日本企業の“「経営管理」万全策の導入”の必要性についてRMコンサルタント佐藤昌弘氏との対談を1月号から4回にわたって連載した。

 日本企業の「経営管理」に欠陥がある状態が、50年(半世紀)も続いているということを耳にして、大へん驚かされた。数多くの日本企業が、歴代の先輩社長以下全役員・全社員が気づかないままとは。それにも増して、企業を取り巻く関係者たちまでが、全く気づかないまま50年もの歳月が通り過ぎたのは、なぜなのか、理解出来ない。これは日本中が怠慢ということになるのか。

 “国づくり”に寄与するのが、当紙の使命だ。わが日本には、改革しなければならないテーマが、いくつもある。とくにこのような、国民の誰もが気づかないまま50年も推移するといった現象は、世界の中の、日本の恥ではないか。こんな恥かしい現象が生じないよう、国を挙げて社会のしくみを改革していかなければならない。

 当紙としては、日本企業「経営管理」に欠陥があるといった専門的なことは、専門家にまかせたい。しかし、日本中、誰もが気づかないまま推移している現象に対しては、積極的にメスを入れていかなければならないと考えている。

 日本企業の「経営管理」の欠陥に関して、各企業の経営陣は、一刻も早く、万全策を導入すべきことは、当然のことである。しかし、このテーマについて、歴代の先輩社長・役員たちがなぜ気がつかなかったか、自身も、入社以来気がつかなかったのは、なぜかということを、分析してみる必要があるのではないか。

 当紙は、経営トップのために、今後気づかないまま推移するようなことが二度と生じないよう、RMコンサルタント佐藤氏の29年にもおよぶ、数々の企業への啓蒙活動の体験談を紹介することにした。今までの対談とは異なった角度から、体験談を継続的に聞いてみる。

社主 白倉康夫

 
 半世紀も続いた日本の異常性解決できるのは日本企業経営トップのみ
社主  

日本企業の「経営管理」に欠陥があることは、良く理解出来た。各企業とも、経営トップ以下、全役員は、「経営管理」万全策を協議して、迅速に実践することです。しかし問題なのは、歴代の先輩社長・役員たちが、「経営管理」の欠陥に、50年もの長期間、気づかないまま推移したことです。もっと問題なのは企業だけでなく、企業を取り巻く関係者たちも、誰1人として気づかなかったことです。

 日本は、企業も、社会も一体どうなっているのか。

 企業も社会も欠陥だらけ 役員・幹部社員の事なかれ主義が日本をダメにする
社主  

日本企業への「経営管理」万全策の導入を提唱する啓蒙活動で29年。その中で最初の21年間は全力投球をしたようですね。貴職は忍耐強い。私なら腹を立てて断念していただろう。

 貴職の啓蒙活動の中で、差しつかえないかぎり、隠れた部分を公開していただきたい。これからの日本企業の改革に参考にして貰いたいのです。

佐藤  

わかりました。数々の日本企業との接触の細かい部分は、誰にも話したことがありません。お役に立つなら話しましょう。

社主   期待します。
佐藤  

この10年、日本企業の経営は、かなり変りました。しかし、まだ日本企業には、理屈に合わない部分が多すぎます。不公平現象を招くのです。

 はっきり申し上げて、日本企業の役員、幹部社員の98パーセントは、“事なかれ主義”です。これは、この30年間変わらない印象です。こんな状態から、経営改革など期待できるわけがないのです。

 これは企業の役員、幹部社員だけではないのです。公認会計士とか、格付会社スタッフなどが、企業の欠陥を発見できないのも、社会のしくみに問題があるからです。

 
 〈日本企業の改革〉これしかない 経営トップも実務家になる
社主  

役員・幹部社員の98パーセントが、期待できないにしても、残り2パーセントの中に、「経営管理」の万全策にとり組んだ人物は、いなかったのですか。

佐藤  

残念ながら全くゼロです。この側近の問題は、別の機会に、十分な時間をかけてお話したいのです。

 今の日本企業では、経営トップが多少の実務をこなし、改革や新しい政策を自力で行うしかありません。“「経営管理」の欠陥”問題も、1社でも自力で判断する経営トップが存在していれば、右へならえする日本企業は多いので、日本企業の経営は、大きく改革されていたことでしょう。

 米国企業の場合、CEOやCOOは、破格の厚遇でスカウトされるので、短期間で大きい成果を挙げたい功名心があり、側近に頼ってはおれない気持なのでしょう。日本企業の場合、社長の殆どが、昇格です。先輩社長の路線を踏襲するのが、当然と考えているのです。こんな風習が続く日本企業で、社長が自力で改革など考えられないことではないでしょうか。

 日本的経営には、問題だらけです。今の日本的経営の中で、役員、幹部社員から理想的な改革の提案など期待できないでしょう。

 結局は、日本企業経営トップは、当分の間、自らある程度の実務を手がけて、改革や新しい政策は、自力で行なう転換が必要ではないでしょうか。

 
 米国企業のマネばかりの日本企業 マネるなら“形”ではなく“機能”だ
 マネはしても米国企業の研究が表面だけの日本企業役員・幹部の怠慢
社主  

米国企業のマネをしてきた日本企業が、「経営管理」責任体制、「経営管理」最高責任者(CFO)をマネしようとしなかったのは、不思議でならない。

佐藤  

「経営管理」責任体制は、目に付く形がないからでは、ないでしょうか。

 日本企業がマネをしてきたのは、格好いい名称とか形です。かってのQC。そして、近年の“コーポレートガバナンス”“執行役員制度”がそうです。とくに耳ざわりのよい名称です。

 残念ながら、執行役員制度など、形だけマネしている弊害が出ているのです。米国企業のBoard of Directorsと Officersの役割の関係を、勉強している日本企業は少ないでしょうね。04年6月末で執行役員制を導入していた日本企業は、上場2,800社のうち1,000社。ところが役員四季報(東洋経済)のページをめくれば、執行役員制度をなんとか理解していると印象を受ける企業は、1,000社中、約30社くらいしかない。残り970社は、執行役員制を導入しながら、監査役制度を、従来のまま残しているのです。これは片手落ちです。米国企業の「経営管理」について、もっと踏み込んで研究すれば、すぐ発見出来る筈です。COOの次席(ナンバー2)は、必ずCFOであること。CFOが管掌しているファイナンシャル部門と下部組織です。

 なにも難しいことではありません。歴代の役員と幹部社員は、みんな怠慢だったと言わざるをえません。

 
 〈米国企業研究の最優先テーマ〉基本に忠実→「経営計画」「利益計画」の狂いに歯止めをかける
佐藤  

このテーマは、最も重要なものです。次回に十分に時間をかけて、お話しします。取り敢えず、「経営管理」の責任体制としての「経営管理」=「総合リスクシステム(TRM)」を導入した組織図を紹介しておきます。

 この組織図は、2001年に作成したものであります。従来の日本の経営体制のものです。

 米国企業は、基本に忠実です。「経営計画」「利益計画」が、年度の途中で狂わないように歯止めをして年度末に目標、計画どおりにゴールインすることを、経営の絶対条件としているのです。当たり前のことですが。

 ところが、日本企業の殆どが、この基本を忘れているのです。忘れていなければ、“歯止めが不在”の穴だらけの「経営管理」を、50年も続けるわけがないのです。

 (次号に続く)
 
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