JRA日本中央競馬会といえば利権の温床として多くの政界・財界人が関与していることでも有名だ。
ここでは熱海場外馬券売場建設計画に纏わる騒動の裏話を少々ご紹介しよう。
このネタを報じた週刊朝日(平成12年9月29日号)を見てみると「東京馬主協会長に『やめろ』コールの不徳騒動」と題して、当時東京馬主協会長であった保手濱忠弘氏が、熱海の場外馬券売り場建設計画に絡んで多額の現金を受け取った、という疑惑について詳述されている。
この週刊朝日の記事を読む限り、やはり保手濱氏は多額の現金を受け取ったようだ。
しかも保手濱会長とやらは、ワンマン体制で東京馬主協会を牛耳ってきた人物らしく、平成12年9月13日に行われた同協会の理事懇談会は大荒れとなったとも記されているから、よほどの悪者なんだろう……
―と思っていたら、当紙の許に、ある情報が舞い込んできた。
なんでもこの週刊朝日の記事は、保手濱氏の失脚を狙った故・一柳博志氏の意向で保手濱氏ばかりを追及する内容になっているが、真相は「さにあらず」というのだ。一体どういう事なのか?紙幅の都合上簡潔に述べよう。
先ずは、有名だった歌手=故・三橋美智也氏の話。
『三橋氏は以前、熱海にホテルを建設する等の事業を行っていたが、それらに失敗して多額の負債を抱えていた。
そんな三橋氏に個人的に融資をしたのが保手濱氏であった。そのカネを返す方法として浮かび上がったのが場外馬券場の建設。
保手濱氏も「貸した金が返ってくるなら」ということで、JRAをはじめとする各関係者との交渉役を引き受けた。そこで故・一柳氏の登場である。
一柳氏と言えば、その昔NECを陰で牛耳ってきたと言われるほどの人物で、長年に亘って同社の陰の番頭を務めた男。故・竹下登との強力なコネクションを背景に中央官庁にNECのコンピューターを売りまくり、マスコミにも人脈を築いていた。
場外馬券場の建設となると、やはり競馬のノミ行為を行っている裏社会や地元対策など、何かとややこしい問題が多い。それらの交渉役を買って出たのが一柳氏だったのである。
一方、場外馬券場の熱海への誘致活動を行っていた業者は、成功報酬前払いで数億円の現金を保手濱氏に渡していたが、保手濱氏は三橋氏への融資金額を差し引いて、残りを地元対策費として一柳氏に託した。
結果、反対の声が強く、誘致は実現しなかった。
そこで業者は保手濱氏と一柳氏を相手取り、前払いした成功報酬を返せ、という裁判を提起。その後平成10年7月に和解』
―以上が主な内容だ。
この情報を踏まえると、確かに週刊朝日の記事には著しい偏向が見られる。
例えば、この業者が起こした裁判についても、本当の被告は保手濱氏、(株)和光(保手濱氏所有の牧場)、一柳氏、(株)イヨ商事(一柳氏所有の競走馬管理会社)の四者であるが、週刊朝日には保手濱氏以外の名前が出てこない。同じ被告である一柳氏の「一」の字も無いのである。
「保手濱会長ら被告が」或いは「保手濱会長側は」と被告が一人では無さそうなニュアンスを雀の涙ほどは残しながらも、意図的に一柳氏の名前の記載を避けている。
これでは、保手濱氏が一人でカネをせしめて訴えられたかの如き誤解を読者に与えてしまう。
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