『自称』美容カウンセラー

その眼差しは相談者への慈悲の心か、それともカネへの執着か(同社ホームページより抜粋)

 『何処の美容外科クリニックにも属さない日本初の美容医療系カウンセリング会社』が売り文句の、有限会社「裕梨メディカルアシスト」(渋谷区千駄ヶ谷5-12-2)が、益々怪しげな動きをしている。

 わざわざ「日本初」などと宣伝するのも如何かと思うが、何よりも主業務である“美容医療カウンセリング”そのものが胡散くさいのである。

 そもそも美容医療を専門としたカウンセラーは、公的な資格でもなければ何処ぞの医療団体が私的に認定しているものですらない。ある日唐突に「今日から美容カウンセラーです」と名乗れば、誰だって“自称プロ”のカウンセラーになれるのだ。

 それにも拘らず同社HPの『美容相談ピグワイ』によれば、自社のカウンセリング業務に加え、外部の美容外科クリニックのカウンセラー育成・教育までもやってのけるという程、その道の“第一人者”を広言して憚らないのだ。設立してから僅かのうちに、どれ程の実績を上げてきたのかは不明だが、まったく、大した自信である。

 だが、同社代表である北口裕梨を始め同社の経営陣やスタッフの中には現役医師は含まれておらず、単なる看護士や自称カウンセラー、そして事務職経験者といった裏方さんが中心となって運営しているに過ぎないのだ。美容医療の要である医師を欠く陣容で行なわれるカウンセリングも疑わしいが、日々向上を続ける医療技術に対し、あれこれと難癖まで付ける態度には“いったい何様だ”と言ってやりたい。

 所詮、同社は美容医療に側面から携わっているだけであって、業界の耳年増的“事情通”程度の立場でしかないのだから、身の丈を弁えた行動をとるべきだ。だが、同社が美容医療カウンセリングを新機軸の事業として捉えた時点で、従来の医師の補助的立場に甘んじるつもりは更々無かった模様だ。

 では「裕梨メディカルアシスト」は、美容医療業界で何を企み何を目的としているのか。

 本紙先月号でも述べたことだが、同社の「全ては相談者のためを思って」とする理念(建前ではあるが)には、少なからず同調できる。施術前のカウンセリング不備によって希望に即した結果が得られない患者も少なくない。更に、自由診療をいいことに法外な施術料を請求する悪質なクリニックの存在もある。

 カウンセリングを通じて良識あるクリニックや医師を紹介する事は、美容医療業界の健全な発展に寄与する可能性を秘めた有意義な事業形態といってもいいだろう。 

 だが、この様な社会的意義を掲げながら実際は利益追求のみに邁進し、その達成の為には手段を選ばないというのが悪質業者の典型であり、同社は正しくこれに該当するものといえる。

 
 批判用舌と営業用舌?
原宿・竹下通りにある「ピグワイ」編集部(175番館303号室」
 同社が悪質たる所以の最たるものが、巧妙に使い分ける“二枚舌”である。同社のHP『美容相談ピグワイ』では、至る処でその二枚舌が回っている。

 同社は何処の美容外科にも属さない独立系のカウンセリングだからこそ、相談者には中立な情報を提供できるとしている。また、広告宣伝を頻繁に行なうクリニックは信用するなと言及し、特に雑誌やテレビなどで紹介されるものは、広告主のクリニックに配慮した記事や番組であり、この様なタイアップ広告には騙されるなと、警告らしきものまで発している。

 更に「本当に腕のよい良心的なドクターは宣伝下手だったりする」とまで言い放ち、よく目にする宣伝広告にはウソ・偽りが罷り通っているとしている。同社の狙いとしては「だからこそ、何ら柵(しがらみ)の無い中立である自分等は安心だ」とでも訴えたいのだろう。

 ところが、同社HP『ピグワイ』では、常にクリニックに向けて広告掲載の募集をかけているから不思議である。しかも、相談者を紹介するクリニックに“割引価格”を提供するよう求めるに至っては、これこそが相互間利益に繋がるタイアップ以外の何者でもないといえる。

 広告費を供出するクリニックと宣伝媒体となる同社の関係は、利益を追求する者同士による一般的な契約関係であり、常識的に広告主であるクリニックに対しては、下に置かない対応を取って然るべきである。これこそが、中立を保てなくなる“しがらみ”が発生する要因であり、同社が過剰な広告宣伝を否定するにあたって根拠としてきたものである筈だ。

 それなのに当の本人が積極的にその柵を作り、本来の流れを人為的に変えているのだから理解に苦しむ。それでも尚、広告主への配慮を施さずその他多勢と同列の扱いにし、中立を宣言できるその神経の図太さには呆れるばかりだ。

 同社の二枚舌による暴走はこれだけではない。

 HP『ピグワイ』の項目の1つに“避けるべき美容外科”というものがある。 広告のうまい所や施術料を明確にしていない所、或いは安過ぎる所、それに総合病院の美容外科等を“避けるべき”としている。

 但し、これ等に該当する美容外科を公表すると名指し批判に繋がるので、倫理上掲載しないことをうたっている。又、カウンセリングの際、相談者から「このクリニックはどうですか」等の質問にも、良いとも悪いとも伝えることは出来ないとし、中立宣言に即した対応をしているらしい。

 
 目に見えぬ圧力が奏効

 しかし、ここからが同社の本領発揮である。「名指し批判は好ましくない」と言った、その舌の根も乾かぬうちに『タブーを犯して危ない美容外科を公開』と題し、特定のクリニックを名指しの上で平然と批判を展開しているのだ。その内容は過激極まるもので、基本施術の一つである埋没法による二重施術であっても関わるなと、警告若しくは緊急警報などとし、的にかけたクリニックを全否定している。

 極め付きは、医療過誤により死亡事故を起こした全く別のクリニックを引き合いに出し「(この)次はここだ」と予言する始末。

 更に名指し批判を受けたクリニックが、後日それらを事実無根とし掲載の削除を同社に申し入れたそうだが、その時の会話内容を無断録音し、悪びれる様子もなく「簡単にまとめた」などと言い放ち、HP『ピグワイ』に再び追加記事として掲載したのだ。「簡単にまとめた」とは、即ち自分等に都合良く「編集した」ともいえる。実際これを掲載するにあたっては、相手側に記事内容も含め一切の事前通知も行なわなかった模様。

 HP『ピグワイ』の編集担当の中井晃は医学ジャーナリストを名乗ってはいるが、これほどの悪意に満ちた手法を平然とこなせる者は、所謂ブラックジャーナリストと称される裏社会にもそうはいない。

 同社が声高に主張する中立やら倫理といった綺麗事は、これらの悪行を打ち消すための建前であることは最早間違いないが、この二枚舌を駆使することによって、同社は目的の1つを既に達成しているのだ。それは、美容医療の業界、取り分け美容外科クリニックに“圧力”を知らしめたことである。

 患者がクリニックを選択するにあたり、お気に入りを探すよりも、先ず必要とする情報が「行ってはいけない」危険な美容外科である。事実、今回HP『ピグワイ』の的となったクリニックにしても、これが影響し、掲載されていた期間に相当な打撃を受けたという話だ。この出来事以降の同社は、クリニックに対する広告や相互サービスの提携の申し入れが随分とやり易くなったに違いない。相手が少しでも愚図るようなら「同じ目にあいたいのか」と、睨みを利かせればいいのだからだ。

 さて、現在のHP『ピグワイ』だが、その内容も随分と様変わりし、過激で攻撃的な記述は影を潜めている。一定の目的を果たしたからか、若しくは訴訟騒ぎになる寸前で手を引いたのかは定かではないが、この見事な引き際は正に悪党の手本である。但し、圧力効果が薄れ始める頃には、また新たなクリニックが犠牲となることだけは確かである。

 次回は、同社の倫理基準に焦点を当てたいのだが、これが都合によってコロコロ変わるから始末に悪い。ただ、同社も会員であるNPO法人「日本インターネット医療協議会」(理事長=辰巳治之札幌医科大学教授)の倫理基準に沿ったもの、とは広言している。

 会員の所業を見る限り、この団体も怪しさ満点である。もしかして黒幕登場?
(まだまだつづく)

 
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