤は頼まれた川田女史に30枚(チケットを欲しいと頼んだ川田女史だったが、まさか30枚も持ってくるとは思わなかったらしい。知人に頼まれたのは数枚程度だったらしい)を、アップフロントワークスから購入した額で、そのまま譲り渡した。これでは何も問題無いように見える。いや、それどころか斉藤はとてもいい奴である。手に入り難いチケットを、しかも特別席を原価で取ってくれたのだから、有り難い話である。通常なら美談の部類に入る話である。

  受け取った川田女史は頼まれた数枚を知人に渡し、残りを他の知人や金券ショップや知り合いのダフ屋に同額で譲り渡した。斉藤から売買の制限を受けている訳ではないので、これもまた何も問題はない筈だ。それが何故こんな胡散臭い話になったんだろう。

 一つはアップフロント側がチケットを販売したにもかかわらず、インターネット販売されているのを発見して慌てて強行回収した。しかも、その時何故か回収相手に代金を払わず、脅しまでかけた。ここが不思議だ。回収するなら、何故チケット代を相手に払わないのだろう。これでは二重取りである。いや“恐喝”と呼ぶべきかもしれない。本紙がやったら間違いなく恐喝で捕まっていただろう。

 逆に言えば、本紙が介入しチケットを回収したことでアップフロントの恐喝行為が消えた訳で、本紙は今頃、アップフロント側から多いに感謝されていることだろう。

 
 良い席は客に売らず関係者へのギフトに

 確かにアップフロント側は斉藤にチケットを渡す時「関係者席なので一般に販売しないように」と言ったかもしれないが、代金を受け取っている(=売った)以上、そのチケットの一部がインターネットで売買されたからといって、こんなに異常な反応をするものだろうか。

 「これはまずいよ」ぐらいの注意はしてもいいが、代金を払わず取り上げるというのは如何なものか。

 斉藤が人目を憚らず泣き崩れ「もう駄目だ。俺の人生は終りだ」と言ったことは、何を意味するのか。自分が(或いは会社が)金を出して買ったチケットを同額で川田女史に売った行為が、何故そんな大それた行為なのだろう。その時「関係者席だから一般には売らないでくれ」と言い忘れたことが、そんなに重要な意味を持つのだろうか。

 そういえば、最近、税務署がうるさいので招待券は出せないのだという。おそらく招待券を数多く撒いたことにして、売り上げを誤魔化す輩がいるのだろう。そこで招待券にも値段をつけることにした。そういえば、あんなに良い席なのに6,800円というのは妙に安い気がしたよ。こう考えると辻褄が合うなァー。

 ということは、結論から言うと、アップフロント側から斉藤に流れた30枚は無料で配られた招待券だったのではなかろうか。そしてそれは、通常なら宣伝や日頃の御礼という形で関係者に配られる筈のものであったのだろう。

 ところが、今回は30枚という纏まった枚数であったことから、極めて「袖の下」の意味合いが強いチケットではなかったのか。だからこそうろたえたのだろう。おそらく斉藤はアップフロントだけでなく、招待券で貰ったものを慣習的に誰かに売り「小遣い」にしていたのだろう。

 今までに斉藤が押し付けた(売りつけた)チケットは、モーニング娘、浜崎あゆみ、SMAP、キンキキッズ、NEWS、サザンオールスターズ、松田聖子、矢沢永吉、氷室京介、スピッツ、SPEED、安室奈美恵等々で、中には数十枚も無理させられたものもあるらしい。

 しかし、有名人のチケットをいとも簡単に手に入れる術を持っているというから、それはそれで素晴らしいことではないか。ただ賄賂はいかん賄賂は。それに弱い者苛めもいかんよ。

 芸能界は闇の世界で、色んな業界がある中で最も法整備が遅れている業界の一つだろう。華やかな世界ゆえ、聖人でさえすぐに惑わされてしまうのである。

 あの人工人造人間の貧乏人見せ物姉妹を大セレブと売り出してみたり、裏ビデオ本番女優がスターになったり、おもしろい世界である。

 そうかと思えば、本紙が叩いているジャニー喜多川のような青少年強制ワイセツホモジジィがぬけぬけとのさばり、ライバルが出てくるとテレビ局や雑誌社に「あそこのタレントを出すなら、うちのタレントは一切出さない」などと圧力をかけて、売れている子と売れていない子をセットで出す。拒否すれば売れてる子を出さない。

 忌々しいけど視聴率を取れるタレント軍を持っているから仕方がない。いつかジャニーホモ喜多川の天狗の鼻をへし折ってやり、新宿2丁目で歌って踊れる可愛い男の子の集団を見つけて本紙からデビューさせてやる。

 いつの間にやらジャニーホモ川の話になってしまったが、本稿はモーニング娘の所属プロダクション『アップフロント』と有線放送『キャンシステム』の癒着の話。しつこく、激しく、楽しく、これからも斉藤を追いかけてみよう。
(つづく)

 
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