警察の動き封じた警察
本物を偽物と、偽物を本物と言い張り、売らないと言いつつ売り歩く…お忙しそうですね(照力・横山社長)
―『原町共栄クリーン偽造株事件』は、なぜ事件化しないのか―

 この疑問は、過去11回に亘って同問題を取り上げてきた本紙にとって、永遠の謎だった。何しろ天下のNECに纏わる大スキャンダルであるにも拘らず、しかもその内容は「株券の偽造」を始め様々な事件に繋がっているのに、捜査当局の動きが今ひとつ鈍いのである。

 しかし、その謎はようやく解けた。

 本年7月末、ある収賄事件に問われた男の初公判が東京地裁で開かれた。男の名は門田公孝=元警視庁世田谷署刑事組織犯罪対策課警部補(後に懲戒免職)。

 この男は、共栄クリーン株の偽造が事件化されない『秘密』についての重要な要素となっている。事件の顛末をおさらいしつつ実態を報じよう。

 平成3年8月、(株)原町共栄クリーン(福島県)が、相葉政弘氏と狩野勝氏によって設立された。株券は200株発行し、相葉氏100株、狩野氏100株を持ち合い、代表取締役には相葉氏が就任した。

 平成4年11月、狩野氏が代表取締役に就任、相葉氏は一般役員となる。株の保有は以前のまま。

 平成9年3月、相葉氏の知らない間に原町共栄クリーン取締役会が開かれた。同日、中平明美女史に、相葉氏が所有している筈の100株を含む「全株券」(200株)が譲渡された。

 この取締役会に、入院中だった相葉氏が参加した事になっていた。この取締役会も株券も後に偽造と判明するが、中平氏は株券取得後、これを大企業に精力的に売り込みに廻った。

 平成11年6月、中平氏は、この全株券を株式会社シンシア社長・中西雄三氏に1億円で売却(但しこの売却金額には裏があるが、それは後段で触れる)。

 同年7月、共栄クリーン株主総会開催。授権資本を800株に変更採択される。

 同月、上記平成9年3月以降の一連の事実を知った相葉氏が、取締役会議事録偽造で狩野氏を刑事告訴。

 ここで冒頭の門田被告の登場である。相葉氏が事件を相談したのは当時大井署の知能犯係だった門田被告(当時巡査部長)だった。その後、門田被告率いる捜査陣が捜査に着手する。

 同年8月、中西氏が共栄クリーン取締役に就任。

 同年12月、警視庁大井署が議事録偽造で狩野氏を逮捕するも、処分保留で同月釈放。

 同月、共栄クリーンの資産にシンシアが極度額16億円の根抵当権を設定。

 
 使途不明金は11億円
 平成12年1月、相葉氏が共栄クリーンを相手取って、株主確認及び新株発行無効確認訴訟を提起。

 同月、相葉氏は大井署の門田被告を再び訪ね、今度は株券偽造で狩野を告訴したいと相談。

 同年2月、またしても自分の身に捜査の手が及ぶことを知った狩野氏は、相葉氏の告訴を受理しないよう門田被告に懇願。

 その見返りとして、450万円以上もの現金を狩野氏から受け取った門田被告は、その後の捜査会議で「株券の流れを特定するのは非常に困難」「複雑でやりにくい」「終わりにしたらどうか」などと発言し、相葉氏の告訴を受理しない方向へ導き立件を阻止。

 同年3月、大井署の動きが止まるのを待ち構えていたかのように、中西氏が共栄クリーンの代表取締役に晴れて就任。

 同年8月、シンシアは株式上場を狙っていたが、野村証券から幹事会社を辞退される。これを逆恨みしたシンシアは、「アドバイス契約を一方的に破棄されて損害を被った」と野村を相手取り損害賠償請求訴訟を提起。ところが、この裁判が「ヤブヘビ」となる。

 裁判の過程でシンシアの11億円もの使途不明金の存在が明らかになったのである。シンシアは使途について説明できない。何故なら色んな所へばら撒いたカネだからだ。もちろんその大半が、中平氏とその関係者に流れていた。

 平成13年3月、共栄クリーンと歴代の同社代表5人が、廃棄物処理法違反と県景観条例違反の容疑で書類送検される。

 同年12月、共栄クリーン全株券が、シンシアから不動産業者『照力』(埼玉県戸田市)に3,000万円で譲渡される。シンシアが十数億円注ぎ込んで手に入れた産廃会社を、その三十分の一以下の破格値で手に入れたことになる。

 その後、本紙の追及に対し「飽くまでも我々照力グループで産廃処理場を運営していく」と言いつつ、陰ではある人物が株券を高値で売るべく営業に奔走。

 
 昨日ニセ株 今日真正株
そもそも普通の人は、あんな事件モノの株は買わないワナ
 平成14年11月、マスコミ各社の報道により共栄クリーンから『全国建設労働者共闘会議(全労共)』に2,500万円もの裏金が流れていた事が明らかになる(翌15年1月、更に1億円の裏金が流れていたことが判明)。この件も全労共が国税から追徴課税を受けただけでうやむやのうちに終わっているが、本来ならば大事件である。

 事件が起きた平成12年当時、NECの社長だった西垣氏と同社取締役相談役だった関本氏(後に解任)の確執は余りにも有名な話だったが、その関本氏の自宅やNEC本社前で「関本解任!」を訴えていた団体=全労共に、共栄クリーンから1億数千万円の裏金が提供されていたのだから、ただ事ではない。

 ご存知のとおり、当時の共栄クリーンを運営していたのは(株)シンシア(中西社長)だ。同社はNECが41%出資する会社で、役員7名中4名がNEC出身者という、事実上NECの子会社みたいなところである。しかも、シンシア中西社長とNEC西垣社長(当時)は30年来の親友。

 つまり西垣氏の親友から街宣活動資金を貰った全労共が、西垣氏の宿敵=関本氏を攻撃したのだから、これが大事件にならない筈は無い。

 まあ、全労共は受け取ったカネを「債務弁済金の一部」(共栄クリーンに貸していた金の一部を返してもらった)と言い訳していたが、こんなものはミエミエのバレバレである。

 もしかして、この件にも第二第三の門田被告が?

 平成16年10月、相葉氏が共栄クリーンを相手取って起こしていた裁判(平成12年1月に提起、上段に既述)の最高裁で上告棄却の決定、つまり相葉氏が所有する100株が本物と認められた。

 ということは、再三に亘って本紙が指摘した通り、狩野氏→中平氏→シンシア中西社長→不動産照力と渡った株券は偽造株券だった訳だ。

 ところが照力は、裁判の結果紙くず同然となったニセ株を放り投げ、狩野氏が当初から所有していた真正な100株もチャッカリと隠し持っていて、今度はこれを「本物だから高く買って」と売り歩いている模様。この節操の無さには呆れて言葉も無い。

 兎も角、これだけ事件性に溢れていながら、NECやシンシアの刑事的な責任が全く問われないというのは何故だろう。発展途上国でもないのに、未だにカネとコネがモノを言う国…。

 嘆かわしい限りだ。

 
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