「経営管理」“責任体制”不在のまま35年は、日本の恥
 上場企業をとり巻く専門職(法人、個人)は職務怠慢すぎる
社主   論文の第1部第2章でわかった。
まず企業の監査役が、本来なら発見しなければならないのだが。今のところ期待はできない。しかし、監査法人と公認会計士が発見できないなど、プロとして問題ではないのか。
佐藤   そうですね。監査報告書は偽りの報告ということになるでしょうね。日本の監査法人は全部であり、公認会計士は全員ということになりますね。
社主   情ないことだね。次は経済3団体。ここでは無理だね。次に格付機関。本場米国の企業を知り盡しているので、日本企業が遅れている部分など、なぜ発見できないのだろうか。
佐藤   私も、最初は同じような疑問を持ったのです。しかしよくよく考えてみると、日本企業の、「経営管理」に欠陥がある状態は、米国企業では、常識的にあり得ないのです。要するに経営のいろはの部分に当たります。経営計画、利益計画を狂わさず、年度末に計画どおりゴールにたどりつくのは、当たり前のことなのです。
「経営管理」に欠陥がある状態とは、年度初めに立てた計画が途中で狂うのを防止する歯止めをしているかどうかなのです。米国企業など、いろはの問題なので当然のように歯止めをしているので、日本企業に、その歯止めの仕組みがないことを信じないのです。
社主   なるほど。日本としては、恥だね。
佐藤   そうなりますね。日本企業を40年以上観察していて、経営計画、利益計画を絶対に狂わさないで結果を出すのだといった強い信念が見られないのです。日本企業も、米国企業も、対外的に責任を負うのは、代表者であることは、同じです。ところが、米国企業の場合、代表者が対外的に責任を持つためには、社内的に、あらゆるテーマにおいて、“責任体制”が明確になっているのです。すべて明文化しているのです。責任体制が明確になっていない日本企業が信じられない筈です。格付機関だけは、他の関係者と異なり、日本企業を買い被っているのです。
社主   格付会社が気づいた時に、日本企業の評価が軒並みに下がってしまうのが逆にこわいね。
佐藤   そうですね。
社主  

あとの、大学教授、マスコミ、官公庁、政界。これらは期待できないか。

 それにしても、あなたが76年(昭和51年)に啓蒙運動を始めて29年もの間、誰も気づかないなど、とんでもない怠慢だ。数多くの上場企業を喰いものにしているといえるね。

佐藤   そうなんです。プロでありながら、社会的に大問題です。
 
 執行役員制度、コーポレートガバナンスなど、形だけを真似る日本企業の片手落ち
社主  

昨年3月、六本木ヒルズ森タワーで少年(当時6才)が回転ドアに挟まれて死亡する事故が起きた。

 1月26日に、森ビル常務ら6人が書類送検された。

佐藤   森ビルは上場企業ではないので、上場企業でさえ導入していないだけに、「経営管理」の責任体制は無理です。書類送検された常務の役割は、社内で明文化されていたとは、考えられません。
社主   責任が明確にされていないのに、刑事責任を問われるとは、気の毒だ。
佐藤  

私もそう感じます。

 NHK会長の失政と同じです。全上場企業の経営陣との共同責任と考える必要があります。しかも、今の経営陣だけでなく、過去35年にわたる歴代の役員にも責任を分担して貰う必要があるのです。

社主   責任は、歴代の役員だけではない。
 
 六本木ヒルズ回転ドア事故で書類送検の森ビル常務を見殺しにするな!
 全上場会社の長年の怠慢が、社会に罪をまき散らす
社主   終戦後60年間、日本の発展は目ざましい。しかし、他人の真似をするのが当たり前のような国民が増えたような印象だ。日本企業は、歴史的に米国企業を真似してきた。QCなど、その一つだ。最近では、執行役員制度、コーポレート・ガバナンスにも、飛びついた。それなのに、「経営管理」のシステム化など、なぜ真似しなかったのだろうか。
佐藤   日本企業というより日本人は、形だけを真似る傾向があります。とくに英語の単語の耳ざわりがよいものには、すぐにとびつくのです。コーポレート・ガバナンスなど、まさにそれです。ところが、形を優先して機能や理念については深く突っ込まないのです。「経営管理」の問題は、形に表れないからでしょう。地味ですから。
社主   執行役員制度も、早くも上場企業の1000社が導入したと聞くが。
佐藤   そのようです。役員四季報をめくると、大へんきになります。米国企業を直接研究して参考にしたと印象づけられる企業は、10%・100社くらいしかないのです。十分に理解していない日本企業を真似したと感ずる企業が多いのに驚きました。BOARD OF DIRECTORSの機能とOFFICERSの機能の違いを理解している企業は、何社ありますでしょうか。何の目的で執行役員制度を導入するのか、理解できないのです。
 
 今までの責任は関係者すべてが分担して、あとは各社が独自で
社主   責任は、関係者のすべてが分担するのがよいのではないか。
佐藤   全く同感です。歴代の社長の他に、副社長以下の全取締役、監査役グループが全責任の30%、次に役員にならず定年退職をした社員グループが10%、あと企業をとり巻く法人、個人の専門職グループが10%、歴代の社長グループが50パーセントを分担する。会長は、殆ど社長経験者の筈です。これなら公平だと思います。
社主   公平な分担だね。問題は、誰が旗振りをするかだね。
佐藤   そこが問題ですね。
国、投資家、社員の3被害者が、新聞、雑誌などのメディアを通じて、今までの被害は、水に流すので、これからの被害を与えないよう予防して欲しい旨、訴えるといった戦略は、どうでしょうか。
社主   森ビルの常務、NHKの会長には申しわけないが、この両者の不運を無駄にしてはいけない。
 
「経営管理」“責任体制”の不在が、人員の多数削減を生んだことを自覚せよ
 雪印乳、三菱自の多数人員削減を繰り返すな!社員の自覚以外なし
社主   上場企業の「経営管理」の欠陥に、数多くの社員が犠牲になっていたとは驚いたねえ。
佐藤  

私は、90年代の前半に、昭和電工が、米国で大きなPL訴訟に巻き込まれていたのをよく覚えています。累計で約2,000億円もの巨額な特別損失を出していた頃です。多数の人員削減が始まったのです。その後何年か経って、アクシデントがあった雪印乳業、三菱自動車でも人員削減を始めたのを知り、やっぱりと思っていました。

 しかし、つい先日、会社四季報、日経会社情報で3期分をつき合わせてみて、正確な人員削減数を知り愕然となったのです。

社主   どの程度なの?
佐藤   02年6月と04年6月を比べてみたのです。雪印乳が、連結で約7,000名から3,000名と、4,000名も減らしています。60%もの削減です。三菱自は、6万1,000名から4万名弱へ。つまり2万名以上も削減しているのです。
社主   へえー。
原因が“「経営管理」の欠陥”ということに気づかないから、やめて行く社員が騒がなかったのか。こんなことが原因で、失業率を高めているのを、政府は知らないだろうね。
佐藤   上場企業の社員たちが、自分たちを護るために自社の「経営管理」に欠陥があることに気づくべきだと考えます。
 
 上場企業の怠慢で国は被害だらけ。直接の被害だけでも税収(法人税)を大きく失う
社主   政府、与党、野党の議員は、上場企業の実態に気づかないまま、今日に至っているのだろう。
佐藤  

その通りです。今までに国が失った、上場企業からの法人税は、かなりな額に上ります。90年代と21世紀に入ってからの15年間だけでも、1兆円を超すのではないでしょうか。

社主   ホー。そんな額になるのか。けしからん。
佐藤  

間接的には、多大な影響があり、社会にさまざまな損失を与えていることになります。

 いつまで経っても、目が覚めないようなら、国が企業に対し“義務づけ”を考えなければならないところへ来ているような気がします。

 
 経常利益2,000億円未満の企業に国は義務づけをせよ!社長の次席に「経営管理」最高責任者を置こう
 米国企業の「経営管理」の調査・研究を急いで、その差異の効果を認識するしかない
社主   上場企業の全役員、企業をとり巻く専門家たち日本中が気づいていないのは、怠慢だね。
貴方が、米国企業の「経営管理」の実態を調査・研究するよう呼びかけ続けてきたというのに、実行しないとは。
佐藤  

そうなんです。私が取引でも依頼するなら、応じて貰えなくてもわかります。しかし、単純に米国企業の実態調査を提案し続けてきたのです。

 米国の企業担当弁護士などに、調査費をはずんで踏み込まなくてはだめです。

 
 経常利益2,000億円未満の企業には義務づけを
社主   今まで貴殿は、上場企業に対して、甘すぎはしないか。もっと厳しく迫るべきだ。
佐藤  

反省しています。41才の時に始めて先日70才にもなってしまったのです。国に義務づけを提案することも考えています。

(以下次号)
 
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