アルバイト医師が横行
女子高生マニア?山子大助院長
 本紙ではこれ迄「女子高校生を食い物にする悪徳美容外科」として、億万長者山子大助率いる医療法人社団博美会「神奈川クリニック」を糾弾してきた。

 美容医療にさほど偏見を持たない世代である今時の女子高校生の“口込み”を利用するといった、この業界に於いては従来にない集客手法を用いているのが、山子流の“神奈クリ商法”の実態である。

 これによって、将来的にリピーターと成り得る若年層の囲い込みにも成功したことで、神奈クリの天下は揺るぎないものとなった。これだけでも「成長過程にある者への施術行為の必要性」を考えれば、医師としての倫理観を疑うに十分である。

 更に、経済力に乏しい彼女らに対し、保護者同意の確認も御座なりのまま、院内医療割賦と称した独自のローン契約を斡旋しているが、これが無届けの“ヤミ信販”であったことも判明している。しかもその支払いが一度でも滞ると督促状を突きつけ、果ては第三者に僅か数万円の債券を譲渡し、完全回収を図る徹底した仕組みになっている。

 又、ヤミ信販であるが故に利用者実数も不明瞭であり、この信販を通した営業収益が正常に申告されているかどうかさえ疑わしいのだ。正に、未成年女子に対する施術が“闇(信販)から闇(無申告)”に葬られているのが現実のようだ。

 これら神奈クリの経営実態も十分に問題であるが、それ以上に首を傾げたくなるのが施術の“質”そのものである。

 現在神奈クリは全国の主要都市に分院を配置しているが、それを機能させる外科医が慢性的に不足しており、神奈クリの肥大化と共に各勤務医への負担が増大する傾向にあるという。更に、それを解消しようと技術・経験の乏しいアルバイト医師に頼らざるを得ない状況にあるようで、患者が何よりも望む“施術の質”は、利益追求の陰に押し遣られている。

 ただ、この美容外科専門医の不足問題は神奈クリのみならず、美容整形の業界全般に共通するものともいえる。

 昨今では、美容整形への嫌悪感など最早無いに等しい。町中では美容整形クリニックの看板をよく目にするし、女性誌の広告スペースは他の業種を圧倒するほど業界のもので埋め尽くされてもいる。何より、今まで美容整形を一段低く見ていた病院や外科医、特にプライドの高い大学病院、果ては国公立病院までもが、保健適用外の自由診療の収益性に目を付け、美容整形を新たに診療科目に加えて堂々と業界参入を果たしている。

 これほど市場が急速に拡大すれば医師が不足するのは当然である。況してや経験豊富な専門医となるとその数は極僅かである。

 しかし美容医療を“ビジネス”と考えているクリニックが業界の多勢である限り、処理能力を超えた診療をこなしてでも市場に溢れた金ヅル(患者)を逃すまいとし、結果そのしわ寄せは、美容整形を実際に受ける患者に寄せられるのだ。

 今日、美容整形は“プチ整形”ブームが牽引役となったこともあって広く世間に認知されるようになり、それに伴い市場も拡大されてきた。つまり美容整形を受ける側にとっても選択肢が増えることに繋がったのだが、ただ、疾患以外で施術を希望するのは飽く迄自己判断によるものであり当然リスクを背負う覚悟が必要であることを、消費者は自覚せねばならない。

 
 カウンセリングは面倒
原宿・竹下通りにある「ピグワイ」編集部(175番館303号室)
 さて、美容整形の医師等は、本来の施術行為以上に時間と労力を割かれる仕事を抱えている。それは、施術前後のカウンセリングとケアである。

 個々の患者によって異なる美意識を施術によって反映させるには、医師と患者が十分な意志疎通を図る必要がある。また、両者納得した上でいざ施術を実行しても、患者の「気に入らない」の一言で失敗の烙印を押されることもある。

 医療過誤ともなれば話は別だが、医師が「うまくいった」と納得できる施術結果も、患者に不満が残ればその結果は否定されてしまう。そればかりか、その対応処理を一つ間違えばクレームから訴訟騒ぎにも発展しかねない。ここが、美容医療の最も難しいところである。

 会話を以って患者の希望を細かに聞き出し、深い信頼まで得るには、話術も含めたそれなりの才能を有しなければならない。勿論、よい結果を得るにはじっくり時間を費やすことも重要となってくる。

 技術には絶対の自信があるが、カウンセリングを苦手とする医師も少なくはないだろう。出来ることなら本職の施術一本に集中したいとの思いもある筈だ。だが、多くのクリニックでは患者の担当医が全てを行なうか、一部を看護士等に補助させているに過ぎない。ならば、医師への負担を軽減させるには、施術以上に時間を費やすカウンセリングの切り放しが一番の近道と考えられる。

 その点に着目し、ビジネスチャンスとばかりに飛び付いたのが、自称“日本初の独立系カウンセリング会社”有限会社『裕梨メディカルアシスト』(渋谷区千駄ヶ谷5-12-2)である。

 この会社は平成十四年五月に設立され、代表は北口裕梨なる女性である。主たる業務内容は“カウンセリング”で、渋谷区内にカウンセリングルームを開設し情報発信は自社運営のHP『美容相談ピグワイ』を通じて行なっている模様だ。

 日本初はともかく、この会社が「どの美容外科にも属さず、相談者の立場に立ったカウンセリングを目指す」といった趣旨は立派である。勿論、奉仕活動ではないのだから、カウンセリングでゼニを取ろうが、相談者を送り込んだクリニックからゼニを毟ろうが、はたまた美容外科には属さないが広告掲載だけは要求しゼニをふんだくろうと、この会社が営利目的である以上、何一つ文句はない。

 
 何処にも属さない筈が…

 しかし「全ては相談者の為を思って」とする高尚な目的を隠蓑に、薄汚い思惑があるとなれば話は違ってくる。

 やはりと言うべきか、同社HP『ピグワイ』を一見しただけで判断がつく程、その正体は悪質極まるものでしかなかった。

 同社の業務は自ら語っているように「相談者に情報を提供し、希望に即したクリニックを紹介する」ことに尽きるのであり、何処にも属さないとはいえ美容医療界に身を置く立場にかわりはない。言い方を変えれば、施術を行なうクリニックとの関係は営業的に最も重要なものと言える。

 ところが『ピグワイ』の内容の一部には、明らかに特定のクリニックを執拗に攻撃している箇所がある。この行為が何を意味するものかは最早明白である。

 同社は、営業上欠かすことの出来ないクリニックと表面上は握手を交わしながら、一方の手では拳を振り上げて、常に相手を威嚇しているのだ。これは「要求(提携や広告)を受け入れないならば痛い目にあわせるぞ」と、暗に脅しをかけているに他ならない。

 常識では、同業者の批判など、余程のことがない限り出来ないものだ。内部告発にしても、告発者が名乗るケースは希である。やはり人間は、社会生活を営む以上、様々な“しがらみ”から逃れられない。

 だからこそ、反対に何の“しがらみ”も無い正義と信念による告発や糾弾が大事なのであって、結果、信頼も得られるのである。

 ところが、同社が取る批判行動は利己主義的な立場からのものであり、業界の健全化などは建前でしかなく、望むは自己利益のみといえる。

 相談者から『ピグワイ』に寄せられる情報は多岐に亘ると思われるが、その中には施術後のクレーム的なものも多く含まれている筈だ。

 有限会社「裕梨メディカルアシスト」は、美容医療に関わる相談から得た、極めて秘匿性の高い情報を躊躇なく最大限利用することで、立上げから僅かの内に美容医療界の圧力組織へと力を付けつつある。

 次回は、同社の巧妙且つ大胆な営業戦略と、その背景について掘り下げてみたい。
(つづく)

 
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