日本企業の「経営管理」に欠陥があるまま、50年も日本社会が気付いていないと言う、不可思議な現象が続いている事が分かった。

 最近、カネボウの2,000億円と言う巨額な粉飾決算が、発覚した。公認会計士(監査法人)の信じられない様なプロ意識である。粉飾決算は後を絶たない。公認会計士と監査法人の協力(?)がなければ生じない問題の筈である。公認会計士が強くならなければ、粉飾決算の根絶は有り得ない。

 企業の「経営管理」の欠陥等、公認会計士がイチ早く発見出来て当然である。公認会計士よりも、早く発見しなければならないのは監査役である。しかし現実には、企業内の監査役、企業の監査を行う公認会計士・監査法人は頼りにされていない。社会の仕組みが間違っているのではないか。社会の仕組みの見直し等、殆ど考えられないまま時間だけが推移している。監査役も公認会計士も、企業との関係においては立場が弱すぎる。余りにも弱い関係に置かれているのである。期待される役割が、果たせる訳が無い。

 企業内における監査役の位置づけ、企業と公認会計士・監査法人の関係に付いて、国家が見直しをしなければならない所へ来ている。このテーマこそ、改革が必要なのである。正にこのテーマは、社会の仕組みを改革する事になるのである。

 国家の英断を期待したい。  

社主 白倉康夫

 
 もう監査役は必要ない 執行役員制の日本企業
 監査役に強い態度は期待できない
社主  

貴殿の29年の啓蒙活動では、監査役との接触もありましたか。

佐藤  

監査役には、最初の5年〜6年位は、かなり面談しました。約200社でしょうか。しかし、5年〜6年で監査役との接触は止めました。理由は、各社の監査役の方々は、失礼ながら、殆ど頼りにならないと感じたからです。

 この10年、監査役も大幅に若返りました。70〜80年代は、各社ともに監査役は高齢者で占められていました。

 各社とも監査役は、長期に任務を継続者が多い。年齢も、社長・会長より上であり、先輩である企業が、圧倒的に多かったのです。

社主   監査役達が、会長、社長よりも先輩であれば、会長、社長に対して、強い立場にあっただろうね。
佐藤  

ところが、全く逆なのです。監査役の人達から見て、後輩の社長や会長に異常なほど気を使っているのです。間違っている事への指摘とか、新しい事の提案等が全く行う雰囲気では無かったですね。

社主   ほーう、社長が後輩であっても、給料を貰っているから弱いんだ。
佐藤   監査役が、監査相手に雇われている限り、強くなれる訳が無いのです。
 
 モノマネ執行役員制で片手落ち
社主  

日本企業間に、執行役員制導入が、急速に増えたのでは?

佐藤  

その通りです。04年(平成16年)6月末時点で上場企業1,000社が導入したと言われていました。正確には発表されていませんが、その後の1年間に一段と増えた様です。

 しかし問題なのは、日本企業の悪い癖です。米国企業の形だけをマネしているのです。

 小職は「役員四季報05年度版」を1ページずつめくり、執行役員制導入企業を調べてみたのです。

 驚いた事に、導入企業1,000社の中で米国企業のBoard of DirectorsとOfficersの関係を理解しているかに見える企業は、30社位しかない事です。

 わずか3%です。97%は機能に付いて研究もせずにただ形だけをマネしているのです。それも、『米国企業のマネをした日本企業』を安直にマネしているのです。

社主   米国企業の執行役員制に日本企業の監査役の様な存在はいますか?
佐藤  

米国企業に、監査役の様な存在はありません。

 したがって、執行役員制を導入しながらも、監査役を従来通り残している企業が、97%も存在しているのです。

社主   完全に片手落ちだ。この機会に監査役は廃止すれば良いのです。百害あって一利ない監査役は、一掃すべきだと思う。
 
 企業と公認会計士・監査法人の間に国(公的機関)が介在せよ
 監査制度の欠陥と罪
社主  

カネボウの粉飾決算は、余りにも社会を馬鹿にしている。許せないよ。

佐藤  

同感です。いくらなんでも、経営陣はひどすぎます。ここまで巨額な粉飾決算は、公認会計士と監査法人を、騙しとおせるわけがありません。弱い立場の公認会計士が、何年かに亘ってカネボウの役員達に、目を瞑らされていた事になります。

社主   監査法人はどこですか。
佐藤  

はい。中央青山監査法人です。日本の四大監査法人の一つです。

 あとで、日本の四大監査法人名を御紹介します。この中央青山監査法人は、大手監査法人の中で監査が最も甘いと言う定説があります。たとえば、自主廃業をした山一證券ヤオハンの粉飾決算は、刑事事件に発展したのです。山一の破産管財人からは、民事訴訟を起こされ、監査報酬返還の和解が行われました。

社主   とんでもない事件を起こしていますね。プロフェッショナルとは、言い難い。
佐藤  

その通りです。中央青山は、他にも無責任な事件を引き起こしているのです。

 03年11月の事。足利銀行を経営破綻に追い込んだ犯人が中央青山なのです。足利と中央青山は03年9月中間決算で、繰り延べ税金資産を約1,200億円計上する事で内々で一致していたようです。それを土壇場で、中央青山は全額否認を通告したのです。その為、足利銀行は、11月に経営破綻に追い込まれたのです。

社主   足利銀行の経営破綻の事は、よく覚えている。あれも中央青山なのか。
 
 監査法人への制裁措置
佐藤  

足利銀行の株主が黙っている訳が無いのです。

 「足利銀行出資被害者の会」と言う名称のグループが結成されました。この会は足利銀行及び旧経営陣、そして中央青山監査法人及び担当の公認会計士を相手取り、債務超過状態を隠して増資を行ったとして損害賠償を求めて、訴訟を提起したのです。現在、係争中です。

 監督官庁の金融庁から中央青山監査法人への制裁もありました。今年1月に戒告処分を受けています。足利銀行の破綻は、監査法人として粉飾決算に加担した訳ではないので、比較的軽い制裁にとどまったのではないでしょうか。

 カネボウの場合は、巨額の粉飾決算を何年も続けているので、厳しい制裁を免れないでしょう。

カネボウ本社
 
 立場の弱い監査法人
社主   監査法人が、監査する企業から指名を受け、監査報酬をその相手企業から支払って貰う様では、強い態度を取れなくても仕方ないのでは…。
佐藤  

全く同感です。一つ大きな問題があるのです。日本の監査報酬が米国の10分の1と余りにも安い事です。せめて米国の半分位になるように、引き上げるべきです。その為にも、監査相手の企業から直接貰う仕組みを変える必要があります。

日本の監査法人・ビッグ4

朝日監査法人
新日本監査法人
監査法人トーマツ
中央青山監査法人
(合併・統合を何度も重ねてここに至った)

 
 監査報酬は国から払え
佐藤  

10年以上も前から、考えていたことですが、監査報酬を、企業は国(国税庁あるいは金融庁)に納入する。そして各監査法人に支払われるといった「案」です。制度改革をする際に監査報酬のベースを思い切って5倍位に引き上げれば良いのです。

 国が介在して、改革すべきことは多い。
(続く)

 

 

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